ビジネスモデルとは脂肪だらけの老人売上高経常利益率
構造的に強靭な企業現在の資本家になろう功を焦る人の失敗
資本主義に参加する方法お願いリストレストランや小売業
あまりにも高すぎるミッションクリティカル

パーシャル・オーナー


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ショートコラム(2019年2月)

■ミッションクリティカル(2019年2月28日)

高収益事業の創り方』にミッションクリティカルという表現がよく出てきます。聞きなれない言葉だったので、ウィキペディアで調べてみました。

ミッションクリティカル (英:mission critical, mission-critical)とは、任務や業務の遂行に必要不可欠な要素(機器、プロセス、手順、ソフトウェアなど)のこと。

我が国では生産財メーカーに高収益企業が偏在しています。顧客企業にとって代替の利かない、ミッションクリティカルな商品を提供することで、価格競争に巻き込まれずに済むからです。

定性分析を行う際に「その企業の製品・サービスはミッションクリティカルか」という視点を追加したいと思いました。


■あまりにも高すぎる(2019年2月25日)

ウォーレン・バフェット氏が「株主への手紙」にて、足元のマーケットに関する見解を述べていました(日経やロイターで報道されています)。

長期の展望があるビジネスを買うには、価格があまりにも高すぎる。

まだバリュー投資家の出番ではなさそうです。今回は、やたら待ち時間が長いように感じられるのですが、気のせいでしょうか。


■レストランや小売業(2019年2月21日)

千年投資の公理』を読みました。てっきり『バリュー投資入門』の二番煎じかと思いきや、説明が分かりやすく、買ってよかったです。

その中で、とりわけ琴線に触れた文言を引用します。

レストランや小売業など消費者に直接サービスを提供する企業は、競争上の優位性を築くのが非常に難しいため、消費者サービスは堀のある企業の割合が最も低いセクターになっている。

原因は乗り換えコストの安さで、別の店やカフェに入るのは簡単だし、人気のあるコンセプトはほぼ確実に、かつ簡単にまねされる。

人気のショップやレストランチェーンは、急成長と毎月新店舗がいくつも開設されるような活気で堀があるような幻想を与えるが、遠くない将来にノックアウトされる可能性もあるため注意してほしい。

私を含めて、個人投資家は飲食や小売関連の銘柄を好む傾向にあります。ビジネスモデルがシンプルで、実際に店舗の視察もできるからです。

しかし参入障壁が低く、競争優位を築きにくい業種であるのも事実。人口の増えている米国でさえ厳しいのですから、少子高齢化により個人消費が落ち込む一方の我が国ではなおさらでしょう。

そう考えれば、内需関連の飲食や小売りでポートフォリオを組むのは、一番不利な戦場で戦っていることを意味します。いっそのこと、戦いの場所を変えてみた方がいいのかもしれません。


■お願いリスト(2019年2月20日)

投資される経営 売買される経営』を読み返していたところ、とても興味深い記述がありました。

私たちは、10社程度の厳選された上場企業にしか投資していません。でもその背後には、50社程度の“お願いリスト”というものを持っています。

日本には3600社もの上場企業があるのですが、これら50社はその中でもひときわ経営の質が高く、是非投資したい会社群です。

それでも私たちが今の時点で投資を我慢し「お願いリスト」に留めている理由は、ひとえにその時点では株価が高すぎると判断しているからです。

ですから、株式市場がパニック状態になって株価が大幅に下がったような場合には(不謹慎かもしれませんが)大喜びです。

実はこれ、私が今まさにやろうとしている作業です。近々に、良い会社だけど、常に株価が割高な“高嶺の花”をピックアップする予定でいます。

人々の欲望を成長エンジンとしている資本主義は、時として行き過ぎを演じてきました。その反動で、欲望が恐怖に変わるときがあります。

恐怖がマーケットを支配すれば、長らく不愉快な日々を送っていたバリュー投資家に出番が回っています。そうなったとき、今度はとびきり上等な銘柄を買いたいのです。

何事も成果を上げるには、事前に相応の準備を必要とします。「今から始めておかないと、間に合わないかもしれない」という気配を感じている今日この頃、そろそろ「お願いリスト」の作成に取り掛かるとしましょう。


■資本主義に参加する方法(2019年2月17日)

経営者はいかにして、企業価値を高めているのか?』より奥野一成氏の言葉を引用します。

資本主義は、資本家(投資家)と労働者(経営者含む)で成り立っています。

したがって資本主義に参加する方法は、(1)資本家になる、(2)労働者になる、(3)その両方になる、の三通りしかありません。

私はもともと心配性の臆病者です。ギャンブルが大嫌いで、今まで宝くじの一枚も買ったことがありません。こんな人間が、なぜ投資家になったのでしょうか?

それは資本主義に参加する三通りの方法のうち「資本家のために、一生、労働力を提供するだけで終える」ことが、経済的には最も割に合わないと気づいたからです。


■功を焦る人の失敗(2019年2月15日)

小休止のすすめ』よりサイバーエージェント藤田晋社長の言葉を引用します。

功を急ぐ人、功を焦る人の失敗は、勝負所でないタイミングで勝手に「ここだ!」と動き出してしまったことがきっかけになっています。待つべきときに自分のタイミングで勝負に出てもうまくいきません。

それはビジネスでも麻雀でも恋愛でも同じです。

株式投資も同様です。こんなに簡単なことが分かるまで、20年あまりの歳月が必要でした。

自分はいつも、株を買うタイミングが1〜2年ほど早すぎるのです。そのため景気がピークアウトして、不況に突入するまでの弱気相場を買い向かう形となり、ずいぶんと苦しい思いをしてきました。

おそらく、毎日のように株価を見ているうち「昨年12月のクリスマス暴落で買っておけば儲かったのに」と近視眼的になり、それが焦りにつながるのでしょう。

株が本当に下がるときは、中途半端な水準では止まりません。下値のメドをあっさり割り込み、パニックに陥った投資家の売りがさらなる投げ売りを呼び込んで、奈落の底まで転落するのです。

今度はそうなるまで、じっくり待ちたいと身構えています。本音を言えば、待つのもけっこう辛いのですが。


■現在の資本家になろう(2019年2月13日)

すっかり奥野一成氏のファンになってしまった私は『経営者はいかにして、企業価値を高めているのか?』を注文し、本日届きました。

とにかく、冒頭に書かれている「現在の資本家になろう」が素晴らしいです。

世間で株式投資がいぶかしいものとされており、若い投資家をほとんど見かけなかった1990年代半ば、私は思い切ってマーケットに飛び込みました。

このサイトを開設するにあたり、パーシャル・オーナー(企業の部分所有者)と命名したのも、奥野氏と同じ思いがあったからです。

「現在の資本家になろう」を読んで、初心者時代の情熱がよみがえってきました。今後の目指すべき方向性として検討したいです。


■構造的に強靭な企業(2019年2月11日)

「市場」ではなく「企業」を買う株式投資』で奥野一成氏が述べられている「構造的に強靭な企業」というフレームワークが興味深いです。

これまでの投資経験によれば、以下の3つの定性的条件を満たすかどうかで6〜7割、長期保有できるかどうか判別できると考えている。

すなわち、(1)付加価値の高い産業であること、(2)競合上有利な状況にいること、(3)長期的な潮流に乗っていることである。

今後、定性分析を行う際の参考にしたいと思いました。長期投資を志す以上は、こういったところまで踏み込みたいものです。

構造的に強靭な企業


■売上高経常利益率(2019年2月6日)

日銀短観には、興味深いグラフがいくつか掲載されています。その中のひとつが、売上高経常利益率の推移です。

足元における大手製造業の売上高経常利益率は8%台であり、極めて高い水準です。それに対して、不況期には3%前後まで落ち込んでいます。

今後、再び不況に陥れば、日経平均に採用されている製造業のEPSが半減以下になっても不思議ではありません。長期投資の場合、そういった可能性を視野に入れておいた方がよさそうです。

売上高経常利益率の推移


■脂肪だらけの老人(2019年2月3日)

「市場」ではなく「企業」を買う株式投資』は硬派の良書です。その中で、奥野一成氏の指摘が琴線に触れました。

インデックス、特にTOPIXはダイナミズム、新進代謝がなさすぎて、脂肪だらけの老人のようです。よい企業もあるのですが、総体でみると資本効率が低すぎて投資対象になりにくいと考えています。

(中略)世界的な低成長化により企業の優勝劣敗が加速する中で、むしろ弱い企業の割合が高いTOPIXというはインデックスはショートすべき対象かもしれません。

私が株式投資を始めた1990年代半ばに、まったく同じことを感じました。

まだ投資家として駆け出しながら「日経平均やTOPIXに含まれているような日本を代表する、図体ばかり大きい企業に投資しても儲かるはずがない」と判断し、たとえ小規模でも時流に乗っており成長の見込める新興企業の発掘に力を入れたのです。

もちろん失敗もたくさんしましたけど、個別銘柄への投資にこだわったからこそ、今日の自分があると言えます。

ちなみに当時のTOPIXは、今とほぼ同じ水準。もしTOPIXに準じた投資を行っていれば、とっくの昔に嫌気が差して、株など止めていたでしょう。

この考え方は、今後も変わることはないと思います。指数自体が使い物にならず、株式投信も短期、順張り、回転売買の隠れインデックスファンドばかり・・・。

とくかく日本株に関しては、自ら銘柄を選ぶしかないのです。それが嫌なら、株価指数としてはまだ優れている米国S&P500を買っておけという話になりましょうか。


■ビジネスモデルとは(2019年2月1日)

伊藤レポート2.0の末尾に付けられている「価値協創ガイダンス」のビジネスモデルに関する記述が興味深いです。

ビジネスモデルは、単なる「事業の概要」や「儲けの構造」ではない。

「モデル」となるのは、競争優位性を確立し、その状態を保つための仕組みや方法が、企業の価値観を事業化する設計図(青写真)として描かれるからである。

したがって、「ビジネスモデルがある」とは、中長期で見たときに成長率、利益率、資本生産性等が比較対象企業よりも高い水準であることである。

しょっぱなから辛口です。我が国における上場企業の大半は、ビジネスモデルを持たない企業といえそうです。

投資家にとってビジネスモデルとは、企業が事業として何をしているのか、どのような市場、事業領域で競争優位性を保ち、バリューチェーン(価値を生み出す一連の流れ)の中で重要な位置を占めているのか、事業を通じてどのような価値を提供し、結果としてそれをどのように持続的なキャッシュフロー創出に結びつけるのかを示すものであり、企業の持続的な収益力すなわち「稼ぐ力」を評価する上で最も重要な見取図である。

ここまで踏み込んだ分析を行ってこそ、投資家を名乗れるとも受け取れます。私たち個人投資家にとっては、ややハードルが高いかもしれません。

企業価値向上に関心を持つ投資家の端的な問いは、グローバル競争においてその企業が本当に勝てるのかということである。

そのような視点で投資家がビジネスモデルの実現可能性を評価するには、それが前提とする市場の競争環境、競争優位を確保する上で不可欠な経営資源やステークホルダーとの関係、主な収益源や収益構造等を理解する必要がある。

その中で、投資家は、持続的な企業価値向上を牽引する要素(ドライバー)を把握しようとする。

伊藤レポートは機関投資家向けに書かれており、投資対象も大型株中心となるので、最終的にはグローバル競争に行き着くわけです。

内需関連の中小型株を好む個人投資家の場合は、前提とする市場を日本国内や特定エリアに置き換えてもOKだと思います。

ただし、その場合も市場環境、業界構造、競合他社、仕入先や販売先などの分析が必要です。そのうえ、状況は刻一刻と変化します。

以上のように、奥の深いのがビジネスモデルです。しっかり勉強して臨む必要がありそうですね。



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