代理コードの展開
誰にもわかるコード進行 7



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おとずかい  フォークのこと

誰にもわかるコード進行

(1)スリーコードの使用が減った
(2)代理コードは長調と短調、三和音と四和音で異なる
(3)代理コードの挿入
(4)図解の補足

補論:短調の代理コードを確かめる

 フォークやグループサウンズは代理コードを抜きにして語れません。
 代理コードはダイアトニック・コードの中で主要三和音を除く「副和音」です。
 そこで代理コードがどのように組み込まれて行くかのモデルを示します。
(1)スリーコードの使用が減った
 フォークやGSのコード進行はスリーコードで済むと思っていましたがそれほど多くはありません。
 400曲掲載している歌集でも三つのコードで弾けるのは29曲しかありません。
 そして、トニック(T)・サブドミナント(W)・ドミナント(X)を充たすのは24曲でした。
 せっかくですから曲名と歌った人やグループをあげておきます。詳細は別紙6のとおり。
  友よ(岡林信康)、ANAK(杉田二郎)、八十八夜(NSP)、雨は似合わない(同)、さようなら(同)、
  イメージの詩(吉田拓郎)、おろかなるひとりごと(同)、四季の歌(芹洋子)、
  面影橋(六文銭)、走れコウタロー(ウイークエンド)、バンバン(スパイダース)、
  忘れ得ぬ君(テンプターズ)、長い髪の少女(ゴールデン・カップス)、あかずの踏切(井上陽水)、
  夜が明けたら(浅川マキ)、はいからはくち(はっぴいえんど)、赤とんぼの唄(あのねのね)、
  赤色エレジー(あがた森魚)、私は泣いています(リリー)、青葉城恋唄(さとう宗幸)、
  これがボクらの道なのか(五つの赤い風船)、まるで洪水のように(西岡たかし)、
  雨宿り(佐藤公彦=ケメ)、ありがとう(小坂忠)、乱・乱・乱(泉谷しげる)、
  アイスクリーム(高田渡)、系図(同)、生活の柄(同)、銭がなけりゃ(同)、
 その他の曲は4つ以上のコードで進行しています。中には10以上のコードを使う曲もあります。
 この理由は、「代理コード」・「テンション(修飾)コード」それに「借用コード」が増えるからです。
(2)代理コードは長調と短調、三和音と四和音で異なる
 図表のとおり、長調と短調ではトニック、サブドミナント、ドミナントの代理和音の数が異なります。
 長調の代理コードEmはトニックとドミナントの機能をあわせ持っています。
 短調は三つの短音階から成り立っていますのでサブドミナントの代理コードが増えるだけでなく、
 Fはトニックにもサブドミナントにもなります。
 和音にはひとつだけでなく二つの機能を持つものがあることを忘れないでください。
 そして、四和音は積み重ねる音が増えて展開も増えるので代理コードが多くなります。
 どうしてそうなるのかは補論「短調の代理コードを確かめる」をごらんください・
  ●長調の代理和音
        
  ●短調の代理和音
             
(3)代理コードの挿入
 これからコードの最も基本的なトニック(T)・サブドミナント(S)・ドミナント(D)進行を基に説明をします。
 主要三和音がどんな代理コードに変わっていくかを確かめてください。
 なお、4小節の展開としますので、出発はC・C・F・G7でT・T・S・D型です。
 @FをDmにして、G7に対してツー・ファイブ進行させます。これで4度上行の強進行ができます。
 A次に左から2番目のCをAmに代えますAmの方がEmよりトニック性が強いからです。
 B最後に左側のCをEmに代えます。このパターンはつなぎに使われるようです。
  長調のEmはトニックとドミナントの機能を持ちます。
      
 このT・T・S・Dの進行は「循環コード」を作ります。
 フォークやGSの循環コード曲については別記(別紙9)しています。
 なお、循環コードは4つのコードに限られません。
(4)図解の補足
 上記の図解は展開のモデルです。音楽的な良し悪しは無視しています。
 実際に使われる方法は次のとおりです。
 出発のC・C・F・Gパターンは、唱歌・童謡・フォーク・グループサウンズの始まりには使われていません。
 ただし、中継ぎには使われています。サブドミナントからドミナントへの進行が嫌われたのでしょうか。
 C・F・C・GやC・F・C・G・Cといった一度トニックへ戻る進行が利用されています。
(5)三つや四つの和音で弾ける歌にも多数の進行がある
 ハ長調やイ短調以外の調(キー)が出てきても順番を付けるとそのコードの役割(機能)がわかります。
 三つの和音で弾ける29曲のうちトニック(T)・サブドミナント(W)・ドミナント(X)は24曲でした(別紙6)。
 TSD(T・W・X)パターンが19曲、TDS(T・X・W)パターンが4曲あります。
 他の曲は長調がTTT(T・Y・V)が1曲、残り4曲が短調でした。
 短調は3パターンで、TSS(T・U・W)とTST(T・Z・Y)が各1曲、TTS(T・Y・Z)が2曲です。
 ちなみに、四つの和音で弾ける曲は32曲でした。三つの曲と同様に400曲のうち1割もありません(別紙7)。
 ハ長調の代理和音はAmに集中し、イ短調はC・F・G7のほかに借用和音も含んでいます。
 長調の主要三和音が短調でもっとも多く使われる代理和音というのも不思議です。
 たった三つのコードでも組み合わせれば多数の進行パターンになることを忘れないでください。
 せっかくですから、四つで弾ける曲名をあげておきます。
  くそくらえ節、山谷ブルース、もずが枯れ木に、チューリップのアップリケ(岡林信康)、
  さらば青春、少しは私に愛をください(小椋佳)、竹田の子守唄(赤い鳥)、小さな日記(フォーセインツ)、
  ペニーレインでバーボン、ともだち、人間なんて、リンゴ、旅の宿(吉田拓郎)、ひとり唄(山崎ハコ)、
  ルージュの伝言(荒井由実)、想い出の赤いヤッケ(高石ともや)、ハイサイおじさん(喜納昌吉)、
  愛は君、東へ西へ、夕立、ゼンマイじかけのカブト虫、神無月にかこまれて(井上陽水)、教訓T(加川良)、
  僕の胸でおやすみ、うちのお父さん(かぐや姫)、冬の稲妻(アリス)、知床旅情(加藤登紀子)、無縁坂(グレープ)、
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  補論:短調の代理コードを確かめ
 和音の進行を理解するときつまずくのが短調の代理和音です。
 代理コードが数を増し、サブドミナントにFやG7が出てくるからです。
 戸惑わせる理由は短音階に自然短音階・和声短音階・旋律短音階の三つがあるからです。
 また長音階の関係を平行調を持ち出して短音階の説明に代え、同主調を持ち出して混乱します。
 CからAmへ6度移動する平行調の説明は自然短音階しか理解できません。
 CからCmへの3度移動の同主調の説明も理論的ですがなじみにくいものです。
 そんなモヤモヤしたところに秋谷えりこさんの『ポピュラー音楽に役立つ知識』(シンコーミュージック)
 が短調のダイアトニックコードの詳細な説明をしていました。
 四和音で説明されているのでやや戸惑いましたが三和音を加えて代理コードを整理します。
 ★平行調と同主調については「おとずかい」に図解しています。
1ダイアトニック・コードにある和音
 これからダイアトニック・コード上にある和音(コード)がはたす役割=機能を説明します。
 音の規則的な並びを音階(ダイアトニック・スケール)といいます。ドレミファソラシドの並びです。
 ダイアトニック・コードはある音階の上に3度ずつ3音または4音を重ねた和音の並びです。
 ダイアトニック・コードには主要三和音とその他の和音(副和音)があります。
 主要三和音は、Tのトニック(主音)、Wのサブドミナント(下属音)、Xのドミナント(属音)です。
 代理コードは、同じ音階の中で主要三和音と同じ役割を果たす和音です。
 トニックはT、サブドミナントはS、ドミナントはDで表記し、代理和音はダッシュ(’)をつけます。
 3度ずつ積み重ねる和音の構造から長音階の和音にも長と短の区別があります。Dm、Em、Amは短です。
 △はメジャー(長)、mはマイナー(短)、(♭5)は減音程、(♯5)は増音程を表します。
2ハ長調(Cメジャー)のダイアトニック・コード
T U V W X Y Z
三和音 Dm Em Am Bm(♭5)
四和音 C△7 Dm7 Em7 F△7 G7 Am7 Bm7(♭5)
機 能 S’ T’ T’ D’
 ポイント;
 長調の代理コードは、トニックがEmとAmのふたつ、その他はひとつずつです。
3イ短調(Aマイナー)のダイアトニック・コード
 短音階には三つの短音階があります。図解はホームページの「おとずかい」で確かめてください。
 長音階とのちがいは3度、6度、7度の長・短部分です。
 @自然短音階(ナチュラル・マイナー)は長音階の並びを6度移動させたものです。
 A和声短音階(ハーモニック・マイナー)は7度音を半音上げた音階です。
 B旋律短音階(メロディック・マイナー)は上りの6度と7度を半音上げた音階です。
 短音階の上に生じるダイアトニック・コードは上記のちがいを反映した並びになります。
 そのために、長調の代理和音と順番が異なったり、構造がちがう和音も出てきます。
 そこで、三つの短音階のダイアトニック・コードを再確認してから短調の代理コードを整理します。
 @自然短音階(ナチュラル・マイナー)
T U V W X Y Z
三和音 Am Bm(♭5) Dm Em
四和音 Am7 Bm7(♭5) C△7 Dm7 Em7 F△7 G7
機 能 S’ T’ S’(注) S’
 ポイント:トニックがVに限られ、サブドミナントがU、Y、Zの三つに増加し、ドミナントの代理がない。
 (注)Yはトニックにもサブドミナントにも使われます。平行調でトニックにする解説書も多い。
 A和声短音階(ハーモニック・マイナー)
T U V W X Y Z
三和音 Am Bm(♭5) C(♯5) Dm G♯m(♭5)
四和音 Am△7 Bm7(♭5) C△7(♯5) Dm7 E7 F△7 ♯dim7
機 能 S’ S’ D’
 *は使われない
 ポイント:トニックの代理はなく、サブドミナントが三つ、ドミナントがひとつになる。
 B旋律短音階(メロディック・マイナー)  上行型
T U V W X Y Z
三和音 Am Bm C(♯5) F♯m(♭5) G♯m(♭5)
四和音 Am△7 Bm7 C△7(♯5) D7 E7 F♯m7(♭5) G♯m7(♭5)
機 能 S’ T’ D’
 *は使われない
 ポイント:Vがトニックに使われないことを除くと長音階のダイアトニック・コードに似ている。
 旋律短音階の上行は3度が半音のほかは長音階と同じ音階です。
4 短音階の代理コード
 副和音の機能がどうして決められるかはわかりませんが、
 秋谷さんは4音の構造から「ルートの省略」、「同じ構成音」、「転回形と同じ構成音」としています。
 下の表の結論は、♭Y(△7)がトニックになることを除いて、コード解説書に掲載されるものと同じです。
トニック(T) サブドミナント(S) ドミナント(D)
主要和音 Tm(6、7、△7) W(6、7、△7) X7
3音表記 Am Dm、D Em、E
4音表記 Am6、Am7、Am△7 Dm6、Dm7、D7 Em7、E7
代理和音 ♭V(6、△7)、Ym7、
♭Y(△7)
Um7(♭5)、♭Y(6、△7)、
♭Z7
Zdim7、Zm7
三和音 、F♯m、 Bm(♭5)F、G、Bm G♯、G♯m
四和音 C、F♯m7(♭5)、F△7 Bm7(♭5)、F△7、G7 G♯dim7、G♯m7(♭5)
5ハ短調(Cマイナー)のダイアトニック・コード
 参考に秋谷さんの例題にあるハ長調の同主調であるハ短調のダイアトニック・コードを掲載します。
 @自然短音階(ナチュラル・マイナー)
T U V W X Y Z
三和音 Cm Dm(♭5) E♭ Fm Gm A♭ B♭
四和音 Cm7 Dm7(♭5) E♭△7 Fm7 Gm7 A♭△7 B♭7
 A和声短音階(ハーモニック・マイナー)
T U V W X Y Z
三和音 Cm Dm(♭5) E♭(♯5) Fm A♭
四和音 Cm△7 Dm7(♭5) E♭△7(♯5) Fm7 G7 A♭△7
 B旋律短音階(メロディック・マイナー)  上行型
T U V W X Y Z
三和音 Cm Dm E♭(♯5) Am(♭5) Bm(♭5)
四和音 Cm△7 Dm7 E♭△7(♯5) F7 G7 Am7(♭5) Bm7(♭5)
旋律短音階の上行は3度が半音のほかは長音階と同じ音階です。

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