思うこと第9話 平成16年2月18日 記す

いわゆる“大名行列・教授回診”を廃止

 先日読んだある患者さんによる闘病記で、その患者さんが某大学病院に入院した際に大名行列的な教授回診を体験し、「あんなもの、即刻止めてしまえ」と痛烈な批判を書いておられるのを読み、私は電気にうたれた様にハッとしたのでした。実は、私自身、これまでの私の回診も30〜40人程の大勢で回るので、患者さんにとってはつらい点もあるのではないかと、とても気になっていたので、患者さんの立場に立った回診のあるべき姿を模索することにしました。まずは私の回診を患者さん方がどのように感じておられるかを病棟のスタッフに聞き取り調査をしてもらいました。その結果、殆どの患者さんのご意見は、「教授の回診そのものはありがたいし、ぜひやってほしいが、人数が多いので圧迫感があり思うこともしゃべれないし、少人数の回診のほうがありがたい。」というものでした。やはり案じたとおりの結果でしたので、私は、「即刻、大名行列的な教授回診を止めたい」と教室の皆さんに提案し、検討をお願いしたのでした。そこで浮かび上がってきたことは、「全員で回診するからこそ統一した診断や治療方針が決定されてゆくのだし、教授の回診の中からいろいろ学ぶということも出来なくなる」というマイナス面があるということでした。私は、「まずは、患者さんの希望しておられる回診の形式をスタートし、やってゆくなかでマイナス面をなくする解決法を見つけようよ」と熱っぽく提案し、了解してもらえたのでした。思い立ったが吉日とばかり1月27日(たまたま私の62歳の誕生日にあったてしまいましたがーー)の回診日を期して、教授と病棟医長と病副医長だけの少人数での回診を開始させてもらいました。各主治医グループ(1グループ5〜6人で、3グループに分かれている)による回診は毎日行われていますが、教授回診は毎週火曜日の午前中ですので、昨日(2月17日)の回診が新しいスタイルの教授回診の第4回目でした。回診が終わるたびに病棟のスタッフが患者さん方のご意見を伺いながら、さらに患者さん方にとってよりよいあり方を模索してくれ、また先述のマイナス面をも解決できる方法を試行錯誤を繰り返しながらも考えてくれたおかげで、昨日の回診でやっと理想に近い形まで持ってゆけたような気がしています。落ち着いた形はおおむね次のようなものです。朝早くから全員がカンファレンス室に集合し、全ての患者さんに関して、現状を把握し、診断や治療に関する問題点を討議する。その後、教授グループ(計4人)と主治医グループに分かれそれぞれ回診する。各主治医グループには助教授、講師をはじめ外来の専門医が助言役として分散して同行する(各グループそれぞれ8〜10人)。回診終了後、前もって決めておいた時間に再び全員がカンファレンス室に集合し、各グループから問題点、疑問点、新しい視点や提案などを出してもらって全員で検討し、各患者さんに関する最終的な方針を決定する、というものです。
もちろん、今後とも、さらに better なありかたを模索しながら進む予定ですが、現時点で既に患者さん方からの評判はとてもよく、一方、医療スタッフの感想も、「マイナス面はほぼ解消されたばかりでなく、前よりももっといい、」との声が強いようで、ほっとしているところです。