防犯用カメラ
2021年、政府は犯罪防止と取り締まりの強化のため、全ての公共スペースに防犯用カメラ設置を法制化した。
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「俺が何したっていうんだよ」
「おとといの歌舞伎町ガソリンスタンド大爆発事件、知ってるな」
サラリーマン風のMという中年男が、警察署の取調室にいる。取調室と言っても、10メートル四方の部屋の真ん中にある簡素な椅子に座らされているだけである。M以外は部屋に誰もいない。部屋の四方はモニターで囲まれており、そのモニターに巨大な取調官の顔が映し出されている。
「ほれ、今、証拠写真を写すから見てみな」
モニターには煙草を吸っているMがいた。どこかの道を歩きながら吸っている。吸い終わると、煙草を路上に投げ捨てた。
「はい、ここ。分かるだろ? 」
「何だよ、これだけで俺を捕まえたのかあ? 」
「次が問題だ」
Mの捨てた煙草が路上をコロコロ転がっていく。煙草の火は付いていた。それがコロコロ風に吹かれて転がっていく。ガソリンスタンドが映し出された。スタンドでは若い店員がスポーツカーにガソリンを入れている。誰かに呼ばれ、その場を離れた。その瞬間、画面が真っ赤になって消えた。
「これの意味、分かるよね、きみ? 」
「これがなんだって言うんだよ」
「君の煙草の不始末が原因で、ガソリンスタンドは吹き飛んだ。死傷者95名の大惨事だよ」
「えええ、嘘だろ? Mは両手を頭に当てて椅子から滑り落ち、床の上に膝をつき、泣き崩れた」
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二人の取調官がモニターを眺めている。
「警部、ガソリンスタンドに転がっていた煙草のフィルターですが、拡大します。これです、フィルターの根本にseven star
lightの文字が入っています。もう1枚、これはMの吸っていた煙草のフィルターですが、seven star とlightが入っていません」
「それがどうした? 」
「つまり、Mの煙草が原因ではないようですが」
「そっか。じゃ、lightを消しとけ」
「いいんですか」
「ポイ捨てする奴は、誰でもこういう事件を起こす。誰でもいいんだよ、俺たちは、犯人さえ捕まえればな」
「そうですよね。消しておきます」
こうして、警察は防犯用カメラ導入後、犯罪検挙率100パーセントを維持するのであった。
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