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震災レポートNO.17 <2011・4・4>

間違いなくレベル6に達している原発被害を受けて
政府は”東電マル投げ”に代わり海外企業への”対策マル投げ”は絶対すべきでない

<レベル5から6にとっくに移行していた>

●政府自身はまだ「可能性」しか認めていないにもかかわらず、福島原発の炉心溶融は、相当深刻な段階であることは間違いありません。
 炉心に燃料棒のある1〜3号基の全てで炉心溶融が発生しており、しかも少なくともその一部は、溶け出した核燃料がメルトダウンして、炉心容器から外に出ている可能性も高いと思います。
 したがって、原発事故の危険度を示すレベルはスリーマイル島事故のレベル5から、より危険なレベル6に達していることは明らかです。

<報道されなかったレベル6のサイン>

●この事実に関して、私たちでさえ本格的炉心溶融を察知できるチャンスは、この間の報道から明らかになった事実を総合して分析してみれば、2度あったと思います。
 しかしいずれもショッキングな事実のみに報道が集中した一方で、それまで発表されていた数少ない大切なデータがきちんと報じられなくなったため、私自身も事態の本当の深刻さ・・・つまり福島原発がレベル6に達しつつあることを見逃していました。

●本格的炉心溶融を示すサインがあらわれた1度目の機会は、震災レポートNO.3を書いた3月15日の時点です。
 そのときのレポートに書いたとおり、福島第1原発2号基で、海水投入の水を送っていたポンプ車が燃料切れという初歩的ミスで故障し、水の投入が停止したまま気づかないでいるうちに、水位が急速に下がって炉心の燃料棒が一時水面から完全に露出したというニュースが流れました。

●ポンプの故障を直して海水投入を再開した結果、4メートルの燃料棒の半分程度まで水面が上がったところで、またまた水面が上がらなくなったと報じられました。
 この時には、「炉心の圧力容器から水が格納器に漏れ出していると思われ、格納器も含めて水位を上げていくしかない」と説明されました。

<格納器の水位がなぜ上がらないのか>

●もしこの説明のとおりなら、時間が多少かかっても格納容器ごと炉心容器内の水位も上がってくるはずですが、その後も2号基の燃料棒が全部水面下に下がったという報告はないので、明らかに炉心が一部むき出しになったまま過ぎているのです。
 いくら炉心容器より大きいとはいっても、格納器にも水が満ちれば水位は上がるはずですから、そうならないのは、格納器自体に損傷があって、投入している冷却水が外に漏れ出しているとしか考えられません。

●このことは、15日未明に水位が上がらなくなって以降に投入している水量と、格納容器の容積のデータを持っている東電では、何時間経てば圧力容器の内側と同じ水位まで格納器の水位が上がるはずであり、それでも水位が上がらなければ、やっぱり格納器から流出しているのだと把握できたはずですが、そうしたレポートはいっさいありません。

●その後2日ほど経過して、格納器の下側をリング状に取り巻く形をしている水のタンクに爆発音がして損傷がおきたなどという報道があり、格納器も無事ではないということが明らかになりましたが、格納器の損傷部分は、おそらく複数あると思われます。どこからどの程度の量の水が漏れ出しているのかは、いまもって判然としていないようです。

<データを分析すれば損傷箇所が分かるはず>

 私は格納器の損傷箇所として3つの可能性があると思います。

@地震で振動の影響を受けやすい場所が損傷した場合

 格納器を通って上部から炉心容器に冷却水を循環させるパイプがいくつか通っているはずですが、その付け根の部分もしくは弁など相対的に重くなっている部分が地震の振動で破損している場合。(もしこういう状態なら、全国の古い原発はすべて危険であり、相当厳しい点検が必要でしょうが)

A格納器の下の水タンクに核燃料が接触して、水蒸気とともに水素が発生し、小規模な水素爆発が起きた場合
 この場合は、上からいくら水を投入しても、その分下から全て流れ出してしまう深刻な状態になりますので、可能性は低いですが最も危険な状態といえます。

Bいちばん可能性の高いのは、格納容器の中にいくつか入っている電線類の通る穴が、格納器が炉心容器とともに加熱されて一時300℃以上になった際に、穴を埋めている樹脂が溶け出し、その隙間からかなりの箇所で水漏れが起きていることです。
 床に置いたジョウロのような状態で、水を入れ続けても、水位が上がればジョウロの穴から水が漏れていくという状態になります。
 そして、これらの穴の位置が炉心内の高さ4メートルの燃料棒の中間もしくは下の位置にあった場合、一定量の水を入れても、核燃料の上部が常にむき出しのままとなり、時間経過から見て、その部分は完全に溶融状態になっていると考えざるをえないでしょう。

●問題なのは、格納容器からの水漏れが、@〜Bのどのレベルなのかは、私たち国民への公表データでは不明ですが、東電や一部の専門家にはかなり分析が可能なはずなのに、生の観測データも分析も、何も公表されていないということです。

<炉心溶融の2つ目のサインは意図的に隠されていた?>

●炉心溶融が起きていることが判明した2度目の機会は、24日に作業員がタービン建屋の床に溜まっていた水で被曝した事故でした。この時被爆した放射線量や溜まっていた水の放射能が公表されて、放射性のヨウ素やセシウムが大量に含まれていたことから、炉心の核燃料の溶出が確実と分かったというものです。

●ところが作業員の被爆後3日目に、被爆事故以前からタービンの建屋にかなりの放射能を含む汚染した水が流れ込んでいることが把握されていたのに、作業員に伝えられていなかったと謝罪発表がありました。
 作業員が全員長靴をはいていて、被爆量が少なければ、このデータもずっと意図的に隠されていた可能性があるといわざるをえません。
 いずれにしても16日ごろから始まった、自衛隊や消防庁レスキュー隊による継続的放水による大量の海水が、原子炉建屋内に降り注いだあと、どこに流れていくかを考えれば、建屋の穴だらけの状態から、隣りのタービン室や外の地面より低いトレンチやピットにどんどん溜まっていくことは十分考えられることで、水に乗って、炉心の放射能が建物の外に漏れ出している事実が、作業員の被爆より6日ほど前から東電には分かっていたということが想像されるのです。

<同じ過ちを今でも繰り返していないか>

●今、東電が厳しく非難されているのは、地震と津波ですべての冷却機能が失われたときに、それでもまだ「何とか廃炉だけは避けたい」という思いから、初期の圧力弁のガス抜きをやらずに水蒸気爆発を起こし、さらに廃炉が確実となる海水投入をためらった挙句、炉心溶融が制御できない状態に陥った責任です。
 しかしその後も、少なくとも私が指摘した炉心溶融の2つのサインを公表せずに自分達だけの判断で姑息な対策を繰り返し、現在に至るまで、様ざまな隠し事を続け、あとでさらにショッキングな問題となって発覚するという同じ過ちを繰り返しているのではないでしょうか。

●こういうときに、政府が日本中の英知を結集して現場に乗り込み、全てのデータを強力に東電から出させる措置をとらないのか、また原子炉の外に拡散し続けている放射能を、常時監視で空や海や地上の無数の地点で測定し、公表すれば、あんな30キロの同心円に振り回されることも無いはずであり、数千億円かけて宇宙に飛ばしている監視衛星からの鮮明な写真も公表し、民間の無人飛行機のチャーターで原子炉付近の詳しい映像を入手して分析も可能なはずですが、全くやろうとしていないことも問題だと思います。

<海外企業の協力は主体的な受け方が不可欠>

●むしろ今後のやり方として気になるのは、対策の民間企業マル投げ、それも海外企業マル投げの姿勢です。
 福島原発の核燃料棒から溶け出したと思われる放射性物質が、建屋の外にもトレンチという地下施設にも、大量に放射能汚染水として溜まっており、総量は1万3千トン規模になるとも言われます。
 今後、炉心を冷やすための真水の大量投入を続けるとともに、それが炉心を通って次つぎ汚染して漏れ出してくるのをさらに処理していかねばならないでしょう。数年もしくは十年以上に及ぶ長い厳しい取り組みになると予想されます。

●こういうとき、フランスやアメリカ等の政府や大企業が支援に来日しており、協力を受けることは当然です。
 しかし、米仏の政府や企業には、無私の支援ということのほかに、日本での原発推進政策を変えないでほしいという思惑が働いていることは明らかです。
 フランスの大企業はCEO(最高責任者)を送り込んで来ています。彼らは、スリーマイルやチェルノブイリの事故処理にも当たったノウハウを持っているそうですから、専門家としても一流でしょう。

●しかしここで企業の、とりわけ海外企業の協力を得るときに大切なのは、彼らが現場で得た全ての情報を日本国民とともに世界中に公開させることです。
 企業秘密を盾にこれがなされなければ、日本の原発は、今後全てこの会社にメンテや修理をお願いせざるをえなくなり、我われは、原発に替わるエネルギーへの転換が進むまで長期にわたり「核の安全」を高いお金で買わなければならなくなります。

●日本政府は単なる外国の企業頼みではなく、まずもって政治的・学問的な立場の違いを超えて、国内の原発に関わる英知を結集し、また本来責任の一端をになっているはずの、福島原発を設計したGEの技術責任者を呼びつけて、その権限を全面的に発揮してき然と対処すること、そのための強力な組織を稼動させることが必要ではないでしょうか。
 そうでなければ今後の日本の原発政策が、「救援」を口実に、世界で少数派になりつつある原発固執派の思惑で振り回されることになりかねません。

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