はじめ通信10−0930
堀船水害はなぜ再発したか(その11)
4年に3回の50ミリ降雨、5年おきの100ミリ降雨にどう対処するか
●水害シリーズNO.10の降雨の一覧表が分かりにくいとのご指摘を受けて、石神井川流域の主な雨量観測所と、隅田川出口近傍の観測所で、1時間50ミリ以上の降雨があった場合を、S60(1985)年から今年まで、公表されたデータをできるだけ探して経年で並べてみました。(所沢を右にはずしました)
(H20〜22年は都のデータがまだHPに載っていないので、国のデータのみになります。)
観測年
|
月日
|
志茂橋
|
荒川
|
板橋区
|
常盤台
|
江古田
|
練馬
|
石神
井
|
所沢
|
水害発生
|
S60
|
7/20
|
18
|
11
|
−
|
−
|
−
|
0
|
1
|
61
|
|
S62
|
7/25
|
19
|
28
|
−
|
−
|
−
|
59
|
28
|
14
|
|
8/24
|
59
|
20
|
−
|
−
|
−
|
14
|
35
|
14
|
|
H1
|
8/1
|
39
|
44
|
−
|
−
|
−
|
58
|
65
|
19
|
|
H3
|
8/23
|
18
|
34
|
9
|
6
|
−
|
10
|
56
|
4
|
|
H4
|
7/15
|
22
|
12
|
16
|
15
|
25
|
23
|
39
|
75
|
|
H5
|
6/21
|
72
|
14
|
43
|
42
|
0
|
8
|
4
|
2
|
|
8/27
|
39
|
55
|
34
|
40
|
41
|
33
|
29
|
20
|
|
H6
|
7/7
|
32
|
15
|
46
|
4
|
66
|
34
|
66
|
0
|
|
7/18
|
27
|
58
|
18
|
14
|
8
|
9
|
4
|
15
|
|
H10
|
8/28
|
44
|
17
|
58
|
24
|
15
|
17
|
21
|
41
|
|
H11
|
7/21
|
31
|
22
|
68
|
29
|
128
|
131
|
5
|
2
|
|
7/22
|
23
|
9
|
24
|
17
|
59
|
1
|
−
|
1
|
|
8/29
|
52
|
52
|
68
|
47
|
79
|
49
|
42
|
0
|
|
8/24
|
15
|
31
|
32
|
48
|
58
|
71
|
22
|
45
|
|
H12
|
9/11
|
69
|
13
|
51
|
28
|
62
|
24
|
27
|
35
|
|
H13
|
7/18
|
30
|
12
|
35
|
63
|
61
|
79
|
−
|
1
|
|
H14
|
8/4
|
74
|
17
|
25
|
24
|
12
|
17
|
−
|
5
|
|
H15
|
10/13
|
42
|
61
|
52
|
42
|
59
|
47
|
36
|
15
|
|
H16
|
9/4
|
81
|
43
|
62
|
39
|
65
|
41
|
23
|
13
|
|
10/9
|
42
|
66
|
40
|
46
|
46
|
46
|
39
|
24
|
|
H17
|
8/15
|
10
|
26
|
35
|
43
|
98
|
63
|
73
|
25
|
|
9/4
|
54
|
68
|
60
|
76
|
57
|
81
|
109
|
51
|
★
|
H19
|
7/29
|
29
|
16
|
23
|
35
|
25
|
28
|
63
|
61
|
|
H20
|
9/6
|
?
|
?
|
?
|
?
|
?
|
60(国)
|
?
|
1
|
|
H22
|
7/5
|
(北区:77)
|
114
|
?
|
?
|
69(国)
|
?
|
67・5
|
★
|
※H20以降の豪雨時の雨量について、都の観測所ごとのデータは都のHPにまだなく、今年7/5の水害時も北区と板橋区の報道されたデータと、気象庁の所沢と練馬の観測所(都の練馬観測所と場所が違います)のデータまでしか把握していません。
●一目で分かるように、昭和60年からの25年間のトータルでも、ほぼ4年のうち3年は石神井川の流域のいずれかで50ミリ以上の豪雨が発生しており、100ミリ以上の豪雨も99年以来3回襲っています。
100ミリ以上の降雨地域は全て中・上流域で、3回のうち2回は、堀船で水害が発生しているのです。
●とりわけ最初に100ミリ以上が発生した99年以降で今年までの12年間は、上流側の江古田、中流の板橋などで特に豪雨発生率の高いことが見てとれます。
また上流で降っても下流では降り方が弱かったり、その逆だったりした例が、この表で示した26回の豪雨のうち20回もあり、やはり降雨傾向は、石神井川流域と隅田川では異なります。
逆に、2005年(H17年)のように、上流で100ミリ以上、下流でも50〜60ミリが各地域で降ったときは大きな水害になっています。
●以上の点から石神井川流域の豪雨対策は、他の河川などに先駆けても拡充が必要だと考えられます。
具体的にデータが揃っている2005年の水害を例に考えてみると、石神井の109ミリをピークにして、練馬・常盤台・板橋区へと80〜70〜60ミリと雨量が傾斜しています。所沢を除く流域7観測所の1時間雨量の平均は、約72ミリとなります。
つまり石神井川の全流域で100ミリが降ることは今のところ考えられず、100ミリ規模をピークに50ミリ以上で段階的な雨量の傾斜ができると考えられます。
●時間50ミリの石神井川の水量・毎秒480トンは、都の総合治水対策における流域面積73・1平方キロ(一般の文献では61平方キロ)の半分程度の地域に1時間に渡り50ミリの降雨があり、その85%が石神井川に流れこみ、石神井川自身の流量で1割増えると仮定して試算していると推定しますと・・
<7310万u×0・5×0・05m(50_)×0・85÷3600秒×1・1=約480トン>となります。
●同じように、流域面積の半分に平均72ミリの雨が降ったとすると毎秒の流量は約680トンとなり、50ミリ降雨に比べ毎秒200トン・約4割増える計算になります。
これを上流で100トン、下流で100トンずつ分散して対策を打てば、王子駅南口付近の出口から隅田川合流点までの護岸のかさあげで、基本的に溢水をくい止めることは可能になります。
●合わせて上流部で吸収すべき1時間トータルで36万トンの水量を、流域各地の浸透機能のアップを図りながらも、一方法として練馬区内の降雨を石神井川に流さず、約2キロ離れた環7地下河川の貯留施設にパイプでつなぎ54万トンの貯留能力の一部を活用する手法も検討すべきと考えます。
もちろん神田川や妙正寺川で豪雨が発生していない場合に限られ、今年の7月豪雨なら条件が合いますが、05年9月4日の場合は使えません。
●こうした手法も駆使して石神井川における典型的都市水害と、正面から立ち向かう姿勢をもたない限り、東京都は川の治水に関して住民からの信頼を得られないでしょう。
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