●善意(ぜんい)と悪意(あくい)
事実や意思をあらかじめ知っていたのが「悪意」で、知らなかったのが「善意」です。
ゲームのルールを知っていて引っかけるのが「悪意」、ルールを知らずに相手の手にハマるのが「善意」といったらわかりやすいでしょうか。
善意と悪意には良い悪いの判断が絡みますが、民法ではあらかじめ知っていたか否かが問題にされるだけです。
これは専門化・複雑化している現代社会では、部外者(第三者)が「知らないこともありうる」のを容認し、知らなかった第三者を救済する考えです。
むろん、当事者間で知っていた・知らないを問うことは問題外です。
当事者間には相手に確かめる注意義務があるからです。
わからなければ相手(当事者)に確かめるのが当然です。
そういう注意をせず、相手の言いなりあるいは他人の受け売りで、自分に都合の良い解釈をしたツケ(ミス)まで民法は救済しません。
【補足】知っていたかどうかの判定はむずかしい
民法第94条2項は「虚偽の意思表示の無効は、善意の第三者に対抗できない」、また、第96条3項は「詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗できない」とあります。
対抗できないというのは反論できないことです。
とはいえ、第三者が当事者の片方と通謀(グルになって)した場合は本当に知らなかったといえるでしょうか。心理状態の証明や反論はむずかしいものです。
不動産登記は「対抗力」はありますが、「公信力」を持たないとされています。登記されているからといって真実の所有者とは限らないわけです。
「知りうる状態にあっても」真実とは限らない現実があります。
それを元に、「知らないこと」を主張する第三者がいても拒めないのではないでしょうか。
これから先は民事訴訟法の範囲になるので立ち入りません。
【補記】
1なじめない用語は22
民法用語(1)総則をごらんください。
2
無効と取消し8は別に触れています。
3当事者と第三者の一覧表は32「
人と人がかかわる形態」に掲載しています。
4意思表示については39「
意思表示のパターン」や40「
追認を含めた意思表示」をごらんください。
5対抗要件は42「権利義務の成立と第三者への対抗」や53「登記できる権利と第三者」をごらんください。