悪童
中学3年生の橘健三は、数人の女子と話し合っている田島敬子の側にそっと近づいていった。敬子の後ろを通り過ぎようとすると、一瞬のうちにかがみ込み、敬子のスカートをさっとめくった。
「きゃー」
「きょうは青の水玉だ! 」
そう叫んだ健三は、教室の外へ一目散に走って逃げた。
「こら、健、待ちなよ! 何てことするのよ! この変体男! 」
金切り声を上げて追ってくる女たちを振り切り、健三は校舎裏まで逃げてきた。後ろを見て誰もいないのを確認すると、コンクリートのたたきの上に寝転がった。
「へ、うるさい女どもだ」
大の字になって空を見上げる。空はどこまでも青く広がり、そこに白い雲がさーと流れていく。その雲の動きと同じに爽やかな風が健三の体を通り過ぎていく。夏が終わり、やがて秋が来る。何をやっているのだろう、と健三は大空を見ながらつぶやいた。
「もう、逃がさないからね。起きなさいよ、健三。絶対、許さないからね! 」
いきなりの大声に驚いた健三は眼を開けた。20人くらいのクラスの女たちに囲まれていた。声の主はすけ番の井田勝美だった。
「あ、そうかい。勝手にほざいていな」
「何言っているのさ。もう、許さないからね。さあ、やっておしまい」
その言葉と同時に健三は手足を数人の女によって押さえ込まれた。
「ふん、そんな細腕で俺にかなうと思っているのか」
健三が力任せに振りほどこうとしたが、さすがに多勢に無勢で、さすがの健三も身動きが取れなかった。井田が腕を組みながら、「お前のパンツも見てやるからな! 」と凄んで言った。
健三は女どもの手によってズボンを下ろされた。そして、その弾みで、パンツまでも下ろされた。健三の突起がぽろんとさらされた。
「きゃー、なにー、いやらしいー」
健三の突起を見た女たちは、目をおおいひるんだ。そのすきに、健三は飛び起きた。近くの女の頬を張り手でたたく。きゃー、という悲鳴を上げて、女たちはちりぢりに逃げていってしまった。なぜか敬子だけが残っていた。
「まだいやがったか」
「健ちゃん、まだ、出ているよ」
「何訳の分からんこといっとるのじゃ! ばっかやろー! 見んじゃない! 」
パンツを上げようとした健三は思いとどまって、「くそー、俺のポコチンなめさせてやるー! 」と、健三は立ち上がり、かがんでみている敬子の前に自分の突起を押し付けようと近づいた。敬子は驚いて尻餅をついた。
「きゃー、変体健三! 」
と、叫びながら後ろへずりずりと後ずさりした。
「待ちやがれ」
健三が歩き出そうとすると、ズボンが足に絡んでその場につんのめった。それを見た敬子は笑いながら、「お尻もかわいいね」と言った。しかし、健三はその場に伏せたまま、動かなかった。
「健ちゃん、大丈夫なの? 」
一旦は逃げ出した敬子が心配になって顔を近づけてきた。健三は近づいた敬子の足首をさっとつかんだ。「頭きたー」と言いつつ、力任せに敬子の足首を持ち上げて倒してしまった。敬子は悲鳴を上げながら倒れた。健三は敬子のスカートをまくり、水玉のパンツをつかんだ。
「お前のも見せろ! 」
敬子は震えていた。そして顔を両手で覆いながら泣き出してしまった。
「泣いたって遅いぞ。お前のも見るんだ」
健三は敬子のパンツに手を掛けた。敬子はしっかりと足を丸めて小さくなった。
「ひどいよ、健ちゃん」
敬子は小さな涙声で囁いた。
「俺さ、どうして、こんなことをするんだろ? 」
健三は敬子のスカートをそっと下ろした。敬子が目を開けると、健三はもういなかった。
*
翌日、敬子が学校へ来たら、健三は教室にいなかった。担任の倉田先生がやってくると、こう言った。
「橘健三君は突然のことですが、別の学校へ行くことになりました。もともと問題の多い子で、みんなも嫌な思いをしていたと思います。1ヶ月前からご両親と相談して施設に入ることになりました。お別れはしたくない、と本人の希望でした」
問題児、橘健三は突然消えた。椅子に座っていた敬子はスカートをぐっと押さえた。
「見せてあげれば良かったかな」
そう心で思いながら「ばーか、そんあなわけないだろ」と言いながら、一人笑った。しかし、憎めない男だった、とも思っていた。
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