引力 N博士の研究室に、高田助手が駆け込んできた。 「先生、大発明です! 」 N博士はまたか、と顔をしかめた。いつもくだらない発明をする高田助手につくづく嫌気がさしていた。 「今度はどんな発明をしたのかね? 高田くん」 「はい、引力を寄せ付けない薬です」 N博士はしばらく沈黙した。 「ほほう、君にしてはまともなものを作ったではないか」 「はい、これさえあれば、もう高所での作業をしていても、落下すると言う危険がなくなります」 「おお、いいじゃないか。ところで実験はしたのかね」 「はい、これから僕が試してみますので」 高田助手はポケットからびんを取り出すと、一粒だけ薬を取り出し、飲み込んだ。彼の体は何ともなかった。彼はそばの椅子に乗ると、空中にジャンプした。彼の体は中に浮いたまま静止していた。 「おお! 高田くん、これは大発明だ、ノーベル賞ものだぞ! 」 しばらくして、高田の体は床にすとんと着地した。 「ただ、一つ欠点があります」 「ほお、何かね? 」 「薬の効果が15秒しか持ちません。これを維持するためには常に薬を飲まなくてはなりません」 「なんだ、飲めばいいことではないか」 「はい、常に飲んでいると、何も作業ができないのが欠点です」
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