まだまだ青い麦畑であるが、
その先端には穂が出揃うようになって来た。
麦の穂は実をつけても稲穂ほど重くはならないし、
麦藁は稲藁よりもしっかりしているので、
実っても頭を垂れるようなことは無い。
 
農道を自転車で行くと、
断続的に風が吹いてくる。
風は麦の穂を押しながら進んでいくが、
押されて傾いた穂は光の反射具合が違うので、
直立している穂とは大きく色が異なってくる。
色違いの麦の穂はゆっくりとうねりながら、
大海の波のように進んでいく。
 
信号の無い舗装された農道はレース場同様であり、
安心して通行出来る道ではなくなってしまった。
自動車の通行が増えるに連れてゴミも増え、
反比例するかのように動植物は減っている。
そんな中で麦畑に広がっていく波は、
僅かに残る平和な風景の一つである。

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