4 サイモン&ガーファンクル 
フォークのことあれこれ

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目次
 ●10年付き合う
 ●卒業は成人映画
 ●愛唱詩
 ●アイムアロック
 ●オールドフレンズ
 ●4月になれば彼女は




(1)10年付き合う

 僕らはかってビートルズ世代と呼ばれたものである。でも、僕は今もってこういう呼ばれ方を拒む。確かにビートルズは偉大であった。わずかな間に世界中の若者を熱狂させ、親たちに恐怖を植え付けたのだから。音楽そのものよりもその行動や容姿によって世の中を騒がせたのだから。そしてまた、僕ら世代の者たちに彼らの後継者であると言わしめたのだから・・・。
                                         

 僕はビートルズ全盛期にまったくかかわらなかった。ふるさとでは彼らを口にすることはタブーだった。髪を長くたらし、エレキギターを奏でる者は不良扱いされたものである。ビートルズが日本に来たときは、彼らの音楽よりもファンの騒ぎのほうが大々的に報道された。

 今からみれば、
ビートルズにも優れた作品があるし、気に入っている曲もあるもののそれだけのことにすぎない。僕がビートルズ世代と呼ばれることに抵抗を感ずるのは、彼らと直接かかわることがなかったことに加えて、音楽のとらえ方にズレを感ずるからである。
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卒業は成人映画

 当時の僕のお気に入りはサイモン&ガーファンクル(S&G)のデュオだった。彼らはボブ=デュランのエピゴーネンにすぎないとされたものだが、ビートルズとは別の趣があった。ビートルズが音楽よりもファッションとして日本に入ってきたのに対し、S&Gは
映画を媒介にした音楽として入ってきた。

 僕がS&Gを知ったのは中学生のときだった。隣の家の同級生に紹介されたレコードで『冬の散歩道』が気に入ったものである。また、彼らを有名にさせることになった映画『卒業』は何度見ても飽きない。演技派のダスティン=ホフマンとあどけさが残るキャサリン=ロスの共演だった。この映画は人妻とのセックス場面があるので僕のふるさとでは成人映画に指定されていた。ともあれ、この映画に用いられた『サウンドオブサイレンス』や『ミセスロビンソン』は受験勉強をしていたころに毎晩耳にしていた。

 彼らはベトナム戦争反対を唱えるマクガバン大統領候補の選挙応援も行った。ベトナム反戦は日本でも若者が唱えていた時代である。そして、S&Gは
僕が大学を卒業する年にディオを解散したのだった。
 英語の苦手な僕がどうしてS&Gに10年近くつきあったかを説明できない。単なる流行の延長だったことも事実である。また、気に入るとトコトンのめってしまう僕の気質にかかわるかもしれない。いずれにせよ、彼らと多くかかわったゆえに、異国のデュオとかたづけたくないのである。
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(2)愛唱詩

 S&Gには多くのヒット曲がある。『サウンドオブサイレンス』、『ミセスロビンソン』、『コンドルは飛んでゆく』、『ボクサー』、『明日に架ける橋』などは今でもよく耳にする。わけても彼らの最後のアルバム『明日に架ける橋』Brige Over Troubled Waterは最高の仕上がりである。音楽的にみてもディオの完成度の高まりを感ずるし、アート=ガーファンクルの澄み切った声と歌唱力に圧倒される。でも、僕はそれを好まない。
あまりにも完成度が高すぎて近寄りがたさを感じるのである。初期のアコースティックサウンドの魅力が薄れ、厚ぼったくてケバケバシイ音楽になっているのだ。
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●アイムアロック

 僕はポール=サイモンの詩にひかれる。彼の詩には強固なものの見方や感じ方があるのだ。詩の面に限って僕が好きなものは、『アイムアロック』I Am A Rock、『オールドフレンズ』Old Friends、『4月になれば彼女は』April Come She Willなどだ。

 この中で僕が特に気に入っているのは『アイムアロック』である。そこには強固なニヒリズムがただよう。デビューアルバム『水曜日の朝、午前3時』が受け入れられず、イギリスに渡ったポール=サイモンの作品だそうだ。
気の滅入るときによく次のフレーズを口ずさんだ。直訳すれば、「岩は苦しみなんて感じない、島も決して叫びはしない」というところだろう。口ずさむたびに無機物である岩や島になりきれない自分を確かめて元の暮らしに戻った。
  
And a rock feel no pain
  And an island never cried

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オールドフレンズ

 でも、サイモンの詩をニヒリズムとするのは誤りである。『オールドフレンズ』には、公園にたむろする老人たちを描写しつつ、そこに
自分の未来を結びつける幅広い視野とヒューマニズムがあふれている。この曲はガーファンクルの澄み切った歌声でより印象づけられる。韻をふんでいる曲だからこの訳はあえてつけない。
  
Memory brushes the same years
  Silently sharing the same fear


 学生時代には『早く家に帰りたい』Homeward Boundもよく口ずさんだ。ふるさとの我が家に帰りたいと唄いながら、親の反対を押し切って上京した僕はこんなことで負けるものかと気を奮い起こしたこともある。【★今さらフレーズを掲載するのも恥ずかしいので削除します。】 
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4月になれば彼女は

 S&Gはガーファンクルの歌唱力によって評価されるが、ギターテクニックや作詞・作曲で評価されがちなサイモンの弾き語りの『4月になれば彼女は』は
韻も整い美しいメロディーで僕は気に入っている。月の移り変わりに合わせて女心の変化を唄っているが、移り気な僕はときどき口ずさむことがある。かつては鮮やかだった愛も古びてしまった、という内容である。
  
September I remember
  A love once new has glown old
 
 

(注)S&Gの歌詞は、CBSソニーSOPH71-72の解説【及び『サイモン&ガーファンクル詩集』(山本安見訳・シンコーミュージック1988年)※追加】を参考にしました。

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