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ショートコラム(2016年6月)

■辺境で儲ける(2016年6月29日)

かつて、私の勤めていた建築資材メーカーでは、沖縄が大阪営業所の管轄になっていました。

「大阪港からフェリーで運んだほうが安い」という理由もあったみたいですが、九州の優良特約店を数多く抱える福岡営業所が嫌がり、大阪に押し付けたともいわれています。

営業所内でも、売上がさほど多くなく、距離的に離れている沖縄はお荷物的扱いでした。そんな中、あるゴルフ好きの営業マンが、この辺境の地に目を付けます。

「どうせ他社も力を入れていないだろう。しかも平日は格安でゴルフができる。重点的に攻めてみようか」

彼は、ゴルフクラブ持参で、足しげく沖縄に主張しました。先方の社長は大喜びです。「今まで、メーカーの人間なんて滅多に顔を見せなかった。しかし、この担当者はまめに訪問してくれる上、ゴルフまで付き合ってもらえる」

ゴルフ営業は大成功を収めます。沖縄での売上は飛躍的に増え、その顧客は大阪営業所で屈指の上得意となりました。

以上が、営業部長から嫌というほど聞かされた中堅時代の話です。


■株価・景気・信用(2016年6月28日)

3つのグラフを見比べてみてください。上から順に、株価・景気・信用の長期サイクルを表しています。

株価は日経平均月足、景気は日銀短観の製造業業容判断、信用は日銀短観の金融機関貸出態度判断を用いました。

長期投資の場合「今、サイクルのどの時点に位置しているのか。今度、どう動きそうか」を大まかにつかんでおくことが肝要です。

というのも、ちょっとやそっとでは変わらない大きな流れだからです。極論すれば、アベノミクスが行われなくても日経平均は上昇していたはずですし、英国がEUを離脱しなくても株価はいずれ下げたでしょう。

現状は「株価はすでに下落に転じており、景気にピークアウトの兆候が見られ、信用はまだ良好」といった感じです。

「今後、上か、下か」とたずねられれば「たぶん、下」でしょうか。

日経平均株価チャート(月足)

日銀短観 製造業の業容判断

日銀短観 金融機関の貸出態度判断


■アウトソーシングのバランスシート(2016年6月25日)

アウトソーシングの続きです。バランスシート(貸借対照表)の分析では、計上額が大きく、前年度との差異が著しい資産を中心に見ていきます。

同社の場合、次の3つが該当します。

●現金及び預金:66億円→92億円
●受取手形及び売掛金:82億円→129億円
●のれん:17億円→66億円

まず、現金及び預金はいくら持っていても困らない資産につき、増えていてもOKです。むしろ増えているのが望ましいといえます。

次に、受取手形及び売掛金の増加も、人材派遣業のビジネスモデルを考慮すれば、増えていてもさほど気になりません。というのは、派遣先が経営難に陥り、売上債権が不良債権化する前に、派遣を打ち切られるケースが大半だからです。派遣先企業の突然死といった事態でも起こらない限り、通常は大丈夫でしょう。

ここで問題となるのは、のれんの増加です。好況期に高値で買収した子会社ののれんを、不況期に減損するケースが少ないないからです。最悪のケースでは、66億円全てが吹き飛ぶかもしれません。

27年12月期の営業利益は31億円、純資産は123億円ですから、もしそうなった場合は最終赤字転落&純資産半減がセットでやってきます。

負債純資産に目を転じれば、短期借入金などの有利子負債も増えており、銀行に傘を取り上げられれば、厳しい経営環境に追い込まれそうです。

足元の業績は絶好調ながら、世間が再び不況に陥った場合、過剰投資が裏目に出る可能性をはらんでいる銘柄といえます。

同社を投資対象とするのであれば、マクロ経済の動向にも注意を払うべきでしょう。

アウトソーシング 貸借対照表(資産の部)

アウトソーシング 貸借対照表(負債純資産資産の部)


■アウトソーシングのキャッシュフロー(2016年6月23日)

アウトソーシングの続きです。投資に割ける時間の限られる個人投資家の場合、財務3表の分析を手際よく行うには、手順が重要になります。

私なら、今回のケースではキャッシュ・フロー計算書を真っ先に見ます。キャッシュ・フロー計算書には、企業の行動が示されており、一番分かりやすいからです。

営業CFに関しては、各年度とも当期純利益を上回っていることから、特に目くじらを立てる必要はありません。

問題は、大がかりな設備投資が不要なビジネスモデルにもかかわらず、投資CFが突出し、25年12月期と27年12月期にフリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)がマイナスになっていることです。

そこで、まず27年12月期の投資CFを確認したところ「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」に48億円を計上していました。

27年12月期の営業CFは20億円につき、身の丈を超えたM&Aとも受け取れます。

なお、フリーキャッシュフローのマイナス分は、財務CFの「短期借入金の純増減額」28億円、「株式の発行による」39億円などで補った形となっています。

同社は、好況期の新興企業にありがちな、レバレッジを利かした企業買収を行いました。

ちなみに、このような行動を起こせば、その結果としてバランスシートにある資産が計上されるはずです。それは何でしょうか?

次回は貸借対照表を分析します。

アウトソーシング キャッシュ・フロー計算書


■永守流M&Aの秘訣(2016年6月22日)

日経のサイトに永守重信氏のインタビュー記事が掲載されています。永守会長兼社長は、日本電産を創業し、世界的大企業にまで育て上げた名経営者です。

インタービューでは、M&Aが100%成功している点についても語られており、私の琴線に触れました。

●高く買わない
● 「買いたい、買いたい」という気持ちでいかない。何年でもずっと待つ
●要らないものを買わない

思わず「何だ。株と同じじゃないか」と口走りそうになりました。

ビジネスを丸ごと買収するか、会社のごく一部を持つかの違いがあるとはいえ、成功する事業家と投資家の視点はほぼ同じだと実感した次第です。


■会社四季報夏号の印象(2016年6月21日)

会社四季報夏号』をざっと読み終えました。全体を通じての印象をまとめておきます。

●チャートが崩れており、一相場終わった感じを受ける銘柄が多い
●為替の影響もあり、グローバル製造業の業績予想が軒並み悪化している
●内需関連の非製造業はまだら模様。結婚式場のように、過当競争のあおりで収益の伸び悩んでいる業種も散見される

マクロ経済指標では、すでに景気ピークアウトの兆候が見受けられますが、四季報通読により個別企業においても同様であることがはっきりしました。

経験則では、相場は今から一番難しい局面に入ります。短期売買派なら、細かい利益の積み上げに徹底すべきでしょう。長期投資派であれば、会社四季報の各ページより悲鳴が聞こえてくるまで、本腰を入れた投資は控えるのが賢明です。

じっくり待つことにより、質の高い株式をバーゲン価格で購入できるチャンスに巡り合えるはず。そのときまで、いかにして投資資金とモチベーションを維持できるかどうかが勝負の分かれ目といえます。


■続・アウトソーシングの有価証券報告書(2016年6月20日)

アウトソーシング(2427)の有価証券報告書【主要な経営指標等の推移】について、気になる点を列挙します。

1.売上高が過去5年間で2.5倍に増えており、拡大ベースが急すぎる。シェアナンバーワンが一人勝ちするポータルサイトビジネスならともかく、同社のような労働集約的ビジネスモデルでは、通常ありえない

2.総資産も3.1倍に膨張している。人材派遣業は、工場や店舗などの設備投資が不要。今流行の太陽光発電にでも手を出したのか?

3.25年12月期、27年12月期のフリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF)がマイナスであり、財務CFにて補っている。くどいようだが、大がかりな設備投資の不要な業種であり、いったい何に投資CFを使ったのか? 財テクでも行っているのだろうか?

4.財務とは直接関係はないが、5年間で2.7倍に増えている従業員数も異様に感じる

決算書を読みなれている方なら、アウトソーシングがこの5年間で何をしたのか、ほぼ察しが付くはずです。

外れても全然構いません。「たぶん、あれじゃないか?」とビジネスモデルに結びつけた仮説を立ててから財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)を見るようにすれば、無味乾燥に思えた決算書がゲームのように楽しくなります。

次回は財務3表の分析です。


■アウトソーシングの有価証券報告書(2016年6月18日)

アウトソーシング(2427)は、工場製造ラインへの人材派遣・請負を主力としています。アベノミクス景気で売上・利益とも急拡大しており、投信の持株比率も15.3%と機関投資家の評価が高い銘柄です。

しかし、有価証券報告書の【主要な経営指標等の推移】を見ると、いくつか気がかりな点があります。皆さんの中に、企業財務を勉強している方がいらっしゃいましたら、同社のビジネスモデルと重ね合せ「どこが気になるのか」考えてみてください。

後日、続きを掲載します。

アウトソーシング 主要な経営指標の推移


■かつての自分なら(2016年6月16日)

かつての自分なら、今年1月や2月の安値圏で少し買い、含み益となったところで調子に乗って買い上がっていたと思います。

結果的に、平均買付単価を上げてしまった後で今週の急落を食らい、今頃は持株の評価損に頭を抱えていることでしょう。

そういう意味では、2008年のリーマンショックで高い授業料を払い、学んだ教訓が役立っているのかもしれません。

というのも、銘柄分析に多くの時間を費やしつつもながら、キャッシュポジションのまま相場を見ているのは、投資家にとって耐えがたいことだからです。

今後は「安値をじっくり待ち、少しずつ買いを入れながら、振り落とされないよう、辛い時期を我慢する」という、頭の中で描いている投資がなるべく実行できるよう、規律を持って取り組みたいです。


■グレアムの金言(2016年6月14日)

ベンジャミン・グレアムの名著『賢明なる投資家』の最終章、第20章に注目すべき記述があります。

長年の経験から分かっていることは、投資家が最大の損失を被るのは、好景気下で優良とはいえない証券を購入したときだということである。

投資家なら、心に書き留めておきたい金言です。本日、そのような質の低い株式が大きく下落しましたが、値頃感で安易に買い向かうのはリスキーといえます。

グレアムの言葉は続きます。

晴天の景気状況のときに高い価格を払って買ったものの多くは、地平線上に暗雲の兆しが見えたら、時すでに遅く、大きな価格の下落を被る運命をたどる。

私自身も、晴れの日に高い買い物をして、何回も痛い目に合っています。今度こそ、同じ轍を踏まないようにしたいものです。


■ハローズのバランスシート(2016年6月11日)

ハローズ決算短信の続編です。営業CFの分析が終われば、3番目の疑問点を解決するため、バランスシート(貸借対照表)をチェックします。

3.28年2月期の総資産は515億年。27年2月期の総資産516億円に対して僅かながら減少している。利益が出ているのに総資産が増えていない

利益が出ているのに総資産が増えていないケースを子供の成長に例えれば「身長が伸びているのに体重が増えていない」ようなものです。人間なら何らかの病気を患っている恐れがありますし、企業なら財務の健全性が疑われます。

ただ、同社の場合は前回のキャッシュフロー分析で判明したように、金融機関休業日の関係で、本来は支払うべき買掛金(仕入代金)約44億円が一時的に27年2月期の貸借対照表に計上されています。

すぐに支払うわけですから、現金及び預金(通常は銀行口座の普通預金もしくは当座預金)として保有しているはずです。

その分を差し引けば、利益成長に伴い、27年2月期には実質的に472億円だった総資産が28年2月期には515億円へと順調に積み上がっています。バランスシート上も、特に問題なしといえます。

【27年2月期】
●現金及び預金33億円 = 77億円 − 44億円
●買掛金48億円 = 92億円 − 44億円
●総資産472億円 = 516億円 − 44億円

ハローズ 貸借対照表(その1)

ハローズ 貸借対照表(その2)

ハローズ 貸借対照表(その3)


■ハローズの営業CF(2016年6月8日)

前回の続きです。ハローズの決算では、帳簿上の儲けである当期純利益と本業の現金収支に当たる営業CFに乖離がありました。

1.28年2月期の営業CF(営業活動によるキャッシュ・フロー)が12億円に過ぎず、当期純利益の26億円に対して過小である

2.一方、27年2月期の営業CFが102億円に達しており、当期純利益の20億円に対して多過ぎる

ちなみに、営業CFの大まかな計算式は次のとおりです。

●営業CF = 当期純利益 + 減価償却費 ± 運転資本増減

●運転資本 = 売上債権 + 棚卸資産 − 仕入債務

当期純利益と営業CFが大きく異なる場合、計算式に含まれているいずれかの項目が影響を及ぼしているわけです。ただ、ここで考慮したいのはビジネスモデルとの関連です。

食品スーパーのような安定成長業種では、大がかりな買収や不採算店舗の大量閉店を行わない限り、減価償却費の著しい変動はありえません。

運転資本にしても、現金商売であり売掛金がほとんど発生せず、鮮度が決め手の食料品を扱っているため過大な在庫を持つことも考えにくいです。

そうであれば「仕入代金支払いのタイムラグにより、運転資本の増減が生じ、当期純利益と営業CFに大幅な差異が見受けられた」という仮説を立てることができます。

現に、同社のキャッシュ・フロー計算書を確認したところ「仕入債務の増減額」が大きな変化が見られました。27年2月期は約48億円の増加、28年2月期は約36億円の減少となっています(下図)。

ハローズ決算短信 キャッシュ・フロー計算書(抜粋)

以上より、仮説が正しかったことになります。というわけで「特に問題なし」で済ませてもOKですが、親切なことに注記として理由が書いてありました。

ハローズ決算短信 注記事項

つまり、27年2月の「仕入債務の増減額」約48億円のうち、約44億円は一時的なものであり、それを除外すれば正味で約4億円の増加となります。28年2月期についても、約36億円の減少から約8億円の増加に転じます。

これらを修正すれば、キャッシュフロー関連の数値が正常化します。何ら問題のない決算といえそうですね。

【27年2月期】
●営業CF58億円 = 102億円 − 44億円
●現金同等物43億円 = 87億円 − 44億円

【28年2月期】
●営業CF56億円 = 12億円 + 44億円


■医療・介護株投資のタブー(2016年6月6日)

会社四季報オンラインに誰も教えてくれない医療・介護株投資のタブーという記事が掲載されました。私の医療・介護銘柄に対する考え方に近いので紹介します。

医療・介護は少子高齢化の進む我が国では数少ない成長産業に属し、長期投資の対象としても魅力的に思われます。

しかし、この業界は健康保険税で成り立っている規制業種であり、政府の方針次第でビジネスモデルが崩れ去ってしまうリスクを内包しています。

現に、介護報酬引下げに人手不足も加わり、有料老人ホームやデイサービスを運営している企業は各社とも苦戦を強いられています。

そういった状況もあり、税金を主な収入源としている企業への投資に疑問を感じるようになりました。今後は、投資対象から外すことも検討しています。


■孫社長の相場観(2016年6月5日)

ソフトバンク(9984)がアリババ株とガンホー株を売却し、財務体質の強化に当てるそうです。

同社の実体は投資会社であり、孫社長はこれまで投資先の選択や売買のタイミングで大きく外したことはほとんどありません。

おそらく、次のような局面を想定していると思われます。

●再び不況が訪れ、株安になるので、今は株の売り時である
●金融機関の融資姿勢が変化して、財務の悪い会社は借入が難しくなる

さて、今回も予感は当たるのでしょうか。


■続・ハローズ決算短信(2016年6月2日)

ハローズ決算短信の続きを書きます。気になる点は、次の3つです。

1.28年2月期の営業CF(営業活動によるキャッシュ・フロー)が12億円に過ぎず、当期純利益の26億円に対して過小である

2.一方、27年2月期の営業CFが102億円に達しており、当期純利益の20億円に対して多過ぎる

3.28年2月期の総資産は515億年。27年2月期の総資産516億円に対して僅かながら減少している。利益が出ているのに総資産が増えていない

難易度の低い順に並べました。1つめは割と分かりやすかったと思います。3つめまで気づけば、大したものですね。

次に「なぜ、こうなったのか」という仮説を立てながら、該当の財務諸表を見ていきます。外れても全然構いませんから、とにかく自分で考えることが重要です。続きはまた今度。

ハローズ決算短信



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