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伊勢湾は江戸時代には蜃気楼の名所として有名だったようで、当時の文献や浮世絵など、資料が多く残されています。
伊勢出身である松浦武四郎(現三重県三雲町出身)が小樽の蜃気楼「高島のおばけ」を記した文献(三航蝦夷日誌、西蝦夷日誌)の中に、「高島おばけ」は「我が伊勢のと同じ蜃気楼」であると記述しています。小樽では1998年より前における上位蜃気楼発生の記録は松浦武四郎のもの以外にはありませんでしたが、1998年以降毎年、上位蜃気楼の発生を確認しています。同様に、伊勢湾でも近年における上位蜃気楼の発生を確証できる記録はありませんでした。そこで2000年から当会と四日市市立博物館・小樽市青少年科学技術館との共同研究により、伊勢湾での上位蜃気楼発生を確認するための観測を行いました。その結果、2001年4月6日に、上位蜃気楼が発生していることが確認できたのです。
この観測は、当会と四日市市立博物館・小樽市青少年科学技術館との共同で実施し、四日市港管理組合の協力により実施しました。
四日市市塩浜に設置した蜃気楼観測装置(デジタルカメラ:CASIO QV-2800,QV-8000)
蜃気楼現象による対象物の変化の度合
大:眼視ででもわかる大規模な変化
中:双眼鏡を使うとわかる中程度の変化
小:わかりづらい小規模の変化
(このレベル分けは当方の主観によるものです)
2001(平成13)年に観測された上位蜃気楼発生の記録(2回)
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発生時間 | 14:45-17:00 | |
レベル | 小:わかりづらい小規模の変化 | |
観測場所 | 三重県 四日市市 塩浜 | |
観測方向 | 愛知県 知多市 南浜町 | |
観測手段 | デジタルカメラ無人観測 | |
天気 | 曇 | |
発生時の様子 | とてもわずかな変化。 南岸に前線が停滞し、明け方まで雨。その後気温上昇。 14:45から石油タンク群の高さが少し変化する。15:45には石油タンクの高さの変化が最大となる。実景と比べ、奥の建造物との差に違いがある。17:00まで若干の高さの変化があった。その後暗くなってしまった。 |
発生時間 | 12:30-16:15 | |
レベル | 中:双眼鏡を使うとわかる中程度の変化 | |
観測場所 | 三重県 四日市市 塩浜 | |
観測方向 | 愛知県 知多市 南浜町 | |
観測手段 | デジタルカメラ無人観測 | |
天気 | 晴れ | |
発生時の様子 | 初夏の陽気。気温が高い穏やかな日。 午前中、かすみがかかっていて対岸が見えなかったが、正午過ぎから少しずつ見えるようになる。 12:30から石油タンク群の高さが刻々と変化する。13:00には石油タンクの上位への伸びが最大となった。13:15には石油タンク手前の船が上位に大きく伸びている。14:45には、はっきりとした視界の中、石油タンクの上位への伸びが認められた。 |
1896-2000(平成13)年の約100年間、確証ある観測記録は不明
1896(明治29)年5月(日不詳)に上位蜃気楼観測(富山湾乃蜃気楼より)
発生時間 | 午後2時頃から30〜40分間 |
レベル | 肉眼でわかる |
観測場所 | 三重県 一宮村(現鈴鹿市) |
観測方向 | 三重県朝熊岳 愛知県知多半島 |
過去の蜃気楼に関する記録
「富山湾乃蜃気楼」の蜃気楼に関する記述(三重県四日市)
「西蝦夷日誌」の蜃気楼に関する記述(三重県桑名)
「再航蝦夷日誌」の蜃気楼に関する記述(三重県津・桑名)
「東海道名所図絵」の蜃気楼に関する記述(三重県四日市)
「尾張名所図絵」の蜃気楼に関する記述(愛知県南知多)
「浮世絵」に描かれた蜃気楼(三重県四日市・桑名)