17 アリス
フォークのことあれこれ
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目次
●似通うがゆえに
●女言葉の詩
●遠くで汽笛を聞きながら
アリスはフォークから出発したものの、彼らなりの独自な音楽を構築した3人のグループである。実のところ谷村新司の歌い方を僕は好まないのだが、彼の詩に共感するときもある。谷村が後期のエルビス=プレスリーに似た歌い方をするのがいただけないのだ。詩にしても次第に押し付けがましく感ずる。しかし、彼の詩のもとになる発想法は関西フォークと通ずるものがある。それが、フォークでないアリスを取り上げる理由だ。また、アリスのヒット曲の作曲は堀内孝雄が行っている。僕は堀内が作曲して歌う曲が好きだ。谷村が歌うとどうしても暗くてなじめないのである。
●似通うがゆえに
アリスの唄に共感したり反発するのは、彼らが描く世界があまりにも自分と似かよっているというところにある。たとえば、次のフレーズなど、僕と友人がたがいを傷つけあいながらかばいあう心理に似ている。
さめた顔して深刻ぶって
Take it easy ,Take it easy will you! ♪
(『センチメンタルブルース』)
そればかりでなく、谷村の詩に登場する男はどこか弱々しさがあり、また、妙に突っ張った側面があってどうも自分が皮肉くられているような被害者意識を味わうのだ。
約束をしていても所詮男と女
好きというそれだけで暮せない ♪
(『もう二度と・・・』)
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●女言葉の詩
また、谷村は女言葉を使い、それがやけに、もてない男を挑発するがゆえにイマイマシサをときどき感じてしまう。この唄は山口百恵が歌ってヒットさせたが、谷村が歌ったほうが味があった。
あの夏の日がなかったら
たのしい日々がつづいたのに ♪
(『終止符』)
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●遠くで汽笛を聞きながら
こんな僕が特に気に入っているのは『遠くで汽笛を聞きながら』(谷村新司作詞・堀内孝雄作曲)である。内容は暗いものの、堀内の歌い方があっさりしているからなのかもしれない。でも、この詩の内容が僕は好きだ。くよくよして生きるのは厭である。みじめったらしいし、他人を傷つけるもとだ。いつも失敗を繰り返し、そのたびにめそめそし、八つ当たりをしてしまう僕はこのごろこんなことに気づいた。もっとも、今ごろになってこんなことを口にしても笑われるはずだし、開き直りととられかねないのだが・・・。もしアリスの唄を1つ選べと言われたら、僕はためらうことなくこの唄を選ぶ。教訓めいてしまうせいかヒットもしなかった唄だが・・・。
俺を見捨てた女(ひと)を 恨んで生きるより
幼い心に秘めた 虚しい涙の捨て場所を
さがしてみたい 遠くで汽笛を聞きながら
何もいいことがなかったこの街で
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