思うこと 第37話 2005年6月26日 記
HTLV国際学会に参加して
―際立った鹿児島勢の活躍―
第12回HTLV国際学会が6月22日から25日の4日間ジャマイカで開催されました。今、私は、学会のあったホテルで、飛行場に出発するまでの合間を利用して、昨日までの4日間の興奮冷めやらぬ中で、コンピューターのキイを打っているところです。 この学会は、世界中のATLとHAMの研究者が2年に一度集まる学会で、第9回の本学会は1999年に私が会長を務め、HAM発見の地の本場・鹿児島で開催し、アイルランドで開催された第10回の会には私は学会のプレジデントの肩書きで出席しましたが、米国で開催された第11回大会には残念ながら病気療養のため欠席したのでした。ですから、4年ぶりに皆さんと顔を合わせたことになり、皆さんから握手と“抱擁”攻で私の完全回復を祝福してもらい、おもわず感動してしまいました。今回の学会で特に目立ったのが鹿児島勢の活躍でした。鹿児島大学からは4人もの先生が招請講演の依頼を受け、
有馬直道教授、梅原藤雄講師、久保田龍二助教授、斉藤峰輝学術研究員(写真順)
の4人のいずれもが、すばらしい招請講演をし、「さすが、HAMとATLの本場の研究はすばらしい」との絶賛を受けました。
会期4日間の内、3日間は学会場で会議が行われましたが、22日の1日だけは、郊外の見晴らしのいい芝の上にテントを張って、300人の参加者がテーマごとに5つのグループに分かれて、ワークショップが行われました。ATLの治療のテントのコーディネーターは鹿児島大学の有馬直道教授が努め、HAMの発症機序のテントのコーディネーターは鹿児島大学の宇宿功市郎助教授(写真最前列右から2人目)と鹿児島市立病院の山野嘉久医師(写真最前列左端)が務め、ここでも鹿児島勢が大活躍でした。 写真最前列右端は梅原藤雄講師で、思わず立ち上がって討論に参加しているところです。能勢君のHAM発症リスクの報告もインパクトがおおきく、若者たちが、英語を駆使して自由に討論に参加する姿をみていると、学問の世界での日本の将来の明るい展望を感じずにはおれませんでした。鹿児島からの参加は10人でそれぞれ活躍しましたが、鹿児島大学をご退官後現在米国のNIHで研究指導で活躍しておられる園田俊郎名誉教授も出席され、会議でも随所で指導・コメントで活躍されました。また、ご子息の園田純一郎先生(鹿児島大学病院薬剤部)もHTLV−Iに対する緑茶の効果を発表し、注目を集めました(右写真)。
留学先から馳せ参じた早川君(左端写真)も本学会で一番いい仕事との評価をもらい、また竹之内君(左2番目写真)も抜群の存在感を示していました。
鹿児島大学のHAM研究陣を統括指導している出雲周二教授は、今学会中も随所で今後の研究の進め方について若者達を指導してくれていました。
鹿児島勢の情報発信の話をしましたが、もちろん、我々も多くのことを学びました。日本勢では、東大、京大、新潟大のグループも頑張っていましたし、世界では、やはり、米国(米国のNIHが今回の学会を主催)、英国、フランス、アイルランドのグループも頑張ってくれていました。HTLVウイルスは、日本には1型しか存在しないが南米を中心に2型が存在することはすでに知られていましたが、今回の学会では、アフリカで見つかった3型と4型の新種のHTLVウイルスが話題になりました。HAMとATLの治療に関してもは、他国の研究からも得るところがあったのも事実ですが、やはり日本は皆から期待されており、我々日本の研究陣が頑張らねばならないと、責任をずしりと感じたことでした。
それでは、ホテルから空港に向かうバスの出発時間も迫ってきましたので、昨日撮影した夕焼けの空と海をおみせしながら、ジャマイカ便りのしめとさせてもらいます。
ジャマイカはモンタゴベイより
納 光弘