日銀短観米国ラッセル2000東証2部指数
生き残ることが第一不況こそチャンス危機の本質
待ち伏せ長期投資家の目線キーエンスの景況感
アメイズの業績修正木村工機のニュースリリース幼児活動研究会も休業
イオンの営業利益半減シナリオ売買の無くなる銘柄投資に踏み切るタイミング
EV/EBIT倍率

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ショートコラム(2020年4月)

■EV/EBIT倍率(2020年4月29日)

ご質問の三つ目にお答えします。これが最後です。

不況とは関係ないのですが、以前ご教授頂いた内容の中に「EV/EBIT倍率」について中々理解がすすみません。良書などあればご紹介いただけないでしょうか?

私が知る限り、EV/EBIT倍率(営業利益倍率)を分かりやすく解説した書籍はありません。一部のバリュー投資家が好む、マニアックな指標だからでしょうか。

EV/EBITDA倍率であれば森生明氏の著書『MBAバリュエーション』を読むのが一番ですが、EV/EBIT倍率とEV/EBITDA倍率は似ているようで異なる指標です(個人的には全く違うと認識しています)。それでもEV/EBIT倍率を理解する助けにはなるでしょう。

他にも色々と探してみると、計算式は違うものの、山口揚平さんのベストセラー『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』に書かれている「5分で弾ける株の価値」がEV/EBIT倍率をベースにしていると思われました。

●株主価値=事業価値(営業利益の10倍)+財産価値−負債

EV/EBIT倍率の式は次のとおりで、ブルーチップでは10倍がフェアバリューとされています。

●EV/EBIT倍率=(時価総額+現金同等物−有利子負債)÷営業利益

つまり両者は、ほぼ同じ意味です。ちなみに2冊とも良書であり、ファンダメンタル分析を勉強したい個人投資家におすすめします。


■投資に踏み切るタイミング(2020年4月27日)

前回の続きです。ご質問の二つ目にお答えします。

投資に踏み切るタイミングとしては、ファンダメンタルが悪化する中で行った方がいいのでしょうか?それとも、同業他社がいなくなった後、残った企業の業績改善が確認できてからがいいのでしょうか?

この2つの選択肢から選ぶのであれば「同業他社がいなくなった後、残った企業の業績改善が確認できてから」です。

弱気相場で散々な目にあい、経済的にも精神的にも大きなダメージを受けた投資家が立ち直るまで(あるいは投資家層が入れ替わるまで)、多少は時間を要することから、このタイミングで買っても十分に間に合うのです。

むしろファンダメンタルが悪化する中で買いを入れた場合、更なる事態の深刻化に嫌気が差して、底値で投げさせられる恐れがあります。人間の感情は個人差が少なく、大半の市場参加者が恐怖に耐えられなくなる時点で大底です。

もっとも、ピンポイントでどの時点が大底だったかは過ぎ去ってみないと分かりません。予め数枚買える予算を組んでおき「そろそろかな」と思った時点で少しずつ買っていくのが現実的な対応でしょうか。


■売買の無くなる銘柄(2020年4月25日)

ご質問をいくつかいただきました。こちらで順番に答えていきたいと思います。まずは一つ目です。

バブル崩壊後、短期投資家も寄り付かない程に売買が無くなると聞いた事があるのですが、本当でしょうか?

短期売買に関しては、バブルが崩壊しても、それなりに売買があります。ただし参加者は減るので、一部の銘柄に売買の集中する傾向がいっそう強まります。

売買が極端に減るのは、長期投資を行っている個人投資家に好まれている東証2部、JASDAQ、地方単独上場などの地味株です。

トレーダーは見向きもしませんし、機関投資家も手を出しません。唯一の資金供給者である長期の個人も、塩漬けの持株を抱えたままのバブル崩壊後は投資余力が皆無に等しく、したがって買い手が不在となります。出来高の極端に細る中で、週に何度か値を付けるだけの銘柄も珍しくありません。

以前、私自身もこの手の銘柄を数枚持っており、ようやく損切りを決意したものの、売り終えるまで1週間近く掛かった苦い思い出があります。毎日「誰か、そこそこの株価で、買ってくれないかな」と祈るように板を見ていました。


■イオンの営業利益半減シナリオ(2020年4月22日)

東洋経済の記事、イオン、よくて「営業利益半減」の衝撃シナリオを読みました。投資家として、次の文面が参考になりました。

なお、予想の前提となる新型コロナの収束時期について、イオンの吉田昭夫社長は10日の決算会見の席上で、「感染拡大のピークアウトは上期中(3〜8月)と想定しているが、消費マインドへの影響は2021年2月期末まで続く」と述べた。

S&Pは「新型肺炎の感染拡大により、業績に対する強い下押し圧力が今後1〜2年続く可能性が高い」と指摘する。

新型コロナウイルスの影響を受ける業種に関しては、収益減に伴う減損損失の計上で最終赤字に転落し、無配となる企業も出てくると個人的に想定しています。最悪のケースでは、上場企業の経営破たんもあり得るのではないでしょうか。

よって銘柄分析を行う際は、まず「この苦境を乗り切れるかどうか」に注目すべきと思います。ポイントはキャッシュフローとバランスシートです。

●直近5年間の好景気において、設備投資を営業CFの範囲内に抑え、十分なフリー・キャッシュフローを確保しつつ、財務の改善に取り組んでこれたか

●運転資本の増大による資金繰りの不安を抱えていないか。また固定資産の大幅な減損処理に耐えられる、堅実なバランスシートを構築できているか

もちろん、ここをさほど大きなダメージなしで乗り切れた会社は、その後、同業他社が身動きの取れない中で、いち早くアクセルを踏み込むことができます。出店コストが下がり、優秀な人材を採用できる状況にて、収益を大きく伸ばせるはずです。

今年後半から来年にかけて、そういった企業群を日経平均に連れ安した局面で仕込めれば、投資家も大きな果実を手に入れられるに違いありません。いよいよ、ファンダメンタル分析派の出番です。


■幼児活動研究会も休業(2020年4月20日)

本日、幼児活動研究会(2152)がニュースリリースを発表しました。

当社では、2月27日に政府から出された「新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため全国の小中学校、高校、特別支援学校を3月2日から春休みまで臨時休校とする要請」に伴い、当社のお客様(幼稚園・保育園・こども園)と協議し、一部臨時休業の措置を講じてまいりました。

その後の感染拡大および「緊急事態宣言」発令に伴い、休業地区を拡大し、現在のところ55営業所中44営業所は完全休業を実施いたしております。11営業所では一部営業を行なっております。

同社は今まで、これといった発表をしておらず「どうなっているのか?」と思われていた方もいらっしゃるでしょう。足元の状況にて、幼児相手に体育指導を続け、新型コロナウイルスの感染に関わってしまえば一大事だからです。

本日の開示も「遅きに失した」感が否めません。いきなり休業中であることを知らされ、面食らった投資家も少なくないはずです。情報開示の姿勢にやや問題があるように見受けれました。


■木村工機のニュースリリース(2020年4月18日)

3月13日に新規上場した木村工機(6231)が4月15日付でニュースリリースを発表しました。

最近の新型コロナウイルスの感染拡大により、当社の事業活動におきましても前年度と比較し急速に停滞が見られ不透明感が増してきました。

特に「緊急事態宣言」発令後は受注が鈍り、かつ一部の工事が停止されるなど更なる停滞が懸念されます。

同社は業務用空調機器をオーダーメイドで生産しており、省エネ性と快適性を両立した空調システムが強みです。最高級ホテルで高い採用率を誇り、ザ・リッツカールトン東京にも導入されています。

業種柄、景気にやや遅行して収益の向上するタイプの会社で、4月10日の業績上方修正発表により、株価が急騰しました。

経営陣としては「2021年3月期以降、そんなに良くないかもしれない。投資家には冷静になってほしい」という意味を兼ねて発表したのではないでしょうか。

現状を正直に伝えようとしており、好感の持てるニュースリリースでした。こういった対応にも、社長の人柄が出ます。


■アメイズの業績修正(2020年4月16日)

昨日、九州を中心に「ホテルAZ」をドミナント展開しているアメイズ(6076)が「業績予想及び配当予想に関するお知らせ」を発表しました。業績予想、配当とも未定としています。

当社の令和2年11月期第1四半期における売上高につきましては、対前年同期比0.2%増ではありましたが、2月26日に日本政府が発表したイベント等の自粛要請以降、宿泊利用需要が大きく減少し、3月度においては、3月31日時点で対前年同月比26.4%減、計画値を28.9%下回る状況となっております。

さらに、4月8日に発出された非常事態宣言により、7都府県において、より一層の外出自粛要請が5月6日まで延長されました。このように今後も感染拡大の影響や行政による規制強化の実施が想定されるなど、業績予想の合理的な見積もりが困難な状況であることより、第2四半期(累計)及び通期業績予想を「未定」とさせていただきます。

当社は、安定的な配当により株主の皆様への利益還元を充実させるため、令和2年11月期末配当予想を1株当たり30円としておりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による業績動向の急変や今後の財務基盤を考慮した結果、誠に遺憾ではありますが、未定とさせていただきます。

大半の宿泊特化型ホテルと異なり、ホテルAZは郊外に立地しています。「そんなところに、いったい誰が泊まるのか」と思いきや、現場作業者や工事関係者の定宿として重宝されています。広々とした駐車場が工事車両で埋まっている日も珍しくありません。またスポーツ団体も積極的に受け入れており、大会の開催される時期には予約が困難になるほどです。

よって新型コロナウイルスの影響を受けるにしても、大会や対外試合の中止によるスポーツ団体のキャンセルに留まり、売上の減少が軽微に留まるのではないかと個人的に想定していました。

しかし、私の見通しは甘かったようです。3月度の26.4%は厳しい数字で、4月度はさらに悪化している可能性が高いと考えられます。

今後に関しても、ひとつ懸念事項があります。それは大手ゼネコンの間で建設工事を止める動きが出てきたことです。もし同社の営業エリアにて工事が止まるような事態にまで発展すれば、都市部のビジネスホテルと同じような苦境に追い込まれてしまいます。

前回のリーマンショック時もそうでしたけど、大不況ではごく一部の例外を除き、最終的にあらゆる企業が影響を受ける点に注意が必要です。「この会社は大丈夫」と勝手に決め付けないほうが無難でしょうか。

もっとも、この状況を乗り切れた会社には、莫大な残存者利益を手に入れる機会が訪れます。投資家としては「どこが生き残れるのか」を注視しておきたいものです。


■キーエンスの景況感(2020年4月15日)

会社四季報春号にて、いちばん印象の残っているのがキーエンスの記事です。

【採用抑制】海外中心に営業人員の新規採用を抑制。景気停滞が長引くことを想定。

同社が取材を受けたのは、2月の中頃と思われます。その時点で、先を見越した行動を取れているのは流石です。

この記事を読めただけでも、四季報春号を通読した意味がありました。


■長期投資家の目線(2020年4月13日)

価値の探究者たち』にて、逆張りを得意としているバリュー投資家のトーマス・カーンが次のように述べています。

それより、みながだめだと思う企業を探してきて、長期投資家の目線で弱気な状況が正しいかどうかを分析するほうがいい。

足元の株式市場では、新型コロナウイルスの影響による業績悪化を懸念されて、売り込まれている銘柄が散見されます。

その会社が中長期的にもダメなのかどうかを分析してみると、ひょっとすれば儲けの種が見つかるかもしれません。5月のバリュー投資塾に向けて、私もこの作業を進めているところです。


■待ち伏せ(2020年4月11日)

下図は福井コンピュータHD(9790)の業績推移です。同社は過去3回の不況期において、いずれも営業赤字を計上しました。

世間に悲観ムードが漂えば、一斉にIT投資が手控えられるためです。

ここ数年は我が世の春を謳歌していたIT関連企業も、直近の世界情勢を鑑みる限り、いつ何時、予断を許さない状況が訪れても不思議ではありません。

長期投資家としては、虎視眈々と、そういった局面を待ち伏せしたいものです。


■危機の本質(2020年4月10日)

東洋経済の記事、コロナ暴落後、いずれ更なる暴落がやって来るは必読です。タイトルからして、いたずらに不安心理を煽る内容かと思いきや、硬派で読み応えがありました。

もろ手を挙げての賛同はしかねますけど、著者の主張は筋が通っており、明快に感じられました。とりわけ結論に関しては、ほぼ同意できます。

大統領選まではトランプ政権も民主党も選挙に勝とうと「救済の手」を緩めないはずだが、最後、市場原理は等しく襲い掛かる。

個人的にも、最終的に資本主義市場の自律調整機能が働き、マーケットはファンダメンタルズを反映すると見ています。そこがバリュー投資家の出番でしょうか。


■不況こそチャンス(2020年4月8日)

東洋経済にニトリ、コロナ禍でも「増収増益宣言」の衝撃という記事が出ています。相変わらず、似鳥会長らしい発言のオンパレードでした。

不況こそチャンス。うちは無借金で預金もあるから、攻めていくことができる。

不況になれば建築費は半分になり、既存物件も手に入りやすくなる。来年から再来年にかけて投資が安く済む。

リーマンショック以上の世界的大不況が起きる可能性がある。ピンチをチャンスに変える準備はしてきた。

ここまで豪語できるのは、財務的な裏付けがあるからでしょう。

下表は直近5年間のキャッシュフロー推移です。2018年2月期を除き、営業CFの範囲内に設備投資を抑えてきたニトリホールディングスは、外部からの資金調達に頼ることなく、キャッシュを367億円から1,407億円まで積み上げました。

この軍資金を元手に、積極的な事業展開に転じるというのが似鳥会長のプランです。まさに本多静六博士が提唱している「好景気、楽観時代には倹約貯蓄、不景気、悲観時代には思い切った投資」を地で行く経営者と言えます。

私たち個人投資家も見習いたいですね。

ニトリ キャッシュフロー推移


■生き残ることが第一(2020年4月5日)

スター・マイカの水永政志社長がインタビューに答えている記事を読みました。

まず、琴線に触れたのが次のコメントでした。投資対象こそ異なるものの、自分も同じタイプの人間だからです。

正直に言って、私はかなり保守的です。イケイケの人が多い不動産業界にあって、私は石橋を叩いても渡りません。

それゆえに、2017年から売り始めたわけで、上げ相場に乗らなかったことによる機会損失もあったでしょう。

今後についても、ほぼ同意見です。

ここから先は会社として生き残ることが第一です。それぐらいの大不況が来ると思います。

この状況を当社が生き延びれば、生存者利益として投げ売りされた不動産を安価で買えるかもしれない。

私は時折、未だ手元に置いている会社四季報2009年夏号を読み返しています。「こんなに割安株がゴロゴロしている局面は、もう二度と来ないだろうな」と思いながら。

しかし直近の状況を鑑みれば、数年後、投げ売りされた優良銘柄を安値で買えるかもしれません。そこで生存者利益を得るためには、個人投資家として生き残ることが第一であり、まさに水永社長のおっしゃる通りです。


■東証2部指数(2020年4月4日)

東証2部には割安株狙いの個人投資家が好む、内需関連の地味な中小型株が数多く上場しています。

ゆえに東証2部指数自体が「隠れバリュー株指数」的な性格を帯びており、個人的にも密かに注目している指数です。

この指数は2月、3月と立て続けに急落し、2017年以降に株を買い始めた投資家が含み損となる株価位置まで下がりました。

来週以降、2月締めの小売業などの決算発表が行われるものの、好材料はほとんどないと想定されます。まだ悪材料が出尽くす時期でもありません。

さらに株価が下がるようであれば、売るに売れずに塩漬けとなり、投資家心理も相当に悪化するのではないでしょうか。

指数自体が下げ止まり、移動平均線が株価に追い付くまで、当面は様子見が賢明に思われました。

東証2部指数 株価チャート


■米国ラッセル2000(2020年4月2日)

個人的に、米国株ではラッセル2000指数を重視しています。相場の先行指標となりうる小型株指数だからです。久しぶりにロングチャートを確認したのですが、かなりヤバい状況に思えます。

まず直近3年に小型株を買った投資家は、このチャート上では含み損となっています。しかも足元の株価水準を下に突き抜ければ、800ポイントまで節目がありません。

次に120月移動平均線を割り込んだのは、2008年から2009年にかけてのリーマンショック直後の大不況以来です。

米国に関しては、S&P500やNASDAQは何とか土俵際で踏ん張っている印象を受けています。しかしラッセル2000を見る限り、当面は厳しいと言わざるを得ないでしょう。

ラッセル2000ロングチャート


■日銀短観(2020年4月1日)

先ほど公表された日銀短観の中で、個人的に重視しているデータが2つあります(下図。見やすくするため、グラフに加工を施しました)。

1.業容判断の推移(製造業)
2.金融機関の貸出態度判断

業容判断の推移は、株価に対する先行指標としても使えます。景気の影響を真っ先に受ける、製造業をチェックしておけばいいでしょう。

このデータを見る限り、景気は2017年にピークアウトしています。それ以降の株価上昇は、実態を伴っていなかったのです。

金融機関の貸出態度判断は、どちらかと言えば遅行指標です。長期投資の場合、この指標が悪化してから本腰を入れて買い始めても遅くありません。

ちなみに足元の状況は、製造業の業容判断が悪化しているものの、金融機関はまだ貸し渋りに転じていないと受け取れます。

長期投資家としては、銀行が傘を取り上げるまで、もう少し待ったほうが良さそうです。

業容判断の推移(製造業)

金融機関の貸出態度判断



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