香港に着いた水曜日の夜、香港島の北角から中環へ行くのに2階建て路面電車・トラムに乗った。香港到着直後だったので、いち早く懐かしのトラムに乗りたかったこともあったのだが、乗ってみて後悔した。平日の夜の主要道路は車と人で溢れ、トラムの進路を容赦なくふさいでいたのだ。急いでいたわけではなかったが、結局、中環まで46分もかかってしまった。やはりトラムは、「ちょっとそこまで」的な乗車に向いていることを改めて悟った。
香港のMTR・地下鉄は、速いが深い(&運賃が高い)。地上とホームとの間は高速エスカレーターが結んでいるが、それでもホームとの往復の時間はバカにならない。香港島の主な繁華街を東西に快速移動するのなら、MTR港島線やトラムの線路とほぼ並行に走ってくれる、城巴(シティバス)10系統が結構使える。2日目の朝は、中環の陸羽茶室で飲茶を堪能しようか、羅富記粥麺専家でお粥をすすろうかと決めていたので、とりあえず10番の城巴に乗る。
基本的にトラムの線路が敷かれた道を経由するが、西行(北角碼頭から堅尼地城方面)は特に、電車道から大きく外れる区間がある。銅鑼灣の、ちょうどトラムがループを描いて折り返しをする場所のあたりで、バスは左の禮頓道へと入って山寄りのルートをとる。ハッピーバレーをぐるっとまわるトラムの単線に出会い、競馬場の北をかすめて皇后大道(東)へ入る。律敦治病院の大きな建物を右手に見ながら灣仔を通り過ぎる。同じ灣仔でも、トラムが走る荘士敦道とはまったく別の趣を見せてくれる。金鐘で再びトラムの走る金鐘道へ合流。高層ビル群の谷間で、先を行くトラムの後を追いかけたりしながら、しばらくは電車道を走るが、中環街市(市場)のところで左折し、1本山側の皇后大道(中)へ。片や未来的な中環中心ビルがそびえていると思いきや、そのすぐ並びや対面には古い商店や市場の露店が同居する、面白い道である。前に記した2軒の店へ行くのにも便利な場所で下車できる。朝だったせいもあるが、北角・MTR炮台山駅前から27分で着いた。
バスはそのまま、電車道を避けるように皇后大道(西)〜卑路乍街〜域多利道を経由して堅尼地城へ到達する。
なお、逆方向の東行は対照的に、堅尼地城から金鐘までの区間では、トラムとほぼ同じ道を経由する(灣仔付近は、西行と同じく皇后大道(東)・禮頓道を経由)。
大好きなトラムに不義理をしてしまうのは心苦しいが、限られた香港滞在時間を有効に過ごすにはとっても便利な城巴10である。
【写真:先行するトラムの後姿を追いかけるバスもまた楽し。中環・立法會大樓前】
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