ん、な馬鹿な
生まれつき、彼はいつも脳天気であった。どんな災難に遭おうともへこたれなかったし、彼自身が災難を災難と感じなかった。
「生きているだけで、僕は幸せだ」
どうしてそんな言葉が彼から生まれるのか、誰もが彼を尊敬のまなざしで見た。彼も結婚し、ますます順風満帆な生活を送った。一体、彼はどんな仕事をしているのであろう。誰もが噂した。
彼は大きな邸宅を建てた。大きな慈善施設やらレジャー施設などなど、何か所も建設し運営した。どれもこれも順調、健全な運営であった。一体、どこから収入を得ているのか、誰もが不思議がった。
やがて、男は2番目、3番目の妻をめとり、功績ばかりではなく、沢山の子孫も作った。
彼の周りには大勢の若い子孫が取り囲んでいた。
「お父さん、いつまでもお元気でいてくださいね」
「ああ、わかっとるよ」
「お父さん、そろそろ、お父さんの仕事が何か、教えてくださいよ」
ほくそ笑みながら彼は手を広げた。今まで何もなかった手の平の上に、1万円札の束が現れた。
「マジシャン」
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