執念実った 最高裁の判決

 今日、最高裁にてブラジル在住被爆者三名に対し、勝訴の判決が確定しました。日本に来て健康管理手当の受給ができるようになったのに、ブラジルに帰国したため未払いのままになっていた提訴時より5年以前の手当についての時効消滅主張を「著しく正義に反し、権利の乱用」として認めず、請求金額全額の支払いを命じた広島高裁判決が確定いたしました。

 広島県議会は 先の広島高等裁判所の判決に対し、最高裁判所に上告することを賛成多数で決議いたしました。私たちは、原告として残った3名の体力の限界が解っていましたので、広島県に上告しないように強くお願いしましたが、聞きいれられませんでした。この県議会の上告に賛成した議員の中に県知事の選挙参謀から金銭をもらって賛成に加わった多数の議員がいた事は絶対に許せません。
 又訴えて居る本人に広島県の職員から裁判を取下げるようにとの、在ブラジル広島県人会宛へのメールなどもあり、裁判期間中、心の休まる日々は無かったように思えます。

 原告3名、お亡くなりになった副会長向井昭治さんはじめ、堀岡貢さん、細川晃央さん、本当に今日まで良く耐えてくださいました。祖国日本や広島県を被告として裁判してまで訴えなければならなかった被爆者にとっては、たいへん辛い期間でした

 また「在ブラジル・在アメリカ被爆者裁判を支援する会」をはじめ、在外被爆者を支援する日本各地の会の方々に厚くお礼を申し上げます。この判決は私達在外被爆者が待ちに待った待望の喜びですが、皆様のご援助無しではとうてい実現しなかったことです。そして、今は亡き北米の倉本会長他、多くの被爆者仲間の血の出る要望がやっと叶ったと思いますこの日を待たず、何の援護も受けずに死亡した在外被爆者の事を思えば胸が痛みます

 今後、この判決が在外被爆者への援護の拡充に資する結果となることを求めたいと思います。厚生労働省において、在外被爆者を差別してきた施策を反省し、被爆者健康手帳をブラジルに居たまま申請出来るようにするなど、差別のない援護対策の実施を心より願っています。特に南米においては、現地での医療支援に厚生労働省は全力で当っていただくよう、強く要望いたします。

平 成 十 九 年 二 月 六 日

在ブラジル原爆被爆者協会   会長   森 田  隆