蜃気楼を観測する方法を紹介します

 春から夏にかけて発生する上位蜃気楼は、海上や湖上で年間に数回程度は発生していると考えられます。平年よりも気温が高い日で、風のあまり強くない日に発生する可能性がありますので、そのような日に観察することをおすすめします。発生するための気象条件については現在研究中です。

 冬に発生する上位蜃気楼は、まだ研究が進んでいなくて、発生頻度などはわかりません。ただし、風の弱い晴れた朝で、とても気温が下がるような時の内陸部か氷上で観測されることが多いようです。

 下位蜃気楼は、1年中発生する可能性があります。小規模のを含めれば、年間で100〜200日程度は発生していると考えられれます。秋から春にかけての気温の低い日や、日射のある日ならば観察できる可能性があります。

観測方法の特性
方法 簡単さ 見えやすさ とらえやすさ 総合判定
肉眼で見る
双眼鏡で見る
写真撮影する
ビデオ撮影する
無人観測する ×

それぞれの観察の方法と特性を説明しましょう。
もっとも確実な方法は、蜃気楼がでそうな日に、双眼鏡をもって対岸を観察することです。
事前にその対岸の普段の景色(実景)を確かめておくことが重要です。

もし上位蜃気楼の観測に成功した場合には、北海道・東北蜃気楼研究会にご連絡ください。
 E-mail:shinkirou-north-owner@yahoogroups.jp

・肉眼で見る
 道具を必要としないので簡単ですが、蜃気楼現象は遠方の対象物の変化なので、肉眼では小さな変化としか見えず、わかりずらいでしょう。注意深く観察すればわかるかもしれません。大規模な蜃気楼現象や、比較的近いところの対象物が蜃気楼化している場合にはわかりやすいですが、そのような上位蜃気楼の発生頻度は少ないです。

・双眼鏡で見る
 もっとも簡単で確実な方法です。倍率はあまり高くなくてもよくて、7〜15倍でよいでしょう。倍率が高すぎると手ぶれで見にくくなります。なるべくなら対物レンズ口径の大きな方が、よりたくさんの光を集めるので見やすいです。レンズ口径が30mm以上あればよいでしょう。ただし普段の景色(実景)を知らないと蜃気楼かどうか確信できない場合もあるので、事前に実景を確かめておくことが重要です。記録として残すならばスケッチすることをお勧めします。

・写真撮影する
 望遠レンズのついているカメラが必要です。焦点距離が最低でも300mmは必要でしょう。それ以上ならばより有効です。三脚も必要になります。望遠機能があればコンパクトカメラやデジタルカメラで良いです。一眼レフカメラに望遠レンズを装着するのが望ましいでしょう。望遠レンズを使うか、テレコンバーターを使うと焦点距離が長くなります。一般に焦点距離が長くなると開放f値が大きくなるので、シャッター速度が遅くなってしまいます。そのためフィルムはISO400前後がよいでしょう。撮影した写真は、パソコンの画像処理ソフトでコントラストなどの調整をするのも良い方法です。蜃気楼の写真を比較するために、同じ画角で通常の景色(実景)を撮影しておくと良いでしょう。

撮影した写真の画像処理について

 画像処理前(デジタルカメラ撮影画像オリジナル(画像の上下はカットしてある))

 画像処理後(画像処理ソフトで、レベル補正・明るさ・コントラストを適度に調整)

 画像処理をするとオリジナル画像でははっきりしていなかったものが見えてきます。
 この画像では電柱の左右にも蜃気楼化した構造物が判別できます。

・ビデオ撮影する
 家庭用ビデオカメラにはズーム機能があるので、望遠側で簡単に撮影することができます。変化のある蜃気楼現象をとらえることができれば、おもしろい映像となるでしょう。三脚などで固定した方がよいです。

・(デジタルカメラで)無人観測をする
 上位蜃気楼はいつ発生するかはわからないので、無人で常時記録することにより確実にとらえることができます。ただしそのためには設備と設置場所が必要です。一般的ではありませんが、観測態勢を紹介します。
 インターバル撮影機能と望遠機能のあるデジタルカメラを、窓辺に設置します。観測した画像を後日確認することにより、蜃気楼が発生したかどうかがわかります。デジタルカメラの機種は、CASIO QV-8000(2000年)とCASIO QV-2800(2001年〜)です。焦点距離はいずれも320mm(35mm換算)で、それに1.5倍のコンバージョンレンズを装着しました(35mm換算480mm)。インターバル撮影の間隔はメモリーカードの容量にもよりますが、最長で30分(1日で48枚)が適当です。それ以上の間隔があくと蜃気楼発生を取り逃がす可能性が高くなります。撮影間隔が5分(1日で288枚)だとメモリーカードがすぐにいっぱいになりますが、おもしろい変化を見ることができます。