【廃墟マニヤ File036】
集落Oの廃屋(山梨県)
(その2)
下界では桜も散ってしまったというのに、このあたりは丁度梅が見頃という感じです。昼過ぎまでは晴れて、軽く汗ばむ陽気だったのに、この集落に辿り着いたときには、雲が出て風も冷たい北風に変わってきました。天気予報通り、夜に向けて天気が崩れるようです。
最初に書いたように、ふだん廃屋は見かけてもスルーなのですが、たまたま、このときに見つけた廃屋がずいぶん立派な造りだったので、早く帰らないとまずいと思いながらも、ちょっとだけ立ち寄っていくことにしたのでした。
車も通れない細い道を登っていくと、目指す廃屋の手前に古い半鐘が残っています。
最後の一軒の人がこの半鐘を鳴らしたとしても、音が届く範囲に集まってくる人は誰もいないのかと思うと、少しばかり淋しい気持ちになりました。聞いた話では、この集落、最盛期には20軒ほどの家があったそうです。
写真はあえて撮らなかったのですが、入口手前には比較的新しい墓が建っていました。この家のものかはわかりません。
墓の前を通って、庭にお邪魔してみます。建具の様子などを見ると、比較的最近まで(といっても昭和ぐらいでしょうか?)、住まいとして使われていたようです。屋根裏が高い造りになっているのは、昔、養蚕をやっていたためでしょう。
屋敷の前には物置のような建物がありました。
開いていた扉の隙間から中をうかがうと、どうやら便所のようです。
そして隣は風呂場でした。五右衛門風呂の釜があってもおかしくない感じ。
さらに物置も兼ねていたようです。割れた陶器は御稲荷様のキツネの像でしょうか? 草刈り用の大きな鎌もあります。
こことは別の倉庫には、少し前まで使われていたような生活用品がそのまま収納されていました。
さて、あらためて母屋の方を見てみることにします。今でもこの集落には水道が来ていないとのことですが、電気は昔から来ていたようで、壁に碍子が残っています。
あまり個人の住宅には上がらないことにしているので(正直言うとこのルール、それ程厳密に守っているわけでもありません)、外から室内の写真も撮っておこうとしたところ……
……なにか赤い物が見えます。室内が薄暗くてはっきりとはわかりませんが、なにか紐状のものがからまっているようです。よく見ると、柱には鎌か鍬のようなものが刺さったままになっています。さらに、この隣に金色に光るものがあったので、ISO感度を上げて写真を撮ってみました。
そこに何があったのか知りたい方はここをクリック! [533×800pixel]
謎は謎のままにしておいた方が面白いこともある、と最近思うようになってきた私は、疑問はそのまま置いておいて、天気が悪くなる前にとっとと家に帰ることにしました。
ところで、先ほどの写真をご覧になってしまったあなた、背後に何かの気配を感じませんか?
実は私、この廃屋を訪れてから、ずっと誰かに見られているような気がするのです。今、これを書いているときも、一人のはずなのに、後ろからの視線を感じて仕方ないのですが……。
END
(2012.4)
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