二つの雪だるま
3年生のたけしくんがつくった雪だるまが、にわにぽつんとたっていました。 たけしくんには、きょうだいがいません。だから、たけしくんは、いっしょにあそべるおとうとがほしいな、といつもおもっていました。 「ねえ、あそぼうよ。ゆきおちゃん」 なまえをつけた雪だるまに、はなしかけますが、なにもこたえてくれません。たけしくんは、がっかりしました。
よるおそくのことでした。あいかわらず、くらい空からは、雪がふわりふわりとふっていました。そのとき、とつぜん、そらからながれぼしがおちてきて、ゆきおにあたりました。ふしぎなことに、ゆきおにこころがうまれました。 「あ、まわりがみえるよ。きれいだなあ」 目をひらいたゆきおは、じぶんのからだが、まわりとおなじ雪でできていることにおどろきました。 「ぼくのからだって、はれたらとけちゃうのかなあ。せっかくつくってもらったのに、とけたらいやだなあ…」 雪だるまは、いつまでも、お日さまがでないことを、いのりました。 つぎの日も、雪はあいかわらずふっていました。お日さまは、くらいくもにかくれてみえません。 「わあーい、きょうも雪だあ!」 雪をみたたけしくんは、とびはねてよろこびました。そして、ゆきおのとなりに、もうひとつおなじ大きさの雪だるまをつくりはじめました。たけしくんは、雪だるまがひとりぼっちで、さびしいだろう、とおもったのです。もうすこしでかんせいというところで、おかあさんのよぶこえがしました。 「たけしー!ごはんですよー」 「はーい」 たけしくんは、あわててへんじをすると、かじかんだ手に、いきをふきかけながら、いそいで家にはいっていきました。 「どうもありがとう」 ひとりでさびしかったゆきおは、たけしくんにおれいをいいました。 ゆきおはくびをうごかすことができないので、となりの雪だるまをみることができません。目を、せいいっぱい、となりにむけて、いいました。 「やあ、こんにちは。ぼく、ゆきお。よろしくね」 けれど、となりの雪だるまは、なにもこたえません。ゆきおは、おこりました。 「なに、だまってるのさ。ふん」 よるになって、雪はいつしかやんでしまいました。そらには、月がでています。ゆきおの目から、しずくがぽとぽととおちました。 「これってなみだなの? あした、はれたら、ぼく、やっぱり、とけて、いのちがなくなってしまうのかな…」 ゆきおは、よぞらにきらきらひかるほしをみあげて、かなしくなりました。 つぎの日、ひがしのそらに、お日さまが三日ぶりにかおをだして、ゆきおのからだをてらしました。 「わあ!お日さまだあ。ぼく、こわいよお。でも、あたたかくて、なんてきもちがいいんだろ」 まるで、お日さまが、ゆきおのかなしい心を、あたためてくれるようでした。 「もうすぐ、とけちゃう」 ゆきおは、となりの雪だるまと、なんとかなかよしになりたいとおもいました。 「おはよう。きみはどんな子なの?」 となりの雪だるまは、やっぱり、なにもこたえません。お日さまが、ゆきおのまうえにきたとき、からだが、すこしずつ、とけはじめました。やがて、ゆきおのあたまが、ことんと、ころがりおちました。ゆきおのあたまは、まだみたことのない、となりの雪だるまのそばにころがっていきました。 となりの雪だるまには、口がありませんでした。あわててつくったたけしくんが、口をつけわすれたのです。とけて、となりの雪だるまのくびも、ころがっておちました。ゆきおのかおのそばまでころがってくると、コツンとあたりました。 「やあ」 ゆきおは、にっこりわらいました。そして、ふたつの雪だるまは、とけてひとつのみずになりました。
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