ウォーレン・バフェット、ベンジャミン・グレアム、バリュー投資の達人に学ぶ株式投資

パーシャル・オーナー


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ショートコラム(2003年8月〜12月)

■今年を振り返る(2003年12月28日)
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とにかく激動の一年で、忘れられない年になるでしょう。「もう、元本割れはないだろう」と思っていたポートフォリオがマイナスに転落したのは、昨年の12月。年が明けてからも下がり、2月で底を打ったものの、4月まではマイナスでした。5月に何とか回復、その後は上昇を続け、9月から10月半ばに掛けてはとんでもなく上がり、その後急落しました。11月も調整が続き、12月は横這いで終わりそうです。

パフォーマンスはTOPIXに対して20%のプラスで、年間40%弱の上昇ですが、ポートフォリオに小型株が多いので満足できる結果ではありません。原因としては
■多く持っていた流通・小売が不調であったこと
■その他金融も良くなかったこと
■元々割高な株を保有していたこと
■10月半ばの急騰局面で割高になった銘柄を売らなかったこと
が上げられます。

個別銘柄ではポートフォリオの1位銘柄であったプレナスを月次悪化で売却、エン・ジャパンは11月の乱高下に耐えられず、結構安く手放しています。米株ではAIG(AIG)、アルトリア(MO)を安値で売却していますから、反省すべき点は多いです。

投資方針の見直しを11月に行っています。私には成長株指向があり、事業内容が優れている企業の株は、少々高くても購入していました。「アリアケやキーエンスは優良企業だからPER30倍でも可」といった具合です。でもそのような銘柄では大した利益は上がらず、実際にパフォーマンスに貢献したのは、PER10倍そこそこで買い付けたダヴィンチ・アドバイザーズやラウンドワンでした。そこで今回から「PER15倍、配当利回り1%」を最低ラインと決め、バリュー投資指向を強めることにしました。今後の成果に期待したいです。

最後になりましたが、このサイト「パーシャル・オーナー」には多くの方に訪れていただき、ありがとうございました。皆さん、良いお年をお過ごしください。


■大竹愼一(2003年12月20日)
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私は昨年の秋、大竹愼一氏のセミナーに出席したことがあります。受講料3万円は少し迷いましたが、「自分の目でどんな人物か見ておくべき」と考えて参加しました。会場には早めに到着していい席を確保、資料に目を通していると、いきなり本人が現れました。紺のスーツに白のシャツ、地味なネクタイ、スーツの上からジャンパーを羽織っていました。講演席とプロジェクターの位置が気に入らないのか自分で直し、開始時間までは前で日経新聞を読みながら「誰か来ないかなぁ」といった表情でした。

セミナーは前半が講演でNYダウ中心の内容、後半が参加者の質問(事前にFAXで受付)に答えるというパターンです。テープを聞かれた方はご存じの大竹節オンパレードで、このニュアンスは本では伝わりにくいです。当日は満足して帰途に着きました。

本のほうは1年半ぶりの新刊「勝つ投資負ける投資」が出ましたが、内容は(大竹氏にしては)イマイチな感じで、前作の「ハイテクバブルとローテク投資」方が良かったです。理由は投資レターの質問をまとめたものなので、読んでいて流れが悪いこと、古い内容が含まれていて誤解を招く箇所があることです。

大竹氏は実際にファンドを運用している機関投資家で、1年単位のパフォーマンスを問われます。ですから、推奨した銘柄でも株価が上がったり会社の方向性が悪くなるとさっさと売ります。今のポジションは解りませんが、SFCGも売ったり買ったりしています。それとポジショントークが多く、本文中で賞賛されているサンマルクは大竹氏に資産運用を依頼している(つまり上得意客)はずですし、中国銀行はサンマルクのメインバンクです。後、物事をはっきり言うので、極論になるケースがあり、昨年秋の講演会でも「みずほとUFJは潰れる」と言い切ってしまいました。りそなは国有化されましたので「遠からず」といったところですが。

悪いことを先に書いてしまいましたが、勿論いいことも言っており、「ハイテク株は循環株であり成長株でない。薬品株のように安定成長できるのが真の成長株である」いう持論や、ポジションとナンピン買いに対する考え(株はポジションで運用するべきで、ナンピン買いで株数を許容量以上に増やしてはならない)を守っていれば、ITバブルでも大怪我をせずに済んだはずです。

大竹氏について書いていたら「あなたの知らない大竹愼一」みたいになってしまいました(苦笑)。このようにクセのある投資家ですので、ご自分の投資方針がはっきりしている方は著書を読んで、「この部分は違うけど、こちらの考え方は賛同できる」とやるのも興味深いと思います。

大竹愼一の本の紹介はこちらです


■苦痛関連銘柄とラルフ・ワンガー(2003年12月07日)
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何か不安な世の中になってきました。給料は上がらない、ボーナスは減る、仕事はきつくなる・・・。私の部署も「成果が出なければ人数を減らす」なんて話があるようです。電車に乗れば大の大人がちょっとしたことで怒鳴り合い、大阪市内の駅に着いたらおとなしそうな男性が駅員に手を押さえられて連れて行かれます。間違いなく痴漢ですね。みんなストレス溜まっているんだなぁ。

でも投資家はそんなことでくじけてはいけません。ラルフ・ワンガー(「新ファンド・マネジャー」「マネーマスターズ列伝」に収録)は「(世の中には)事態の悪化に乗じて繁栄するといった類の会社があることを忘れてはいけない」と言い、この手の銘柄を「苦痛関連」と呼んでいます。ワンガーは例としてH&Rプロック(TKCみたいな会社)やコマース・クリアリング・ハウスを上げていますが、私が思い浮かぶのは、トレンドマイクロ、公益社、セコムといったところでしょうか。保険会社もそうですね。

ラルフ・ワンガー語録ですが、結構面白いのでいつくか載せておきます。
■ある産業が大きな発展過程にある場合、大儲けできるのはその周辺にある産業。
■(インデックスファンドについて)これじゃあ人間の知恵が投資プロセスに付加価値をつけると信じているわれわれファンド・マネジャーは浮かばない。
■(東京ディズニーランドについて)入場料がいくらだろうがあまり関係ない。
■新聞の一面を賑わすのは悪いニュースだけだ。つまり「インドで大災害−何千人の人々が家を追われる」というニュースが全く無かったときは大雨が予想通りに来なかったのであり、大豆の先物はどうなんだとピンとこなくてはいけない。
■良い会社の株価がオーバーな脅かし材料で下がったときには儲けのチャンスを見逃してはならない。
■商業用の不動産はインフレヘッジにもってこいの投資である。
■こちらが求めているのはバンカーの経営している銀行である。

個人的には、東京ディズニーランドは理由を付けて値上げをすればいいのにと思います。利用者が文句を言うのは最初だけで、また行くに決まってますから。不動産と銀行については、経営のしっかりしているところの見極めができるなら買ってみても面白そうです。J-REITなんて不動産市況に回復感が出てくれば配当利回り3%あたりまで買われるかもしれませんよ。

そのワンガーは日本株では京成電鉄、HIS、小森コーポレーションに投資していました。結果はどうだったのでしょうか。え、いいに決まっているって。


■RPS(レラティブ・プライス・ストレングス)(2003年11月29日)
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オショーネシーは「ウォール街で勝つ法則」で 年間のRPS(レラティブ・プライス・ストレングス:株価上昇率)上位銘柄に投資することが一貫して市場を上回る方法であり、「金銭的な破綻を目指しているのでないかぎり、年間株価上昇率の下位銘柄に投資してはいけない」と言い切っています。この本はデータ検証も豊富で「低PER戦略や高利回り株への投資は、有名な大型株では効果が高い」など有用な記述もあるのですが、どうもこの点だけは腑に落ちませんでした。筆者は「RPS上位銘柄でPER20倍以下」などバリュー指標との組合せを薦めていますが、ネットバブルの最中にこのような投資を行うと結果は悲惨だったかもしれません。

この疑問には「バリュー投資入門」が答えてくれました。本文22頁でオショーネシー(O'Shaughessy)を名指しにして「前年だけの株価変化でなく過去3年の変化にもとづいて株式を選んでみると結果はまったく逆になる」と述べ、理由として「平均への回帰」を上げています。いわゆるテクニカル投資の世界であるモメンタム(勢い)の否定です。

さて、皆さんはどちらの考えを指示するでしょうか。バリュー投資家なら、常識的に考えて「バリュー投資入門」だと思います。「ウォール街で勝つ法則」は画期的な本でもあるのですが、この部分の記述については誤解を招かないような慎重さがほしかったですね。


■PERの高い株(2003年11月24日)
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「PERが20倍を超えるような普通株をいつも買っているような人は、長期的には多額の損失を被ることになるだろう(証券分析)」「株価収益率が非常に高い株式への投資には、大きなリスクが伴う(ウォール街のランダム・ウォーカー)」「現状のウォールストリートで人気絶頂の銘柄を高PER状態で買うのは最悪の戦略である(ウォール街で勝つ法則)」投資の名著は高PER銘柄に対して警告しています。興味深いのは成長株投資家として知られるフォスター・フリースまでが「予想PERが30倍もしているなら少し危険だなと判断します(帝王の投資哲学)」と述べていることです。

私は成長株が好きで、ポートフォリオには小型成長株が多く含まれています。昨年の後半から今年の前半にかけては成長株までも総崩れで、20%成長を期待できる銘柄がPER10〜15倍で売られていました。当然、そのような時期に買い入れた銘柄はパフォーマンスがいいわけですが、以前から持っているキーエンスやアリアケがそうでもないのです。キーエンスやアリアケは優良企業なので、今から思えば割高なPERで購入していました。高PER銘柄はパフォーマンスが良くないことを身を持って体験した次第です。そこでPERについて見直しました。

予想PER 判断
30倍以上 売り
22〜30倍 警戒
15〜22倍 ホールド
10〜15倍 買い
10倍以下 要調査

PER15倍を基準として、買い付けるのは原則的にPER15倍以下の銘柄とします。PER10倍以下を「要調査」としたのは、そこまで売られる理由をつかんでおきたいからです。PER30倍以上の銘柄は今後売却していくことになります。第一段として、ある理由で持っていたイーベイ(EBAY)を売却しました。投資はPERだけで判断するものではありませんが、これからはバリュー株の比率が高まりそうです。


■投資について再考(2003年11月15日)
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「好事魔多し」とはよく言ったものです。9月と10月半ばまでの株価上昇で浮かれていたら、持株に降ってわいたような悪材料が現れました。
■ベルク・・・中間決算減益(公募後の初決算)
■SFCG・・・週刊東洋経済の記事
■ハーバー研究所・・・中間決算減益(一旦上方修正を出しておきながら減益)
■CSS・・・社長逝去
慌てて売却したベルクとSFCGでは底値を叩き、特にSFCGはPF4位のコア銘柄だっただけにダメージが大きいです。

いい機会ですので、投資について再考してみると、次のようなことが浮かびました。
■毎日ヤフーをチェックして、好材料があれば買い(増し)、悪材料で売るような投資でいいのだろうか。
■一時的な不振を乗り越えられる業界トップ企業を買い、細かいことは気にせず、どっしり構えるべきではないか。
■株価に対するバリューや配当を重視するべきでは。

そして、自分の手持ち銘柄について、あるケースを仮定します。
■ニトリはユニクロと同じ道をたどり、
■エン・ジャパンはリクルートの逆襲を受けて収益が伸び悩み、
■ラウンドワンにはボウリング場への新規参入者が現れる。
悪材料を受けて持株を手放した直後、株式市場が暴騰を演じるとどうでしょう。私は現金を持っているだけで、利益を得ることはできないのです。

やはりコア銘柄には日本を代表する一流企業を選び、動かさないのが一番だ。そう思った私はSFCGの売却代金で武田とトヨタを買ってみました。株価に対するバリューもそこそこありますし、配当も悪くありません。投資について再考した、一つの結論です。


■債券のような株式(2003年11月3日)
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次の表はシティグループ(C)の配当金推移です(S&P500株式ガイドMSN Moneyより)。

年度
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997
配当
0.04
0.06
0.08
0.10
0.13
0.15
0.20

年度
1998 1999 2000 2001 2002 2003
配当
0.28
0.41
0.49
0.60
0.70
1.10

何と12年間で27.5倍に増えています。1991年の高値は3.34ドルですから(株式分割修正後)、高値で買ってもそのまま持っていれば買い値に対する配当利回りは33%で、株価の方も14倍以上になっています。シティグループはできすぎた例ですが、このように長期間保有した株が成長を続けて増配を重ねると、配当利回りが上がり元本割れの可能性も極めて低くなります。こうなると債券より安全な投資となり、債券や預貯金を持たずオール株式という選択も可能です。これを「債券のような株式」と呼び、長期投資のポイントは「債券のような株式」をどれだけ持つことができるかにかかっていると言えるでしょう。


■アセット・クラスとJ-REIT(2003年11月3日)
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ウイリアム・バーンスタインは「投資「4つの黄金則」」で、分散するアセット・クラスとして外国株とREIT(不動産投資信託)を上げ、余裕があれば貴金属株への投資をすすめています。投資はノーロードのインデックスファンドを通じて行い、モデル・ポートフォリオは次のようになります。
25%・・・米国総合株式マーケット(S&P500)
10%・・・米国大型バリュー株
10%・・・米国小型バリュー株
5%・・・REIT
10%・・・外国株
40%・・・短期証券(5年未満)

これを私なりに日本株に応用してみます。
25%・・・日本株総合(TOPIX ETF)
20%・・・日本バリュー株(個別銘柄)
10%・・・外国株総合(バンガード・トータルストックマーケット
5%・・・外国資源株(貴金属含む)
10%・・・J-REIT
30%・・・預貯金

米国との違いは、まともなノーロードのインデックスファンドが少なく、超低金利で債券が投資対象にならない点です。インデックス投資はETFの登場で道が開けましたが、バリュー株は自分で銘柄を組み合わせる必要があります。外国株総合はマネックス証券バンガード・トータルストックマーケット(ウィルシャー5000のインデックスファンド)を購入できます。資源株(貴金属含む)は日本株にはないので、外国株から探します。個人的には金より石油を組み入れたいです。 債券は投資対象から外しました。その代わり、J-REITを利回り商品と見なし、少しでも金利収入を得られるようにしてあります。J-REITを利回り商品と捉えることには異論もあるでしょうが、国債とのスプレッドが大きく、また金利上昇時には不動産市況の回復が望めることから、部分的に債券の代用になると考えました。

投資法人
価格
利回り
8951 日本ビルファンド 677,000円 4.22%
8952 ジャパンリアルエステイト 643,000円 4.35%
8953 日本リテールファンド 643,000円 4.83%
8954 オリックス不動産 502,000円 5.20%
8955 日本プライムリアルティ 261,000円 4.29%
8956 プレミア 515,000円 5.51%
8957 東急リアル・エステート 519,000円 4.17%
8958 グローバル・ワン不動産 515,000円 4.58%

J-REITの価格(10月31日現在)と予想利回りです。J-REITについてはspc-reit.comが詳しいです。


■テニスと投資(2003年10月19日)
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私は健康のため、日曜の午前中は地元のテニススクールに通っていますが、テニスでの経験が投資に役立つと思うときがあります。「敗者のゲーム」でチャールズ・エリスは、プロのテニスは勝者の勝つべく起こした行動により結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのゲームは敗者がミスを重ねることによって決まる「敗者のゲーム」であり、資産運用も機関投資家の市場支配により「敗者のゲーム」へ変わってしまったと述べています。

それはさておき、今日のコーチのアドバイスは投資のためにもなるの載せておきます。「目先のことばかりを考え、ラケットを振り回すとフォームが崩れてしまい、せっかくのチャンスボールでミスをしてしまう。普段は我慢をして、とにかくいいフォームで打つように心掛けていると、そのうちチャンスボールが来るので、それはしっかり決める。結果は自然とついてくる。」

投資家はタフでないと務まりませんから、健康は大事です。週末は資料とにらめっこで体を動かしていないあなた、「投資に役立つ」テニスでも始めませんか。


■1997年12月、ニトリ(2003年10月12日)
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1995年2月、阪神大震災後に急落したプロミスを拾ったのが、私の株式投資の始まりです。そして、阿部氏の「いま、この企業に投資しなさい」の影響を強く受けた私は小売業への投資を考え、ニトリとプレナスの「るいとう」を始め、1997年から本格的な投資に入ります。ところが11月に三洋証券が破綻、拓銀、山一証券と続き、株価も急落します。いわゆる「平成金融恐慌」です。

まだ初心者だった私は、多額の含み損を抱えて困り果てていました。特にニトリはメインバンクの拓銀が破綻、北海道経済はどん底でダブルパンチ、さらに小型株が叩き売られる状況で、株価の値下がりに耐えられず「るいとう」の休止に追い込まれます。当時の投資ノートには1997年12月31日付けで、「ニトリ、持株約200、買付単価約1,400円、時価680円、投資判断:売り」と書いてありました。

その後、私の興味はパソコンに移り、株式市場を離れます。スクラップまで取っていた日経新聞も読まなくなりました。時は流れ、普通の生活を送っている私にも株式市場のざわめきが聞こえてきます。2000年のITバブルです。久しぶりに株価を計算してみると、どれもこれも大幅に値上がりしているではありませんか。市場からは離れていましたが、持株は1株たりとも手放していなかったのです。「私のやってきたことは、そう間違っていなかった。」そう確信した私は2000年秋口から投資を再開します。

ニトリはその後、買い増しを行い、今やポートフォリオ1位の銘柄となりました。「あのとき680円で1,000株買っていたら」と思ったりしますが、当時はそんな状況ではありませんでした。


■アンネ・シャイバー(2003年10月11日)
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「あなたが目標とする投資家は?」と聞かれれば、皆さんは誰と答えるでしょうか。「バフェット、フィッシャー、それともプライス?」私ならアンネ・シャイバーと答えます。アンネ・シャイバーは一個人投資家ですが、遺産のほとんどを奨学金として寄付したので名前が残りました。

彼女は1944年、貯金の中から5,000ドルを使って株式投資を再開します。なぜなら、税務調査官としての経験から、米国で金持ちになる確実な方法は株式投資であることを知っていたからです。以下はアンネ・シャイバーの投資法ですが、バフェットと共通点がありませんか。しかも時代を考える彼女の方が先輩格です。

■生活を切り詰め、小口で株を買い増していった。通常は100株以下の購入だった。
■何を買うべきは自分で研究した。投資対象を自分が理解できる分野の有名企業に絞った。
■医薬品、映画・娯楽サービスには興味を示し、ハイテクや重工業関連の株には関心を持たなかった。
■株価が高いとか安いとかで株を買うことはしなかった。その会社がどれだけ利益を生み出す能力があるかを吟味した。
■いったん買い入れた株は絶対に手放さなかった。値下がりして塩漬けになった株でも絶対に手放さなかった。
■資産の60%を株式で、30%を債券で、10%を現金で保有した。

アンネ・シャイバーは1995年、101歳で亡くなります。彼女が1944年に投資した5,000ドルは1995年に2,215万ドルに増え、年率22%の運用成績でした。彼女は食事を切り詰め、衣服は擦り切れるまで着古し、バス代も倹約して貯め、それを株式に投資して、天涯孤独のままこの世を去ります。果たしてそれで良かったのでしょうか。私には悲しい成功物語に思えて仕方ないのですが・・・。

アンネ・シャイバーについては「プロが教える海外資産投資」が唯一と言っていい日本語の資料で、このコラムもそこからの引用です。尚、米国では批判的な記述もあるようです。


■ニトリ中間決算(2003年10月4日)
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持株のニトリが中間決算を発表しましたので、簡単に分析してみます。

■経営成績
19%増収、35%増益の好調な決算です。前期と比較して売上高が伸びています。
 
当期
前期
売上高
51,865
19.2
43,519
11.2
営業利益
6,272
33.9
4,682
30.8
経常利益
6,449
33.5
4,831
35.0
純利益
3,848
37.4
2,801
33.7
1株利益
172.18
132.20

■月次売上高
ニトリはホームページで月次を公表しています。小売業では既存店売上高が重要視されますが、前年割れは5月のみで検討していると言えます。
 
既存店
全店
店舗数
3月
102.3
119.6

86

4月
102.6
119.7
90
5月
98.0
112.6
90
6月
104.8
121.6
90
7月
101.4
117.7
90
8月
108.9
126.3
91

■貸借対照表
ポイントは1つだけ。売上に対する棚卸資産(在庫品)の比率(棚卸資産回転率)を見ます。この数値が悪化すると要注意です。ニトリも2003年2月期の数値が悪化して、ある掲示板で指摘されたりしましたが、その後は改善しています。
日付
売上
棚卸資産
回転率
2001.2.20 期末
63,258
7,273
8.7
2001.8.20 中間
39,146
7,099
11.0
2002.2.20 期末
78,752
7,785
10.1
2002.8.20 中間
43,519
7,858
11.1
2003.2.20 期末
88,259
10,348
8.5
2003.5.20 Q1
29,212
9,963
11.7
2003.8.20 中間
51,865
9,007
11.5


■損益計算書
ニトリは小売業にしては売上原価が低く、製造業の優良企業顔負けの売上総利益率を誇り、当期ではさらに改善されています。これはインドネシアなど海外に製造工場を持っているからできることです。その代わり、比率の高い販売管理費が上昇しており、販管費のコストダウンが課題です。でも小売業で営業利益率12%は素晴らしい数字です。

科目
当期
前期
売上高
51,865
100.0
43,519
100.0
売上原価
24,783
47.8
22,560
51.8
売上総利益
27,081
52.2
20,959
48.2
販売管理費
20,809
40.1
16,276
37.4
営業利益
6,272
12.1
4,682
10.8

■キャッシュフロー
キャッシュフローはあまり感心できません。営業CFで稼いだ以上の資金を投資CF(新規出店)に回しており、不足分は財務CF(借入金)で補っています。
 
当期
前期
営業CF
5,331
783
投資CF
-6,825
-3,557
財務CF
2,276
2,228
期末残高
3,609
2,514

■総括
小売業の決算を見るポイントは3点です。既存店売上高が前年を下回っていないか、棚卸資産回転率が悪化していないか、「営業CF - 投資CF」がプラスかです。ニトリは今回、3点目が不合格で、好調な決算ながら手放しで喜ぶ訳にはいかないようです。

■インフレリスク(2003年9月23日)by yukikaze_fundさん
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株式市場の好調により、国内における当面の金融危機は回避されたと考えてよさそうです。債券相場の波乱などが不安要素ではありますが、多くの銀行では事業基盤を脅かすような深刻な事態は遠のいています。 ただ、この国が抱えるもう一つの問題である過剰な公的債務については、解決の糸口が見つからないままでいます。2003年3月末で668兆7,605億円という絶望的な債務残高を解消するために、政府がインフレという選択肢を選ぶ可能性は否定できないでしょう。インフレ策が採られれば、約1,400兆の個人の金融資産の大半を占める預貯金や年金・保険資産は、我が国の財政健全化という「大義」のために犠牲に供せられることになります。 銀行預金は安全確実などという考えは、インフレの前に無力です。だからこそ、これからは”資産防衛のための株式投資”という発想が重要になってくるのです。

財務省発表の国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(平成15年3月末現在)
http://www.mof.go.jp/gbb/1503.htm

◇寄稿:yukikaze_fund
預貯金のリスク(2003年8月29日付ショートコラム)に対応して作成
◇後日value日記にて加筆修正・補足予定

■yukikaze_fund(雪風ファンド)さんについて

Yahoo!掲示板のvalue日記を通じて知り合った方で、土地関係にお詳しく、グレアム流バリュー投資を実践されています。今回、寄稿の申し出がありましたので、喜んでお受けした次第です。上記は原文のまま掲載しています。


■ボルチモアの賢人・・・T・ロウ・プライス(2003年9月15日)
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「投資家が成功するためには、”成長を約束された肥沃な土地”を探し出して、成長株を長期にわたって保有することがベストだ。」フォーブス誌から「ボルチモアの賢人」と称されたT・ロウ・プライスの主張です。

長期保有銘柄の株価上昇率(1972年)
企業名
保有期間
上昇率
年間上昇率
配当利回り*
ブラック&デッカー
35年
+8,540%
+13.6%
80.0%
スリーエム
33年
+17,025%
+16.9%
192.6%
メルク
31年
+23,666%
+16.9%
293.3%
エイボン・プロダクツ
17年
+15,528%
+35.6%
154.3%
ゼロックス
12年
+6,184%
+41.2%
34.9%
*取得原価ベースの配当利回り

「巨万の富を築いたのは長期間、成功企業のオーナーを努めていた人々である。企業のオーナーは長期派の投資家であり、企業の浮き沈みや相場サイクルによって企業のオーナーシップを手放したり、買い戻したりしようとは思わないのである。」プライスは独自の投資哲学により長期の「バイ・アンド・ホールド戦略」を実践します。上の表はプライスが1972年に公開したパフォーマンスの良かった上位5銘柄(「賢人たちの投資モデル」に掲載)ですが、その成果は驚異的なものがあります。メルクにいたっては33年間で236倍化、受取配当金だけで買い値の3倍になろうかという勢いです。例えば、ある株を100万円で買い付けて33年間ホールドしたら2億3600万円になり、受取配当金は年間293万円。インフレを考慮しても、こんな投資ができれば何も言うことはありません。 毎日インターネットで株価をチェックして、持ち株の僅かな値動きに一喜一憂している自分が恥ずかしくなります。

プライスは投資に当たり、成長株狙いの面はあるものの、企業の実体価値への投資という考えを常に基本に置いており、「高PER銘柄については買われすぎでないかと気をつけてみるべきである」と興味深い発言をしています。そして、PERを無視して成長株を買い進んだ後継者を非難して波紋を呼びますが、ニフティ・フィフティブームの崩壊によりプライスの正しさは証明されます。もしプライスが生きていたら、ヤフーやイーベイの株価にどうコメントするのでしょうか。


■不動産投資について(2003年9月10日)
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不動産は株式と共に投資の手段であり、また株式投資家にとって不動産投資は憧れでもあります。

不動産投資のメリットとして
■家賃収入を計算できる(株は短期的には相場次第)
■借入金が活用できる
が上げられます。

デメリットは
■情報がオープンでない
■固定資産税や修繕など維持費用が掛かる
■1件当たりの投資金額が大きく、流動性に乏しい
ことです。

共通点は
■成功しているのは一部の投資家
に尽きると思われます。

個人の場合は、株式投資とは別に500万円程度のリスクマネーを用意して(小口投資家にとっては大変なことですが)、中古のワンルームマンション投資から始めるのが一般的でしょうか。新築のワンルームを買ってはいけないのはお分かりですね。表面利回りで5%程度では維持費用を考慮すると割りが合わず、J-REITでも買う方がいいです。中古にしても、ワンルームは区分所有であること(大規模修繕などは全体の同意が必要)と担保として使えない点は注意が必要です。 小さなマンションやアパートの一棟買いという方法もありますが、最低3,000万は必要ですし、不動産投資一本に絞らない限り難しいです。

もう一つ、不動産関係の銘柄に投資する方法があります。J-REIT関連で稼いでいるダヴィンチ・アドバイザーズ、アパート管理の積和不動産、町の不動産屋をFC展開しているセンチュリー21・ジャパンなどです。J-REITも日本円で5%前後の利回りが得られる点では貴重な存在です。

株式投資と不動産投資、両方できれば理想ですが、小口投資家は資金に限りがありますし、投資家たるもの得意分野で勝負すべきです。それでも不動産投資は10%の純利回りが計算できるので「1,000万円で中古ワンルーム2件に投資して家賃収入が年間100万円、それを株に再投資して・・・」という虫のいいことを考えてしまうのです。


■砂漠のなかの一輪の花・・・ニトリ、ラウンドワン(2003年8月31日)
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私は株式投資を行っていることを黙っていますが、仮に職場で公言していたら暇な役員あたりが寄ってきて「どんな銘柄を持っているのか」聞いてくると思います。私は情報システム部門ですし、職場ホームページも担当していますので、IT関連やネット株を期待されているでしょう。「はい、家具のチェーン店やボウリング場の会社に投資しています」。その答えに相手は困惑の表情を見せるに違いありません。ここまでは作り話ですが、実際に含み益・ポジションともに大きい銘柄はニトリとラウンドワンなのです。

ピーター・リンチは著書「ピーター・リンチの株式投資の法則」で斜陽産業における偉大な会社群を「砂漠のなかの一輪の花」と称しています。「高成長産業は注目されるがゆえに多くの競争相手が集まり利益が出なくなるが、斜陽産業では弱者が脱落していき残存者は大きなマーケットシェアを得ることになる」がリンチの説明です。ピーター・タスカも著書「日本は甦るか」で「ハイテクかローテクかを問わず、いちばん儲かる分野は、生産性の高い競争相手があまりいないところだ」とほぼ同じことを述べています。

ニトリはアジアの工場で家具を生産しています。電子部品なら当たり前のことでも、家具でそんなことを行っている会社はありません。だから他店より安く売っても他店より利益が出ます。新しいボウリング場を作っている会社はラウンドワンだけです。築30年以上で片手間に経営されている(専業でない)ボウリング場がラウンドワンに対抗するのは無理でしょう。いずれも業界が斜陽産業だから成功した、私はそう見ています。


■預貯金のリスク(2003年8月29日)
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この低金利では預金しても増えないけど、株式投資はリスクがあるので踏み切れない方も多いと思います。では預貯金にリスクはないのでしょうか。私は長期的には預貯金の方が株式投資よりリスクが高いと考えています。元々預貯金(現金)はインフレに弱く、元本(額面)の保証はされても価値は保証されないからです。子供の頃のアイスキャンディーの値段や電車の初乗り運賃を思い出してください。私なら日本円で預貯金100%のポートフォリオは、逆に怖くて組めません。資本主義の繁栄が続く限り、株式が一番有利な投資対象であることは歴史が証明しています。「もっとも危険に見える安全な道とはつまり、投資を続けることです」はフィリップ・フィッシャーの言葉ですが、その通りだと思います。尚、日本の現状を考えると、保険として少額でもUSドルは持っておきたいものです。



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