幻想
「先生、最近変な夢を見るんです」 「ほ、どんな夢ですか? 」 「私は今寝ているんです。それなのにこうやって先生と話しているんです」 「はあは、夢ではありませんよ。現実に私と話しています」 「えっ、これは夢ではないのですか? 」 「そうです。現実です。夢なんかではありません」 「では、先生は本当に今いるのですか? 」 「もちろんです」 「証拠はありますか? 」 「では、私があなたの頬をつねります。すると、あなたは痛い。だから、現実で夢なんかではありません」 「なるほど、ではつねって下さい」 「では、つねります」 医者はこぶしをつくると、総一郎の頬にげんこつをぶちかました。総一郎は絶叫し気絶した。 「総一郎、起きなさい! 学校に遅れるわよ」 「あ、また変な夢を見た」 「どんな夢なの? 」 「それがね…… かくかくしかじかなんだ」 「まあ、大変。お医者さんに見てもらったほうがいいわ」 総一郎は近所のクリニックへ向かう。診察室に入る。 「どうなさいました? 」 「それが、最近変な夢を見るんです」 「どんな夢ですか? 」 「あれ、さっきと同じですよ。きっと、今、寝ているんです。それなのにこうして先生と話している」 「いや、夢ではありませんよ。私はこうしていますから」 「え、これは夢ではないのですか? 」 「そうです」 「では、先生は本当の先生ですか? 」 「もちろんです」 「なんかさっきと同じだな。証拠はありますか? 」 「では、私があなたの頬を蹴飛ばします。すると痛い。だから現実です」 「えっ、さっきと少し違います。蹴るのは止めてください。さっきはつねるといって殴ったでしょ? とても痛かったです」 「はあは、あなた記憶力がいいですね。夢は普通覚えていないでしょ」 医者は片足を振り上げるなり、総一郎の頬に前蹴りをくらわした。総一郎は悲鳴を上げ気絶した。 「総一郎、起きなさい。会社に遅れるわよ」 「えっ、さっきは学校に遅れるって言ってなかった? 」 「何を寝ぼけてるの? 」 「実は変な夢を見たんだ」 「へえ、どんな夢? 」 「それがかくかくしかじかなんだ」 「まあ、お医者さんに行って見てもらったほうがいいわよ」 「あー、こんなことならずっと寝てるよ」 |