おとずかい
第3章 リズムの本文
トップページ 音楽本 コード進行
音図解もくじ
1 拍子の基本 ● 第3章のあらましへ戻る
2 拍とリズムを図解する
3 多数のリズムが生じる要素
4 強拍と弱拍
5 シンコペーション
第3章 リズム
拍子やリズムの説明は百花繚乱(ひゃっかりょうらん)です。また、感覚的な説明も跋扈(ばっこ)しています。
リズムの世界は幽霊や妖怪の巣窟(そうくつ)言うのも大げさでしょうか。
クラッシックとポピュラーの違いはドラムセットの有無にあるそうです。各種の太鼓とシンバルを組み合わせたドラムセットは用語を並べるだけで気が滅入ります。
ここでは用語の整理にとどめますので、興味のある方は由比邦子「ポピュラー・リズムのすべて」(勁草書房)や市川宇一郎「リズムに強くなるための全ノウハウ」(中央アート出版社)などで確かめてください。
1拍子の基本
ここでは西洋音楽にしぼって説明します。日本の音楽には「間(ま)」があって西洋音楽のように時計的な進行をしません。
世界の音楽はさまざまな拍子を持つことだけは忘れないようにしたいものです。
@音の時間経過のパターンを「リズム」といいます。
Aリズムの単位を「拍(はく)」といいます。
拍はビートですが、クラッシックとポピュラーでは意味内容が異なって用いられています。
B1拍の絶対的な長さを「テンポ」といいます。
テンポを拍と同じものとする説明もけっこうあります。
C拍には「強弱」があります。強拍と弱拍の位置と組合せで感じが違います。
D拍の組み合わせが「拍子(ひょうし)」です。
E拍には「休符」が含まれます。
F拍子は「2つの拍」と「3つの拍」を組合わせ、1/2・1/4・1/8、1/16に分割します。【図3-2】
拍子の基本は「2拍子」と「3拍子」です。4拍子は2拍子の複合拍子です。
2拍子は強・弱、3拍子は強・弱・弱の組み合わせです。4拍子は強・弱・中強・弱です。
G拍の強弱の位置を示すのが「アクセント」です。
クラッシック音楽のアクセントは原則的に強・弱の順です。
ポピュラー音楽のアクセントは弱・強の順です。
Hアクセントをずらすことを「シンコペーション」といい、「弱起」、「タイ」、「休符」で生じます。
西洋音楽には完全小節と不完全小節があります。不完全小節で始まる曲を「弱起」と呼びます。【図3-1】
I「拍子記号」は、分母が音符の単位で、分子が拍子を示します。
間違いやすいのは8分音符3つをひとかたまりとみて、6/8が2拍子、12/8が4拍子です。でも、3/8は3拍子なんですね。
また、2/2は¢(セント)、4/4はCで表記されます。
J拍子とビートは拍子記号が一致しません。
ビートは4ビート、8ビート、16ビートいずれも4/4で表記されます。
K「連符」はひとつ上の音符を何等分するかの記号。音符の下に数字でくくっています。
はた(音符の羽の部分)をまとめた表示は「連鈎(れんこう)」といい、連符とちがいます。
文頭に戻る
2拍子とリズムを図解する
言葉の整理だけでは互いの結びつきがはっきりしませんので、時の流れで音の進行を展開してみます。メロディや和音まで含めています。
@テンポ 絶対的な音の刻み パルス波 (例)電子時計 【図3-3-1】
A拍[はく] 相対的・感覚的な一定間隔音 (例)メトロノーム【図3-3-2】
B拍節 強弱の区切りが登場(西洋の場合) 【図3-3-3】
C拍子[ひょうし] 音の長さも登場 【図3-3-4】
Dリズム 拍子の繰り返し(図形内は異なった音符の組み合わせ) 【図3-4】
Eメロディーと和音(音は進行する) 【図3-5】
文頭に戻る
3多数のリズムが生じる要素
西洋音楽の音の要素は、@音の高さ、A音の長さ、B音の強さ、C音の質(音色)、D音との距離(空間)にあるそうです。そして音符は、音の高さ、長さ、方向を示すものです。
でも、西洋音楽以外にもリズムのパターンがあります。世界を見渡せば7音の音階は異質で日本の四七抜き音階を始めとして5音の音階(ペンタ・スケール)の方が一般的です。
音階(スケール)の違いを取り上げたらきりがないので、ここでは拍のとらえ方がどんな違いを生じるかをまとめます。
リズムの単位が拍(ビート)で、その絶対的な速さがテンポです。拍とビートは同じことですが音楽の世界ではクラッシクとポピュラーでは異なった意味合いを持って語られます。そこで混乱を避けてビートを使わず、拍や拍子で話を進めます。
(1)アクセント
拍をずらして調子を変化させる方法には、強弱と高低の二つのパターンがあります。
日本語と欧米語の違いは口の開き方と言われますが、音楽にもこの違いがあります。
欧米語は強弱のアクセントで言葉が意味を持ちますが、日本語は音の高低で異なります。
先日から童謡を調べていますが作曲家の山田耕作はこの違いに固執したようです。
彼が作曲した「赤とんぼ」(三木露風作詞)はアクセントの起き方が独特といいます。
西洋音楽のアクセントは強弱で説明されますが、アクセントには高低もあります。
興味のある方は、小泉文夫さんの著作や別宮貞徳さんの『日本語のリズム』、上田信道さんの『謎解き 名作童謡の誕生』(平凡社新書)をお読みください。
(2)拍の移動方向
拍と拍を結びつける方法には4つあります。こういう説明はめったにありませんので参考にしてください。原礼彦・加藤三美子共著『やさしい楽譜の読み方』(成美堂出版)から得ました。この4つを組み合わせれば多数のリズムが生まれるでしょう。
@拍を垂直に移動 たん たん たん たん 【図3-6-1】
ロックやラテン音楽にみられるもので歯切れのよいリズムを生む。
A拍を水平に移動 たー たー たー たー 【図3-6-2】
速いロックンロールやボサノバにみられる音をひきずるリズム。
B半円のスキップ移動 たーん たーん たーん たーん 【図3-6-3】
バラードやジャズにみられるもので半円を描いて飛躍して進行。
C短いスキップ移動 たっ たっ たっ たっ 【図3-6-4】
タンゴにみられるもので短いスキップで進行
文頭に戻る
4強拍と弱拍
音の強弱の位置を示すのがアクセントです。西洋音楽は強弱で拍に変化を付けます。音の高低や大小は問われません。
(1)どこにアクセントを置くか
@2拍子 わっ しょい わっ しょい 【図3-7-1】
A3拍子 ずん ちゃ ちゃ ずん ちゃ ちゃ 【図3-7-2】
B4拍子 たんとんたんとん たんとんたんとん 【図3-7-3】
(2)アクセントの順番
@強拍先行【図3-8-1】
A弱拍先行【図3-8-2】
5シンコペーション
シンコペーションはアクセントをずらして曲の調子を変えることです。
強拍から進むことを前提に説明します。ポピュラーは弱拍から始まります。
@弱起(アウフ・タクト) 【図3-9】
弱拍から始めること。
不完全小節は曲の終りで調整されるので必ず同じ行で調整されません。
Aタイ 【図3-10】
同じ音を続けて伸ばし拍の順序を変えること。
タイは同じ高さの音を結ぶ記号で、同じ小節内や小節をまたいで結ばれます。
似た記号のスラーは違う高さの音を結びつけるものです。
B休符 【図3-11】
音符の位置を変えること。
拍を作る音符がなくなって強弱の位置がずれる。
● 第3章のあらましへ戻る
文頭に戻る