はじめ通信10−1007
堀船水害はなぜ再発したのか(その12)
都議会での質問報告(1)
9月30日都議会環境建設委員会 石神井川水害問題報告(9月16日)に対する質疑より
<かち議員の質疑記録:そねはじめの責任で記録を作成しましたので、正式な議事録とは若干の言葉の違いがあることをご了解ください。小見出しもそねがつけました。>
5年おきの100_豪雨と大水害の現実にどう対処するのか
都や首都高は責任もって可能な対策に全力あげよ
○かち委員 私からも集中豪雨の報告に対する質問をいたします。
近年、地球温暖化、ヒートアイランド現象を背景に、雨の降り方が大きく変化していっていることはだれもが実感しているところです。五○ミリ以上の雨は、都市化が進む東京の区部で確実にふえています。二十年前には十数カ所の観測所で測定されていたんですが、それが五年前には六十六カ所で観測されています。この雨の降り方も、一部地域に偏在している傾向にある。しかも今回のような局所的なゲリラ豪雨は、神田川や石神井川の上流など、区北西部に集中していると都自身が認めています。
既に一時間100ミリを超える豪雨が散発している状況から、豪雨が集中している地域においてはまず、100ミリを想定した対策が喫緊の課題となっていると思います。
今回溢水した石神井川の付近を私も現地を見てまいりましたが、これは人為的な問題が複合的に重なって起きているといわざるを得ません。
そこで、具体的に何点かお聞きしたいと思います。
ここは、中央環状高速王子線が川の上空を走り、今回溢水した場所付近は、高速道路からのランプを接続するための工事現場でした。そのため、この付近の河川整備の主体は首都高が行っているんです。また、今回の溢水場所から下流では七十メートルにわたって高潮対策のための工事を、川の中に構造物を仮設して東京都が行っている流域で起きた水害でした。
●5年前の水害の実態と教訓は
そこで、先ほどもお話がありましたが、この付近では5年前にも護岸の決壊という事故が起きております。この水害が起きた要因と概要についてお聞きします。
○横溝河川部長 溢水事故が発生した平成十七年九月四日は、石神井川流域におきまして、1時間に五○ミリを超える集中豪雨があり、練馬区内の観測所では109ミリの雨量を観測いたしました。
このときの溢水の原因でございますけれども、第一に、想定した水位を超える状況が発生したこと。第二に、首都高速道路株式会社が都の証認した工事内容に違反をいたしまして、承認どおりの構造でかさ上げを行わず、アンカーボルトが破損して、設置していた仮設護岸が倒壊したことによるものでございます。
○かち委員 前回の護岸決壊の事教は2005年9月4日で、このときは堀船一丁目を中心に約400世帯に及ぶ床上床下浸水被害に見舞われたわけです。その原因が、首都高がコスト削減のために手技き工事を行い、護岸かさ上げのため載せていたT型鋼が接続ボルトの腐食によって崩壊するというものだったわけです。
溢水する前に水圧で仮設護岸が決壊してしまったというずさんな管理状況が原因だったということを首都高自身も認めざるを得なかった事故でした。
この事故を踏まえ、都は、首都高がつくっている水防計画上、首都高に対しどういう指導をされたのでしょうか。
●水防計画の見直しで、なぜ危険な護岸が見落とされたのか
○横溝河川部長 都は、首都高速道路株式会社から提出された、平成十七年九月四日、石神井川水害に関する調査報告書や、平成十八年の水防計画の内容に対しまして、立入検査を行いまして、水防計画区域の拡大に応じた水防資材の確保、参集避難訓練などの実施、実効性のある水防計画の確立というようなことについて指示を行いまして、是正させました。
立ち入り後の平成十八年十月以降は、指示した内容を加味いたしました水防計画書を毎年出水期前に出させまして、その年度ごとの施工計画書をつくらせております。それを見た上で、審査、現地調査を行いまして、必要な指導を行っております。
○かち委員 資料にも出していただきましたけれども、こういう首都高が出している水防計画書というのがあって、これが五年前に事故が起きる前につくったもので、これが十八年以降につくって今日まで続いているという計画書なんですね。(資料を示す)今、お話があったように、これそのものは、大きな工事をやっていますので、そこで働いている人たちの安全を守る、機材を守るとか、いろんなそういうことが中心の計画書ではあるんですけれども、しかし、都の指導もあって、付近の住民の浸水予防のためにも、十分な機材、土のうなどを準備しなさいというようなこともあって、それが書き加えられているというのがわかりました。
そのことについては後で述べますけれども、首都高が十二年前に行った水水理実験で、五○ミリの雨が降った場合、石神井川のこの地域は最も増水し、五年前に決壊した場所ですね。ここはかなり川幅も狭くなっていたと思うんですけれども、ここは最も水かさが上がる危険水域だということで、この区間は護岸を六・五メートルまでかさ上げをしているんですね。
そして、その次に増水危険度の高い区域が、前回溢水した横田橋の直近の下流で、溢水したこの区域だったわけですけれども、しかしここは五○ミリ対応だということで、護岸が五・六メートルのままになっているんですね。
石神井川の下流においては高潮対策が必要だということで、下流の方から護岸を高くしている工事をやっています。この五・六メートルから下流のところ、新柳橋のところまでは七十メートルの構造物をつくって、都が直接、護岸工事をやっているわけですけれども、この溢水した場所だけが五・六メートルで残されていた。
●水位が高くなるのに一番低いままの護岸から溢水
こういう危険性がわかっていながら、ここの部署を五○ミリ対応でいいんだということがいえるんでしようか。ここもやはりかさ上げをしておくべきだったのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○横溝河川部長 先ほども詳しくご説明させていただきましたが、首都高の工事区間は高潮区間に位置しておりまして、計画の堤防の高さはお示しのように五・八メーターでございますが、しかし、洪水の影響だけを考えた場合は、既設の堤防の高さは五・六メーターでございましで、工事期間中も含めまして安全牲が確保されております。
○かち委員 それは五○ミリ規模の雨が降ったときは安全性が確保されているということなんですけれども、さっき冒頭でいいましたように、既にもう五○ミリを超えている雨は頻繁に降っているわけです。一○○ミリを超える雨も、今回のように、二・三年に一回ぐらいはこの上流の方では降っているわけですよね。それを、五○ミリに対応しているから安全性を確保している、こんなことはいえないんじゃないでしようか。五〇○ミリに対応しているからいいんだといっていたら、だって一〇〇ミリを超えたら想定外だから、それはしようがないんだと。それじゃあ住民の方は納得できませんよ。
住民説明会が先ほどあったということでしたけれども、首都高がこの場で、ここの部署をなぜかさ上げしていなかったのかということに対して、将来ここの箇所は橋脚を建てるためにバイパスをつくって、川の流れをあっちへやったりこっちへやったり変える工事をしているんですね。ここは、間もなくバイパスをつくって、川でなくなる地域、そういうことなのでやらなかったという回答だったんですね。
●来年とり替えるからと、放置したのは安全よりコスト優先!
どうせこの区間は新しいバイパスにつけかえるんだから、将来なくす護岸にはかさ上げはしないという、まさにこれは防災よりも、コスト優先の姿勢があらわれているんではないでしようか。都として、この指導監督責任が問われる問題だと思いますけれども、認識を伺います。
○横溝河川部長 今回の溢水の原因につきましては、整備水準を大きく超える集中豪雨による自然災害であると考えておりまして、都が責任を負うものではないというふうに考えでございます。
○かち委員 河川管理の本責任者は東京都ですよね。今、部分的にエ事をやっているから首都高がやっているわけですけれども、しかし、整備計画に基づいてやっているから何ら問題はないといっている場合ではないというは、皆さんからもいろいろ出ているわけですから、そういうことに見合った対応を指導強化するのが都の責任だというふうに思うんですね。
この区間は、五〇ミリの降雨で行った首都高の水理実験でも、最高水位というのは五・五二メートルなんですね。五○ミリの雨が降ったら五・五二まで上がりますよと。
護岸は五・六メメートルです。わずか八センチの余裕しかないんです。今、もう五○ミリを超えている雨が降っているわけですよね。こういう状況で安全を確保しているなんていえるでししょうか。
この川の上流、練馬や板橋地域では、毎年のように五○ミリを超える豪雨があるのに、その対処を怠ってきたこと、また、高潮対策としてはかさ上げすべき場所であった。ここは高潮対策の場所でもあったわけですよ、対象地域。だから、五・八にすべき場所であったのにやってなかった。こういう問題もあるんです。
そういう意味では、リスクの高い箇所であったにもかかわらず、豪雨増水に対して対策をとる計画はなかったということです。
あったとすれば、首都高が作成した水防計画で、近隣住宅への浸水を防止するための土のうの備蓄と配置場所がここに図解で載っています。
しかし、今回のような急激な豪雨で護岸を溢水するような状況下では、土のうを一々運んで積み上げる余裕もありませんし、そんなことをしたって実効性もありません。実情に合わないものだったということです。
一〇〇ミリ以上の豪雨だから仕方がないと繰り返されていますけれども、それでは五年に一回のペースで繰り返す水害に耐えろということにもなります。たとえそうであっても、被害を最小限に食いとめる対策、減災対策をやっていたのかどうかが問われるものです。
現在、当該の護岸には、背後から補強もしながら、大きな土のうが並べられていますが、これが約四十センチ。ですから、六メートルになります。今回あふれた箇所にこれだけのかさ上げをしていたら、少なくとも減災をできたと思うんですけれども、どうでしようか。
○横溝河川部長 先ほど来、ご説明をさせていただいているところでございますが、溢水箇所は、整備水準である一時間に五○ミリの対策は完了してございます。七月五日、石神井川流域で一時間に五○ミリ以上の降雨がございまして、また、中下流部では八〇ミリ以上の猛烈な雨が降ってございます。特に、板橋区内では一一四ミリという記録的な雨が降ったわけでございます。このようなことから、今回の溢水は自然災害であるということで考えてございます。
●せめていま積んでいる土のうの高さで護岸整備を
○かち委員 私は首都高がやるべきことを怠っていたと。そこには都の管理責任もあるというふうに思っているんですが、都自身が問題はなかったんだと。でも、現に問題は出ているんですよ。それを問題はなかったといっている姿勢では、これは本当に大きな問題があると思います。
近隣住民の皆さんは、五年間に二度も浸水被害に遭って、本当に大変な思いをしているわけです。ラーメン屋さんも、機械屋さんも、もう展望がないと、どうしたらいいんだというふうにいっています。目の前の川からの溢水を食いとめてほしい、これが切実な問題です。一〇〇ミリ以上の豪雨に、ここだけで対応できるものではないということはもちろんですけれども、せめて可能な高さまで護岸を上げて、減災に努めるべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。
○横溝河川部長 先ほど来、お話ししているとおりに、溢水箇所では、整備水準である一時間に五〇ミリの隆雨対策は完了してございます。
○かち委員 土のうを積んでいる高さが今は六メートルあるんですけれども、そこに、やはりきちんと、今、応急処置ですけれども、そこをH鋼なりできちんとかさ上げをするということはできると思うんですけれども、それをやる意思はないですか。
○横溝河川部長 先ほどもお答えをしておりますが、現在の位置には、地域の住民の方々の不安を解消する、あるいは軽減するという観点から、緊急的に周辺の高さと同じ護岸のための土のうを積んでございます。これにつきましては、H形鋼に来月に変えていくというようなことは考えてございます。
○かち委員 六メートルの高さまでぜひ確保してやっていただきたいと思います。
現在、石神井川の現在地ではバイパス工事が行われていますけれども、これが切りかわるのはいつなのか、その護岸の高さはどのぐらいなのか、本川の完成時期はいつの予定なのか、その護岸の高さは何メートルになるのか、お聞きします。
○横構河川部長 パイパス水路の建設と切りかえは、平成二十三年三月までに完了いたしまして、その後、本川である新河道を建設いたしまして、その開通は二十六年八月を予定してございます。新堤防の高さは、高潮堤防の計画高であるAPプラス五・八でございます。
○かち委員 現在のバイパスの高さは六メートルでやっているわけですよね。だから、六メートルまではやっばり確保すべきだというふうに思うんです。高潮は五・八だからという一律な考えではなくて、やはり局所的に危ない地域ということはもう皆さんわかっているわけですから、そこを少しでも減災するという立場に立って、六メートルまでぜひかさ上げしていただきたいというふうに思います。
●都の工事桟橋の影響は第三者の検証を
今回の溢水現場の下流では、高潮対策ということで、都が護岸整備工事を行っているんですけれども、これが現場の写真ですね。(写真示す)こういう川の真ん中ぐらいまで、桟橋の構造物で数十本の杭が打ちつけて、七十メートルにわたって工事をしているわけですけれども、これが、水害が起きたときに、地元の方が状況を見ていて、また、現場を視察した専門家の方がたも、これが流れをせきとめて上流の水位を持ち上げたのではないかという疑念を持っています。
水利計算を行ったとのことですけれども、水位の上昇や、その影響はどのように判断されているのでしょうか。
○横溝河川部長 東京都は、工事に先立ちまして、施工段階ごとに桟橋杭等による水位上昇を水理計算等により求めまして、一時間に五○ミリの降雨による河川水位が既存の護岸高を超えないことを確認してございます。
今回の工事施工に当たり、事前に行った水理計算によりますと、仮桟橋を設置する工事箇所での水位は、APプラス三・五から四・六メートルでございます。
○かち委員 水理実験をやったのではなくて、計算でやったということなんですけれども、そういうデータがあるならすべて明らかにしていただきたいというふうに思います。
首都高が九八年に水理実験をやっています。川の中に数十本の杭を建てたときには、計算でも一メートル以上の上昇効果があるというふうに判断をして、模型実験ではさらにそれを上回る最大二メートル近い水位上昇があったというデータをこの水理実験の中で示しています。だから、杭をこうやって打つよりも、鉄板にした方が抵抗が弱いというふうなことをいっているわけです。そういうことも加味して、さらに北区議会では、我が党以外の議員からも、桟橋の影響の模型実験が必要だという声も出ています。これらも含めて、五年前と同様、専門家による第三者機関による検証を求めておきます。
●北区長の要請に応え100ミリ対策をめざせ
五年前の水害後も、水害場所を修理したけれども、次に危ない、このJTの倉庫前の護岸は五〇ミリ対応しているとのことで放置され、今回そこから水害が起きたわけです。
桟橋の影響については依然として疑問がぬぐえません。今回の水害も人災的側面が大きいといわざるをえません。都の責任も問われています。首都高と東京都は、被災者、住民に納得の得られる対応を求めます。
石神井川の下流では、現実的に五○ミリ対応では間に合わず、それを超える対応が必要だということは明らかです。北区長からも、国と都に一〇〇ミリ対応を求める要請が出ていますけれども、都は、どう受けとめているでしょうか。
○横溝河川部長 北区長から、七月十五日付で要望書をいただいていることは認識してございます。都は、現在、多発する局地的集中豪雨の増加などを踏まえまして、今後の河川整備のあり方について検討を進めております。これまでに過去の水害の分析ですとか、河川整備の効果検証などを行っているところでございまして、引き続き、今後必要となる河川施設について検討を深めてまいります。
○かち委員 石神井川の流域は川幅が十数メートルほどと、狭く、この十一年間で一○○ミリ以上の豪雨が、九九年の江古田と練馬、二○○五年の石神井、こことしの板橋というふうに観測されています。三回も発生しています。とても十年に一度などという状況ではありません。他の水域に比べても、典型的な都市型豪雨と都市型水害の矛盾が相乗的に集まっている特異な河川地域といえます。そういうところを考慮して、上流から下流まで、それぞれ可能なあらゆる対策を総合的、集中的にとることが求められていると思いますけれども、どうでしょうか。
○横溝河川部長 都内の中小河川の整備率、これ、治水安全度といういい方でいいますが、七五%でございまして、現在、まだ三○ミリの改修しかできてないところが残りの二五%あるということでございまして、こういう地域で大変な水軍に苦しんでいらっしやる方がたくさんいらっしゃいます。そういうことでございまして、五〇ミリ対策はまた道半ばでございます。そういう中にありまして、東京都といたしましては、引き続き、五○ミリ対策の整備を積極的に推進するということが、まず第一に重要だというふうに考えてございます。
そういう中で、今までもお話をしてまいりましたとおり、今後の河川整備のあり方について、広い視点から検討を行っているところでございまして、この中で、今後、必要となる河川施設について検討を深めてまいります。
●100ミリ対応をめざし間に合わなかった被害への補償制度も
○かち委員 本当に皆さんがご苦労されていることはよくわかるんですけれども、しかし、五〇ミリを一律にやらなければ前に進めないといっていると、事態の方はどんどん進んでいますので、その人たちがいつも水害に遭うことを免れないということではなく、降り方の状況をいろいろ分析されていると思いますので、そういうところには可及的速やかな対応をぜひとっていただきたいと思います。
総合治水対策としては、浸透機能の抜本的強化のための個人宅も含めた雨水浸透ますや、雨水貯留槽への助成や拡充、下水道のポンプ場の整備や貯留機能アップなど、可能な方法を全面的に取り組む中必要があります。さらに、すぐには完成できない一○○ミリ対策までに被害が出た場合、想定されているにもかかわらず、被害が出てしまうことは当然これからもあると思うんですけれども、そういう場合には、想定される雨量に対する対策が間にあわず、被害に遭ってしまった住民には補償も実施するなどの制度も検討すべきだということを申し上げて質問を終わります。
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