営業マン

 営業マン田島健次郎は疲れきっていた。
(きょうもだめだなあ……
 健次郎は重いアタッシュケースを投げ出したくなった。
 数メートル先に、マグドがあった。
(コーヒーでも飲んで休んでいくか)
 健次郎は玄関のドアを押して入った。
「いらっしゃいませ」
 カウンターの向こうで20歳くらいのマグドガールが笑顔をよこした。
「ご注文は何になさいますか? 」
「アイスコーヒーね」
「はい、ダブルバーガー1つに、アイスコーヒー1つですね」
「え、アイスコーヒー1つだけでいいんだ」
「かしこまりました。780円になります」
「きみ、アイスコーヒーだけだって言ってるだろ」
 女はせっせとダブルバーガーをトレーに乗せた。
「お待たせしました」
 健次郎は仕方なく780円を出した。
 健次郎はトレーを持って席につくと、重いアタッシュケースを開けた。中にはダブルバーガーがぎっしりと詰まっていた。
(また、買わされちゃったよ)

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