思うこと第16話        2004年6月24日 記

原石は語りかける

 私の外国旅行の楽しみは、感動した風景に出会った時のみに描くスケッチと、その土地の石(多くは宝石の原石)のコレクションである。例えば、テルアビブのホテルの19階の窓からの、見渡す限り白いイスラエル石で出来た建物が広がっている風景に感動し、スケッチ
http://www5f.biglobe.ne.jp/~osame/garou/g1/garou-tel-abibu.htmを参照ください)するとともに、道端にころがっていたイスラエル石の破片(左写真の石)をコレクションさせてもらい、いまも大事に飾らせてもらっているなどである。
私みたいに国家公務員の安月給の身分では、外国で宝石を買うことは望むべくもないが、宝石の原石はとても安い値段で買えるので
コレクションの対象になってきた。特にブラジルでは宝石の原石が豊富である。そもそも宝石の出来る機序は、ブラジル旅行中に学んだ知識によると、地球の核から押し上げられた灼熱の花崗岩質マグマにより岩石の結晶構造はその安定性を失い、鉱石の原子が放出され、割れ目や亀裂に押し込められ、そこで他の要素と交わった後、再び冷めると再結晶し、このようにして、広大な地域に宝石を生み出す新たな岩石脈が出来るとのことである(ポンチ図参照)。



宝石の原石の多くは石英の中に成長することが多い。これは、エメラルドの原石であるが、もちろん我々が入手できる安価な原石は宝石に加工出来ない、不透明の結晶である。しかし、これが、ダイヤにもまさるエメラルドの原石と思うと、眺めるだけでも楽しいものである。







 
これは、2色トルマリンの原石であるが、ブラジル旅行中にトルマリンはさまざまな色の種類があることを知った。




これは、ローズ トルマリンの原石であり、





そして、これはブラック トルマリンの原石であり、






これは、アクアマリンの原石である。




トパーズも種類があり、このシトリン・トパーズは宝石でも安価であるが、





インペリアル・トパーズはこの原石は安かったが宝石は高価である。





オパールの原石も見栄えのする石と言える。
左の原石はブラジルで入手した原石で、右の原石はオーストラリアで入手したものである。







金の鉱石も石英を母体とするため、このように水晶の結晶を伴うこともある。右下端の黒い粒子部分に高濃度に金が含まれており、








この金鉱石も黒い筋の部分に高濃度に金がふくまれている。











最近日本画を描くようになってからこの孔雀石(マラカイト)を見ただけで、胸のときめきを感じます。これを砕いて作られる岩絵具が緑青(ろくしょう)なのです。











 さらに胸のときめく岩石がこの藍銅鉱(アズライト)で、天然岩絵具の群青(ぐんじょう)はこの岩を砕いて作られ、極めて高価な岩絵具です。この藍銅鉱は組成は孔雀石と同じで、水分などの条件の差で分かれるらしく、この左の原石の下部は孔雀石となっています。





これも上半分が藍銅鉱で、下半分が孔雀石であるが、藍銅鉱の部分がライオンに似ているのが印象的である。












これは石緑の原石です。









このトルコ石からも岩絵具を作ることが出来ます。














この辰砂は朱の原料の原石です。








これは、石英のなかに生育している朱砂の原石で、岩絵具に加工するのがもったいないような美しい結晶です。









高価という点では、最も高価な絵の具の材料が天然のラピスラズリ(ウルトラマリン)で、時々まちがって天然岩絵具の群青の原料と記載してある本をみることがありますが、ラピスラズリから岩絵具が作られるのはよっぽど特殊な場合のみで、ラピスラズリは群青の原石ではありません。右の写真がこの原石です。 このラピスラズリのブルーは、最も神聖な色として宗教画、たとえばマリア様の着物のブルーなどに使われていますが、黄金よりもはるかに高価な石だけに、極めて貴重な絵の具として扱われてきたようです。この絵の具を使った絵画で最も有名なものの一つが、フェルメールの「青いターバンの女(真珠の耳飾の少女)」です。古くは紀元前3000年のメソポタミアの都市国家ウルの王の墳墓からもラピスラズリが見つかっています。紀元前1330年代に亡くなったツタンカーメンの胸を飾るスカラベも、この石で象られているいることは、あまりにも有名です。


左の写真はネックレスに加工されたものです。








 原石はいろいろな事を語りかけてくれるだけに、私の原石のコレクションの楽しみは今後も続きそうです。