明日に向かって
おでこに止まる蠅に気にすることもなく大橋は本を読んでいる。そして、最後のページを読み終えた。
「サトさん、今、ゲゲゲの女房を読んだんだ。こう書いてある。そのうち、何とかなる。
主人公、村井茂の言葉だ。なあ、いいなあ。そう思えば、毎日が元気になる。きょう、駄目でも、明日はいいかも知れない、そう言う。そういう、期待と希望がこの言葉にはあるんだよ。
サトさんも、そう思わんか? 」
大橋は隣で寝転んでいる通称サトさんなる男に声を掛けた。
「んな、そうかもしれんな。明日はな、明日の風が吹く、って言うし。それよか、明日こそは仕事あるといいんだがなあ」
公園で野宿する二人は段ボールにくるまって、何をするでもなくただただ明日を夢見ていた。そのうち、何とかなると。
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