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「ねえ殿下、お互い好ましく思っているのに我慢することはないですよね」
エオメルが慌しく従兄の衣服を脱がせながら言う。
かれはセオドレドの肌があらわになるにつれて、興奮して息を荒げるのだった。
「まあ、そうかもしれんが。ちょっと・・・なあ」
寝台の上で、セオドレドはまだ戸惑っていた。
実の弟同然に育ててきた従弟である。
その相手が自分の皮膚を愛撫しつつ、口づけて跡を残したりしているのだが、なにか快感を感じるのが罪のような気がする王子だった。
しかし従弟はかれのズボンを引き抜いて下半身を露出させると、すぐに顔を伏せてためらうことなく口に含んだ。
「エ、エオメル」
−−おまえは、そんなことが平気で出来るのか・・・。と何ともいえない心地になる。
「んんっ、わたしは殿下のたくましいものを味わってみたくてたまりませんでしたッ。このあいだのボロミア殿がもう羨ましくって」
などと言いつつ、エオメルはセオドレドのペニスの先端をすっぽり唇で覆い、舐めまわしながら舌先で強く押すように刺激した。
「あ。う・・・」
セオドレドが思わず目を閉じて、声を上げる。
そのまま、相手の舌使いに身をゆだねていると、「どうです、エオメル殿の舌技はなかなかのものでしょう。わたしが色々と教示しましたし、ご自分でも努力されましたから」ファラミアが王子の耳元で囁いた。
そしてセオドレドの金髪をそっとつまんで指に絡めるのだった。
が、ローハンの王子は嫌がって首を振り、「わたしに触れるな」と冷たく言った。
「・・・相変わらず、つれない方だ」
ファラミアががっかりした声で言い、セオドレドから離れる。
「わたしは最初にお会いしたときからずっと、あなたを魅力的な方だと思っているのに」
それには答えず、王子は従弟の頭を手で抱えて、相手の熱い口内と舌の動きを味わっていた。
不思議と、ファラミアを追い出してエオメルと二人きりになりたい、とは思わなかった。
多分従弟と二人きりになってしまったら、そのまま行為を続ける気が無くなってしまいそうだったからだろう。
セオドレドにつれなくされた弟君は、エオメルの背後に回るとその引き締まった尻に手を置いて撫で回しはじめた。
掌で掴むように愛撫しながら、後腔に指を押し入れてゆっくりえぐる。
「んッ、あん・・・」
セオドレドの物を口に咥えたまま、エオメルが身悶える。
「すぐに感じるんですよね」とファラミアは呟き、さらに指を三本に増やした。
「あぁッ、はうんッ」
身体をくねらせて切なげなよがり声をあげる従弟の姿に、セオドレドは全身がぞくぞくしてきた。王子のペニスが一気に張り詰める。
その大きさに頬張りきれなくなったエオメルは、口から出して根元から先端へと舌で舐めあげるのだった。
「うっ・・・」
甘い衝動が身体を駆け上がり、思わずセオドレドは腰をエオメルの顔にグイと押しつけた。
それを受けた従弟にペニスの先端を強く吸い上げられ、「うあっ、ぁあ・・・ッ」と思わず快楽の声を洩らしてしまう。
ファラミアはその様子を見ながら、エオメルの秘所を指で抜き差しし続けていた。
「さあ、そろそろ王子殿下の方も限界ではないですか。エオメル殿の方は、すっかり熟れていい感じです。あなたの従弟殿のここは感度が抜群、使い心地も実にファンタスティックです。最初は指一本でも痛がっていましたが、わたしが散々拡げて馴らしてさしあげましたからね」
弟君の言いように、セオドレドは眉を吊り上げて嫌な顔をした。
だが、確かにこれ以上従弟に口でなぶられ続けたら、いってしまいそうだった。
(この後、どうすれはいいんだ。エオメルの尻を使えというのか−−そんな事、考えたことも無いぞ・・・!)
セオドレドが躊躇していると、ファラミアの指で犯されて堪らなくなったエオメルが顔を上げた。
「あぁッ、もうだめです、我慢できませんセオドレド・・・!」
切羽詰った声で言うと、エオメルは従兄に激しく抱きついた。
そして相手の身体を自分の上に引き上げる形で、シーツの上に倒れこんだのである。
「お願いです、あなたのものをわたしの中に!」
セオドレドの性器を握り、足を開いて催促する。
「エオメル・・・」
何とも表現の仕様のない情感を込めて、かれは従弟と身体を重ねながら名前を呼んだ。
そして相手に促されるまま、エオメルの秘所にペニスをあてがった。
−−ああもう、ついこのあいだまで元気で腕白な子供だとしか認識していなかった従弟と、セックスしようとしてるわたしです。これってどうなんですか、セオドウィン叔母上〜〜〜。
すると王子の脳裏に、幼い頃に可愛がってもらったエオメルの母、美貌の姫君として知られたセオドウィンの姿が浮かんできたのである。
セオドレドの胸に罪悪感が広がっていく。
が、想像のセオドウィンは甥に向かってにっこり微笑んだ。そして「おほほほほ。おやりなさいおやりなさい」と力強く頷いたのだった。
「はっ。そうですか」
叔母の許しを(脳内妄想で)得た王子は、もはやためらうことなく、エオメルの中に自らを突き入れた。
「あッ、あぁーッ」
そのままずぶずぶと奥まで侵入していく。
「ひいッ・・・すごい殿下・・・!うあぁッ、わたしの中が一杯になってしまう・・・ッ」
エオメルが従兄の腕に縋って歓喜の声を上げる。
「う。すごく熱くてよく締まる・・・」
ぎゅっと締め付けてくる肉壁の感触に、セオドレドも感嘆の呻きを洩らした。
「ふふ、根元までずっぽり収まって、実にいい眺めですね。従兄弟同士の初めての情交の場に居合わせることが出来て、光栄ですよ」
ロヒアリム同士の繋がった部分をしげしげと観察しながら、弟君が言う。
「いやらしい奴だな!見るなッ」
王子はファラミアに向かってしっしっ、と手を振った。
「見るくらい、いいでしょう」と相手が青い瞳を細める。
「見物されているとより興奮するくせに。知ってますよ王子殿下」
「うるさい」
二人が言い合っていると、「んもぅッ、殿下ぁっ」とエオメルが従兄の髪を引っ張った。
「焦らさないで、わたしを突き上げて下さいッ」
「よし」
セオドレドはエオメルの足を抱え直して体勢を整えた。
「わかった。おまえの望みどおり、抱いてやる。泣いて許してくれと言っても止めないぞ、いいな!」
「あぁーッ、いいッ、あっあっあー!」
セオドレドのペニスに刺し貫かれて激しく摩擦され、エオメルは全身で感じていた。
「す、凄い、うぁあーーー・・・ッ」
打ち込まれる快感に喘いでいると、従兄の指はかれの乳首を捻るように摘んでこすり合わせ、さらに股間へと撫で下ろされた。性器を強く握られ、しごき立てられる。
「あ、はぁッ!」
あまりの快感に、エオメルが身体を反り返らせて嬌声を上げる。
セオドレドの方も、腰を深く食い込ませながら、びりびりと電流に貫かれるような快感を味わっていた。
「くそ・・・ッ、こんなにいいとは思わなかったぞ!あッ、くぅッ、そんなにきつく締めないでくれッ」
夢中で掘りあげているセオドレドに、椅子に座って見物している弟君が話しかけた。
「本当はセオドレドさまも、内心では“わたしの従弟は美味しそうに育ったなあ”とか思ってらしたのではないですか。どうです、エオメル殿の使い心地は。まったくこんな楽しいおもちゃを使わずにいたなんて、変わったお方だ。大事に大事にしているうちに、わたしに先を越されて残念でしたねえ」
何もすることがなく、退屈なファラミアである。
かれを無視して互いに快楽を貪りあうロヒアリムたちの姿に、嫌味の一つも言ってやりたくなってくる。
「おまえは黙ってろ」
ローハンの王子は執政家の次男を一喝すると、そのまま目もくれずに従弟の身体に没入し続けた。
だがファラミアの言うとおり、心の中では(こんな快楽を得る機会を見逃してきたのか)とかなり惜しい気がしているのも確かだった。
セオドレドはエオメルの足を折り曲げて角度を変えて突き込んだ。
そして腰をしならせて打ち下ろす。
「ひッ、あ、あぁっ、セオドレドぉ・・・ッ!駄目ッ、いっちゃうぅッー!」
涙を振りこぼしながら従弟はシーツを乱しながらのたうち、王子の手の中に白濁をほとばしらせた。
そのままびくびくと身体を痙攣させる。
「わたしはまだだ」
と、激しく囁いてセオドレドがさらに自らの肉で相手の肉をえぐり回す。
「く、ふ・・・ッ!だ、駄目ですッ・・・良すぎてどうにかなってしまう・・・!あぁッ、も、もう少し優しくしてくださいッ」
エオメルの懇願に、従兄は皮肉な笑みを浮かべて言った。
「欲しがったのはおまえだぞ。許してくれといっても無駄だといっただろう」
そして内臓の最奥までぐいっと突き上げる。
「ひぃ・・・っ」
従弟が喉の奥から搾り出すような声をあげ、王子はさらに過酷に責めたてて相手を悦楽の底に突き落とすのだった。
「あぁ・・・セオドレド・・・ッ、い、いい・・・気が狂いそうにいいです・・・ッ」
我を忘れたエオメルが、声を枯らしてよがる。
かれは従兄の身体にしがみつき、その筋肉質な背中に爪を立てて傷だらけにしながら何度も放出した。
セオドレドの腹が従弟の精液で濡らされる。
王子の方はまだ一度もいかずに、歯を食いしばって従弟の身体が砕けそうな律動を繰り返している。
「なかなか終わりませんねえ。わたしが手伝って差し上げましょうか、セオドレドさま」
退屈をもてあましたファラミアが申し出た。セオドレドは「うるさい」と一声唸るだけである。
「まったく、冷たい方だ。わたしは色々なことが出来るんですよ。より深い快楽をあなた方に提供してあげられるというのに・・・」
ぶつぶつ呟きながら、ぎしぎし揺れる寝台の枕元に腰掛けると、弟君は涙を流して悶えるエオメルの頬を撫でた。
「わたしとエオメル殿も、ぶっ続けで愛し合いましたが、一回がこんなに長くはありませんでしたよ」
セオドレドはファラミアのことなぞ歯牙にもかけず、猛々しく押し上げ、揺さぶり続けている。
「ひッ、あッ」とかすれた声を発するエオメルに、ファラミアは「ねえ、わたしとセオドレドさまとどちらがいいですか、エオメル殿」と尋ねた。
相手はなかば正気を失っている状態である。ただ何気なく聞いただけだったのだが。
「あ・・・あ、ああ・・・殿下ぁ・・・ッ、殿下がいいです・・・!ファラミア殿よりずっといい・・・ッ」
「−−なんですって」
エオメルの答えに、弟君は顔色を変えた。
「そ、そうかぁ?ファラミアよりいいのか!」
セオドレドの秀麗な顔が思わずにやける。
王子は頬に喜色をたたえて、さらに激しく腰をつかった。
「ちょっと待ってください、エオメル殿!よく考えてください。あなたはこの数日、わたしの腕の中で“ファラミア殿のセックスは最高ですッ”と何度もおっしゃったではないですか!今の言葉を取り消してください」
ファラミアの額に青筋が立っている。プライドを傷つけられたゴンドーリアンは、エオメルをぐいぐい揺さぶって詰め寄った。
「見苦しいぞ、ファラミア」
ローハンの王子が意地の悪い笑みを浮かべてたしなめる。
いつも不気味なほど冷静沈着なファラミアが、本気で顔色を変えるのを初めて見た王子である。
「エオメルは正直な奴だ、嘘など言わん」
弟君は交じり合う従兄弟同士の顔を見比べて、唇をかみ締めた。
まあ、実のところ、肉の快楽に溺れているエオメルは、別に深く考えもせず今自分を抱いているのはセオドレドだからこっちがいい、と言ってみただけなのである。
ファラミアはセオドレドをキッ、とにらみつけると「そんなはずありません。セオドレドさま、変わって下さい」と言いながら、ロヒアリムのあいだに割って入った。
「さあ、ちょっとどいて下さい!エオメル殿にわたしの感触を思い出して頂きます」
エオメルから引き剥がされそうになって、セオドレドは抵抗した。
「何をするか、おまえはただの邪魔者だ。出て行け、とっととゴンドールに帰るがいい」
「どきなさい、セオドレド」
「嫌だ、ふざけるな!」
エオメルの身体の上で、ローハンの世継ぎと執政家の次男は腕をつかみ合って争った。
すると、ファラミアの方が今までに見たことの無い恐ろしい形相で、セオドレドの金髪をガッと握って持ち上げたのである。
「いてえッ」
「黙りなさい。やらせないと言うなら、このままあなたを後ろから犯しますよ」
(キャッ。怖いっ。ファラミアが壊れちゃった・・・!)
セオドレドは相手のいっちゃってる目つきに、危険を感じた。
思わず怯えて身体を仰け反らせると、弟君はふん、とせせら笑った。
「もう結構。どうぞそのままエオメル殿と行為を続けて下さい王子殿下」と慇懃な口調で言い、さらに「でもわたしも混ざりますから」などと言い出すのだった。
「ま、混ざる?」
セオドレドの問いかけに、ファラミアは寝台の上に飛び乗ってエオメルをぐいっと抱き起こした。
すると必然的に、繋がったままのセオドレドがシーツに倒れる格好になる。
「うわ、なんだ」
体位としては、従弟が王子の上にまたがった騎上位の状態である。
ファラミアは、そのエオメルを後ろから脇に腕を入れて抱きかかえ、少し身体を持ち上げて腰を浮かせた。
「あッ・・・ファラミア殿、何を・・・」
顔をねじって尋ねるエオメルに、弟君は微笑んだ。
そして相手を抱いたままガウンの前をはぐってペニスを取り出し、セオドレドの物が嵌ったままのエオメルの肛門に、自分の物を強引にねじ込んだのである。
「ひーーーーーーーーーッ!」
ロヒアリムたちは、二人そろって悲鳴を上げた。
「何をしてるんだ、貴様はぁッ」
セオドレドが寝転がったまま、絶叫する。
「二本差しです」
さすがに余裕がなく、困難な挿入である。
ファラミアは顔をしかめて腰を突き出しながら、王子に答えた。
「そっ、そんなこと、出来るわけ無いだろう!」
驚愕の声を上げるセオドレドに、弟君は「やってみなきゃわからないでしょう」と言ってさらに性器を押し進めた。
「あぁあぁぁぁーーーッッ」
とエオメルは狂乱の声をあげ、逃げようともがいた。
それを後ろからがっちり両手でいましめつつ、ファラミアのものは後腔をめりめりと押し開きながら侵入していく。
「痛いーッ、嫌だぁッ、ひぃーッ、こ、壊れてしまうッ!セオドレドッ、助けてくださいーッ」
泣き喚いて助けを乞う従弟に、セオドレドはどうしたらよいのか判らず、おろおろしていた。
エオメルの中には自分のペニスと、ファラミアのペニスが途中まで納められている。下手に身体を動かしたら、そのまま従弟の肛門を裂け破ってしまいそうだった。
「ちょっとくらい皮膚が破けたからって、死にはしませんよ。うん・・・あとちょっとで全部入ります」
「うわあぁ、ファラミアのがなんかゴリゴリする〜〜〜」
未知の感触に、セオドレドがうろたえた声を上げる。
エオメルの方は、ただでさえ極太の従兄のものが入っているのに、さらにファラミアのこれまた立派な逸物を受け入れさせられて、激痛に痙攣している。
「これくらいでいいでしょう」と弟君は満足の息を吐いた。
そして「じゃ、動かしますよ」と言って揺すり上げはじめるのだった。
「ぐはっ、うあぁッ」とエオメルが死にそうな声を絞り出す。
「よっ、よせ、ファラミアッ」
自らの性器が、従弟の内壁の中で、弟君のものと擦りあわさせる妙な刺激に、セオドレドは首をうち振って呻いた。
「ああ、こんなに狭くて熱い経験は生まれて初めてです。動かす余裕の無いのを無理にこう、突いていると、セオドレドさまのとわたしのものが絡み合い、濡れあって何とも言えず」
グッグッ、と弟君が大胆に腰を突き出すと、それに連動してエオメルとセオドレドの身体も揺れる。
「ひぃッ・・・いぁッ・・・がはぁッ・・・」
「あッ、んぅっ、や、やだこんなことッ」
エオメルが断末魔の悲鳴を洩らすのとは対照的に、セオドレドは金髪をシーツに散らして悶えていた。
「い、いいっ・・・いや、良くないッ、あぁ・・・こんなの初めて」
ローハンの王子が、あからさまな快楽の喘ぎをあげるのを見て、ファラミアは白い貌に晴れやかな笑みを浮かべた。
「あなたのそんな顔を見られるなんて光栄です」
そう言ってさらに突きたて、性器同士を押しつけあう。
二本の侵入物をぎゅうっと締め上げてくるエオメルの後腔のなかで、セオドレドはついに耐え切れなくなった。
「はッ、あぁーーーッ」と高い声を上げて、熱い迸りを放出してしまう。
放たれた精液は、ファラミアの性器をしとどに濡らした。
「おや、ちょうどいい潤滑剤を頂きました。ありがとうございます王子殿下」と微笑みながら、またしても激しく押し上げる弟君であった。
「あ、やッ、もうよせッ、ひぃッ・・・感じるぅッ」
新たな刺激を受けたセオドレドが、すぐに勃起する。
そして、自らも腰を動かしてむさぼりはじめた。
「ああ・・・とても素敵ですよ、セオドレド。エオメル殿を通して、あなたを抱いているようで、たまらない・・・」
澄んだ青い瞳でローハンの王子を見つめながら、ファラミアは熱くつぶやいた。
「あ、あ、あ、あ、あ・・・ファラミアッ・・・はァッ、いいッ、ファラミアぁッ、もっとぉーーーッ」
セオドレドが甘い声を上げて催促すると、弟君は「仰せのままに、王子殿下」と頷いた。
リズミカルにもたらされる淫らな快楽に、セオドレドは身悶えして喘ぎよがり、ファラミアは満足を覚えながら苦痛なくらいの締めつけを堪能していた。
そしてエオメルはといえば、無理な結合を強いられた部分から血を流しつつ、どんより瞳を濁らせて失神しているのであった。
密やかな、しかし熱心で甘みを帯びた囁き声が、耳元で聞こえている。
エオメルは、厚く息苦しい雲の中でもがくような感覚を覚えながら、眠りから覚めようとしていた。
「よせ・・・離せファラミア」その声の主は従兄のようだった。
「ふふふ。あんな声を出しておきながら、そんなことを言っても説得力がありませんよ」と言っているのはおそらく執政家の次男だと思われた。
二人は倒れたままのエオメルの横で、絡み合ってもがいていた。
セオドレドの上に乗ったファラミアが、王子の腕を押さえてベッドに押しつけている。
弟君が相手の首筋にチュッと口づけて跡を残すと、ローハンの王子は「ああっ」と喘いだ。
「わたしに触るなったら・・・!」
「本気じゃないことはわかっていますよ。なかなか素直になれない、可愛い方だあなたは」
「わたしはずっと昔から、おまえが大嫌いなんだ」
ファラミアはセオドレドの耳に舌を這わせながら言った。
「ボロミアがあなたよりわたしを愛しているから、でしょう?わかっています。そのことに絶望して、あなたはわたしたちから遠ざかり、ミナス・ティリスに来なくなった・・・なら、これからはわたしが兄上以上にあなたを愛して差し上げますよ」
「そんな、勝手なことを言うな」
いやいやと顔を背けるセオドレドの顎をつかんで上向かせると、ファラミアは唇を重ねて舌を深々と差し入れた。
「んぅ・・・」
逃げる王子の舌を捕らえて、甘く噛み、強く吸う。
セオドレドはびくんと身体をうねらせた。そしてファラミアの背中に腕を回してしまった。
そのまま二人は、互いを強く抱きしめあいながら、口づけに没頭した。
唾液が混じりあい、舌が絡んで痛みを伝え、息が出来ないくらい深くむさぼり合う。
「−−あぁ・・・」
ようやく開放されて、はぁはぁと息を吸うセオドレドの整った顔を見つめながら、ファラミアが相手の下半身に指を伸ばす。
「あッ、駄目」
王子は慌てて弟君の手を除けようとした。だが間に合わず、キュッと握られてしまう。
「くっ・・・!」
切なげに喘ぐと、握られた物がファラミアの手のなかで固さを増した。
ゆっくり強弱をつけながら刺激すると、セオドレドは相手の手の動きに合わせて「あッあッ」とよがった。
ファラミアが甘いため息を洩らしながらかれに言う。
「あなたがわたしに触れられるのを嫌がっていたのは、あまりに感じやすいからだったんですね。こんなに感度のいい身体をなさっているとは気づかなかった・・・うかつでした。そもそも、兄上に恋したりするのが間違いですよ。初めからあなたの相手はわたしがするべきだった。わたしはずっと、美しい年上のあなたに憧れていたんです」
「んんッ・・・ファラミア・・・!」
セオドレドの身体が次第に熱を帯びて、熱くなる。
「でも、今からでも遅くないですね。セオドレド」
「ああ・・・ファラミア、わたしをどうするつもりなんだ・・・」
「決まっているでしょう、あなたをわたしの物にするんです」
「そんな・・・止めてくれ」
「わたしは随分長い間待ちました。もう逃がすものですか」
と、最高に盛り上がっているところではありますが。
「・・・ちょっと。二人で何をしてるんです」
低い声が上から振ってきた。
セオドレドとファラミアはハッと我に返った。
すると、ゆらりと上半身を起こしたエオメルが、大きな瞳に怒りを湛えてかれらの姿を見下ろしていたのである。
「お、おうエオメル、目が覚めたのか」
従兄があわてて弟君を押しのける。
ファラミアは一瞬、物惜しげな視線を王子に送ったが、すぐにエオメルに微笑みかけた。
「エオメル殿、先ほどは大変結構な経験をさせて頂きました。そして、わたしとセオドレドさまも互いに深く相手を理解し合うことが出来たのですよ。実に素晴らしい。みんなあなたのおかげです。ね、そうでしょうセオドレドさま」
などと言ってにこにこしている弟君と、「そ、そうだな」と答えつつ何故か目を合わせようとしない従兄の顔を疑わしげに見比べるエオメルであった。
すると、視線をそらしていたセオドレドが、従弟の下半身を見て「うわッ、すごい血だぞエオメル!」と叫び声をあげた。
え?と自分の身体に目をやったかれは、臀部から筋模様になって太腿を汚しながら滴り落ちている血液の多さに、「ヒッ」と悲鳴を上げた。
そのまま貧血を起こして、横倒しに倒れてしまう。
「大丈夫か、エオメル。ファラミア、桶に水を汲んできてくれ!」
セオドレドがかれの背中を撫でながら、弟君に指図する。
倒れたとたん、無理に使われ痛めつけられた肛門が激痛を伝えてきた。
「ぐっ、痛い・・・!」
苦痛に耐え切れず、呻いてしまう。少し裂けてしまった部分からは、まだ生暖かい鮮血があふれていた。
シーツの上には大きな血溜りが出来ている。
「持ってきましたセオドレドさま」
ファラミアが運んできた水に布を浸して患部にあてられると、「ひぃッ、くぅッ」とエオメルは悲鳴を上げた。
「少しのあいだ我慢しろ。それほど深く裂けてはいないからな。出血が止まったら、薬を塗ってやる」
セオドレドは洩れ出てくる血をぬぐいながら従弟に言った。
かれは苦痛に耐えつつ、自分を心配そうに見つめる従兄と弟君の顔を見やった。
そして「・・・わたしがこんなに血を流していたというのに、それにも気づかずあなた方は・・・」と声音に怒りを潜めて呟いた。
セオドレドがあわわ、とうろたえて視線をそらす。
しかし弟君は相も変わらぬ涼しい顔で笑みを浮かべているだけだった。
−−わたしはファラミア殿がたまらなく好きだ・・・同じくらい、わたしはセオドレド殿下のことも愛している。どちらも、とても大切な人だ。
−−だが、その大切な二人が、わたしを無視して二人で愛し合うのはいやなのです。これ、どうしたらいいんでしょうセオドウィン母上・・・。
と、心の中で亡き母に問うエオメルであった。
横たわるかれの傍らでは、従兄が寝台に腰かけてつき添っていた。時々かれの髪をそっと撫でている。
そしてベッドのそばに置いた椅子には、執政家の次男が足を組んで優雅に座っていた。
その二人が、時折エオメルの目を盗んで微妙な視線を交し合っているようなのである。
(母上、教えてください。わたしはどうしたらいいのですか)
すると、亡き母が美しい金髪をなびかせながら、かれの脳内に光臨した。
(ああ母上、お会いしたかった)
(おほほほほ、エオメルったら。それはこういうことですね。わたしはAさんが好き。そしてBさんのことも好き。でも、AさんとBさんが仲良くするのはすっごく嫌!なんだそりゃー。おまえは日本の女子中学生かー!)
と厳しいお言葉を発して、ほほほほほと笑い声をあげつつ母上は消えてしまったのだった。
−−ああ〜・・・とがっくりうなだれるロヒアリムである。
「・・・ねえ、ファラミア殿はわたしとセオドレド殿下のどちらをより愛しておられますか」
ようやく出血も止まり、痛み止めの薬湯を飲んで落ち着いたエオメルは、ストレートに弟君に聞いてみた。
「おや、あなたとセオドレドさまとでは、ですか。そうですねえ」
ベッドの上のかれに、笑いを含んだ声でファラミアが言う。
ゆったりと落ち着いた態度に見せかけてはいるが、内心痛いところをつかれて弟君が動揺していることに、セオドレドは気づいた。何といっても、長いつき合いの間柄である。
「こいつが愛してるのはボロミアだけに決まっているだろう。本当のところは、兄以外の奴は人間と思ってないくらいなんだからな」
揶揄の口調でカモフラージュしつつ、セオドレドが助け舟を出す。
「ひどいな、王子殿下ったら。そんなことありませんよ」とファラミアが王子を見つめて答える。
その視線を交感し合う二人の様子に、胸の中をモヤモヤさせつつ、さらにエオメルは追求した。
「では、ボロミア殿のことは置いておいて、さっきの質問に答えてください。わたしと殿下のどちらをより好ましく思ってらっしゃいますか」
するとファラミアは「あなたです、エオメル殿、わたしは殿下よりもあなたを愛しています」と即答した。
セオドレドがそっとため息をつく。その様子を弟君は横目でちらりと見た。
「ほ・・・本当ですか」とエオメルが尋ねる。
「もちろんですよ、可愛い方。この数日間の熱い日々のことをお忘れになったのですか。わたしがどれほどあなたに夢中なのか、ご存知でしょう」
「では、わたしとボロミア殿とでは、どちらを愛しておられますのか」
更に更に突っ込んで訊くエオメルである。
「ふふふ、もちろんあなたですよエオメル殿。わたしが一番愛しているのはあなたです」
だが、それを聞いたロヒアリムは、「・・・そこまで言われると、嘘臭い・・・」と、ふて腐れた声を出して毛布をかぶってしまった。
(おや、失敗でしたかね)
(やりすぎなんだよ。真顔であんな嘘がつけるんだから、まったく信用ならん奴だ)
(あなたの従弟殿を傷つけまいとしたのですよ)
アイコンタクトを取りながら、肩をすくめあうセオドレドとファラミアであった。
と、そこにいきなり扉が開いて、太陽のような笑顔を浮かべた執政家の跡継ぎが、ずかずかと入ってきた。
「やあっ、ここにいたのかみんな!探しましたぞ!」
「兄上」
「なんだ、おまえまで来たのかよ」
弟君と幼馴染が驚きの声をかけていると、がばっと毛布を跳ね上げてエオメルが身体を起こした。
「知っていますか、ボロミア殿!ファラミア殿はあなたよりもわたしを愛してしまったそうですよ!それを聞いてどうなさいます!?」
「な、なにを言うのですエオメル殿」
思いもかけぬ告げ口に、さすがにファラミアも焦って口ごもった。
「いや、兄上、それはですね」
言い訳しかけたものの、ボロミアがにかっ☆と笑って弟の言葉をさえぎる。
「なんですと!おお、それはエオメル殿は魅力的ですからなあ!わたしもあなたが大好きなので弟の気持ちがよく判りますぞ!そうそう、わたしも弟よりあなたの方が好きかも知れませんなあ、わっはははー!」
と、こう、人の心の機微というものを、まったく理解していない兄上である。
「あ、兄上・・・」
ファラミアが複雑な表情を浮かべて、兄を見る。
その様子は、何となく見てはいけないものを見てしまったような気をエオメルに起こさせたのである。
つい、詰まらぬ事を言ってしまった我が身を恥じる軍団長だった。
というような事には何ひとつ気づかないボロミアは、「あっ、そうだぁ」と急に言って背中に担いだ荷物を下ろして、ごそごそとかき回しはじめた。
「届け物があってなあ。ほら、これッ!」
じゃーん、と取り出したのは、例の巨大チ○コのオブジェであった。ちゃんとゴントーリアン用とロヒアリム用の二つが揃っている。
それを見たセオドレドが「ギャッ」と呻く。
「な、何故おまえがそれを」
「いやあ、二日前のことだ。アンドゥイン川の周辺を警備していたらなあ、これが上流の方からどんぶらこと二つ並んで流れてきてなあ。おや、こんな所にこんな物が、と驚いて拾い上げましてな。今日届けに来たという訳だ」
「拾うなあー!せっかくわたしが捨てたのに!」
セオドレドが叫ぶと、ボロミアは驚いて王子を見た。
「捨てた、ですと!それはとんでもない不敬行為だぞ、セオドレド。先祖の貴重な遺産を!」
「まあまあ、こうしてまた見つかったのですから、いいではないですか」
弟君があいだに入る。
「これからもゴンドールとローハンは仲良くすべし、との我らが始祖の思し召しでしょう」と言って、ファラミアはローハンの王子にウィンクした。
「じゃ、ベッドもあることだし、さっそく使いましょうか」
弟君が言い、寝台の上のエオメルは身体をずらしてスペースを空けた。
そのシーツの上が血で真っ赤に染まっているのを見て、ボロミアは目を剥いた。
「す、すごい血の量ではないか!三人でとてつもないハードプレイを楽しんでいたのかッ!?もぉお〜わたしを仲間はずれにするなんて、ひどいじゃないかッ」
地団駄を踏んで悔しがる兄に、弟が慰めるように言う。
「でも、もちろんこれからは兄上が主役ですから。このディルドウのゴンドーリアン用は、兄上がご使用になりますね」
「当然だッ!」
すぐさま、脱ぎにかかるボロミアである。
「さて、エオル王家用の方ですが・・・エオメル殿は、先刻大事なところを酷使しすぎましたからね。まだちょっと無理でしょうか」
「そうですね。それにわたしはこのあいだ使わせて頂きましたから。やはりここは、セオドレド殿下に」
などと肯きあいつつ、弟君と従弟は同時にセオドレドを見つめるのであった。
「なんだと?嫌だっ!わたしはもうそんなものに触りたくないから、捨てたのに」
つ・・・と素早く近寄ったファラミアが、王子の腕を押さえる。
「あなたが素直に自分の心を表現できない方だということを、わたしはちゃんと理解していますから」
そう囁きかけ、そばで兄が「そうそう、いやがるふりをしていても、セオドレドは内心やる気満々なのですぞ!」と解説した。
弟君は王子の腕をぐいと引っ張り、そのまま遠心力をつけてベッドの上に身体を放り投げたのだった。
そして「ヤダッ」と言って逃げようとするのを、押さえつけながら「兄上、エオメル殿!さあセオドレドさまが動けなくなるように手伝ってください」と協力を要請する。
「よっしゃー」
「わかりました、ファラミア殿」
「うわぁッ、そばに来るなぁッ、やめろ、やめろったら!」
長い手足をバタつかせて暴れるのを三人がかりで取り押さえ、セオドレドを恥ずかしい四つん這い姿にしてしまう。
「畜生!ファラミアっ、やはりおまえは信頼できん奴だぁッ」
「お褒めの言葉と受け取っておきますよ、王子殿下」
弟君は口元をほころばせた。
「エオメルッ、こいつらをどけろ!」
セオドレドはわめいたが、従弟は瞳を見開いてかれが尻を上げて這う格好を凝視していた。
「いやですセオドレド。わたしは巨大チ○コを突っ込まれてヒィヒィよがるあなたの姿が、すっごく見たいです」
「お、おまえ・・・目が変だぞ」
王子が怯えた目を従弟に向けているうちに、かれの背後に回ったファラミアが、ホースディルドウをさし付けた。
「では、用意はいいですか。入れますよ」
「まっ、待てえッ、あッ、ああッ、いやぁあーーーーーーーーッ・・・」
「ボロミア殿がいらしたとたん、また一段と騒がしくなったな・・・」
階下のエオレドたちは、そう呟きながら天井を見上げてため息をついていた。
二階のエオメルの寝室からは、ドッタンバッタンギャーワーヒー!!と物凄い音と嬌声が洩れてくる。
その大騒ぎな物音を聞きながら、なんとなく、「この国もゴンドールも、もう終わりなんじゃないかなあ」との思いがよぎるロヒアリムたちであった・・・。
20050313up
やあねもう・・・。ファラ/セオについ萌えてしまいました〜途中で自主規制。
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