Vapor Trails

Released 05/2002

One Little Victory Secret Touch
Ceiling Unlimited Earthshine
Ghost Rider Sweet Miracle
Peaceable Kingdom Nocturne
The Stars Look Down Freeze
How It Is Out Of The Cradle
Vapor Trail


VT解説  VT Memorandum   Making VT  VT Tour



ワン・リトル・ヴィクトリー

うぶで純真に見えるにためには
ある程度(本物の)純真さがいる
そういうふりをするためには
ある程度の想像力が必要

光や熱の強さに
ある程度までは身をゆだねよう
敗北の危険を冒すことを恐れないこと
その時に感じる、満ち足りた高揚感

祝おう、その瞬間を
新たな勝利を目指すチャンスへと
新たな得点を刻むチャンスへと
変わりゆく、その瞬間を

機がどのくらい熟しているか
それは、程度の違い
ほんのささやかな勝利で
心は自由に解き放たれる

ほんのささやかな勝利
でもそれは、最も素晴らしいもの
小さな勝利だけれど

新しい方向へ向かうためには
ある程度の正義観念と
ある程度の強さ
ある程度の決心が要る

生命や愛の強さには
ある程度の抵抗がつきまとう
克服しようとする意志の力をもつためには
ある程度の忍耐が必要

ひとつの小さな勝利
ひとつのささやかな勝利
ほんの小さな勝利

新たな勝利を目指すチャンスへと
新たな得点を刻むチャンスへと
変わりゆくその瞬間に、祝福を

機がどのくらい熟しているかは
程度の違いに過ぎない
心が解き放たれる
それは、小さな勝利の瞬間

できうる限り素晴らしい
ほんの小さな勝利だけれど
あたうる限り偉大な
小さな勝利

ほんのささやかな勝利だけれど
ほんの小さな勝利だけれど
一つの小さな勝利



Knight Of The Wand (棒のナイト)

ワンド(棒)のナイトは、「行動力」「若さ」「すばやい決断」などの意味があります。
「機を捕らえて、すかさず行動に移す」ということかもしれません。
「速さ」と「行動力」を象徴するもの、と言っていいかもしれません。
「Peaceable Kingdom」で、「時間に対抗するワンドのナイト」という一節が出てきますが、これも「ワンド(棒)のナイト」が象徴する、「すばやさ」に対応しているのでしょう。
「もたもたしていないで、チャンスを見つけたら、すばやく行動し、勝利をつかめ」と言う感じなのだと、思います。

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シーリング・アンリミテッド

真夏の通りで汗ばむのは
熱気ではなく、
その非情さのせいだ
マシンガンのように、
さまざまな映像が流れすぎていく
まるで、「鏡の国の悪意マリス」のように

真の冒涜を愕然と見つめる、そのまなざしは
敗けたというより、屈服のように感じられる
もしも文化が、思考する人々の生んだ呪いだとしたら
もし文化が、理性に富んだ人々がかけた呪いなのなら

空のように果てしなく
こんなにも広い世界は
巡っていく、巡りゆく、繰り返し

思いは果てしなく広がり
なお、満ち足りることはない
変化は、決して終わらない
終わりはしない

悲劇の仮面で装いを凝らし
真実の狂気を映した、うつろな笑み
それは怠惰な心と手により生み出された
一部の隙もないプログラム

そう言ったとおりだろう
でなければ、少なくとも僕なら見栄を張って
喜劇の仮面で装いを凝らす
もしも笑いが、溺れるものの藁なのならば
もし笑いが、溺れるものの藁だとしたら

視界をさえぎるものは、何もない
窓は大きく開いている
見てごらん、何度も、見てごらん

感情に限りはない
目指すものを見つめつづけて
変化は決して終わらない
終わることはない

古えの河のように、曲がりくねりながら
今、再びその時が来る

希望は、終わりのない河のようなもの
さあ、今、再び時がめぐり来る
さあ、今がその時だ



 The Star(星)

このカードは、「希望」を象徴します。「希望の星」と言う言葉からもストレートに連想されるように、星は希望の象徴でもあるからです。同時に、まだ手の届かないものであり、いささか まだ現実離れしているものでありますが、実現のために着実な努力が注がれれば、そこに可能性が 生まれるという含みもあるそうです。

星が輝くのは夜です。闇のなかに輝く星は、困難な状況の中に輝く希望を象徴しているのでしょう。

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ゴースト・ライダー

幻影や亡霊を皆、取りまとめ
その見えない重荷を、肩に背負い
北へ、西へと走りつづけて行け
何かに取り憑かれたように
荒野の道を進みつづけるのだ
さまよえる亡霊ゴーストライダーのように

幻影や亡霊を皆、引き連れて行け
苛烈な風の中を、荒れ狂った空の下を
砂漠から山地まで
低地の底から、高地の頂まで
ゴーストライダーのように

北へ、西へと走り続け
ついで向きを変え、南へ、東へと
あらゆる美を見せてくれ
だが、どこにも平和など、訪れはしない
幻影のライダーと化した今は

影は、来し方に覆い被さり
影は、行く手に覆い被さる
今、引きとめるものなど、何もありはしない

来し彼方の道は、影の中に沈み
道の行く手は、影の中に沈む
今、何一つとして、止められるものはない

鏡の中に昇る朝日が
目には見えることのない重荷を、光の元に浮かび上がらせる
名状できない探索の旅を続け
憑かれたように、荒野の道を走り続ける
ゴーストライダーのように

夜に負けまいと競う
逃避した芸術家のように
光に向かって走って行く
放浪の隠者のように
白砂の地(ホワイトサンド)から
渓谷の地(キャニオンランズ)
セコイヤの生い茂る地(カリフォルニア)
そして不毛の地(バレンランズ)へと

来し方に、日は昇り
行く手に、日は沈む
何ものも、止められはしない
今引きとめるものなど、何もありはしない

道の後方は、影の中に沈み
行く道は、影の中に沈む
今、何一つとして、止められるものはない



 Wheel Of Fortune (運命の輪)

 このカードは、名のごとく、回り続ける運命をあらわします。曼荼羅的なイメージも強く持ちます。
 おもに、突発的な出来事(ただしTowerと違って、災難とは限らない) 運命の転換期をあらわすこともあります。
 タロットは皆そうなのですが、このカードは特に抽象的なので、出た局面によって、意味はさまざまに変わります。
 でもその基本的な意味は、「運命とは、常に移り変わるものだ。良い時もある。悪い時もある。幸運が永久に続くということはないし、 不運のみがずっと続くということもない。常に移り変わっていくものだ」と、いうものです。

 「Ghost Rider」と、「Wheel Of Fortune」――この組み合わせから感じ取れるのは、絶望ではなく、 「運命が再び上昇し始めるのを待つ」という思いでしょう。それが、救いに感じられます。また、「回る(車)輪」 は、バイクで走りつづけることそのもののイメージも、持つような気がします。

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ピーサブル・キングダム

晴れ渡った空に、波紋が広がっていく

道理に叶った見解を、僕らが語り合い、
分かち合っている、その間もずっと、
膨大な数の他の声が、別のニュースを広めている
理解しようと勤めながら、僕らが生きている、その間にも
自らの要求を通すために
数えきれないほど別の選択肢が生み出されていく

平和な王国を築くために、話し合おう
恐れのない時代を作るために、話し合おう
ぜひ話を聞いてくれたらと、僕らが願う人たちは
決して耳を傾けてはくれないけれど

「正義」に対する「吊るされた男」
「ワンドの騎士」に対する、時間
王国に抗する「剣」
「塔」に向けられる、「時」

僕らがカードをシャッフルし、
すべての持ち札を展開しているその間に、
膨大な数のディーラーたちが、
僕らの監視を潜り抜けていってしまう
僕らみながそこから何かを学べますようにと、
願い、祈っているその間にも、
世界の大多数の教師たちは、焼き払うことを教えている

平和な王国を、夢に見よう
戦争のない時代を、夢に見よう
ぜひ聞いて欲しいと僕らが願っている人々も、
かつては耳を傾けてくれたのに

澄み切った空に、衝撃波が広がっていく
晴れ渡った空に、波紋が広がっていく

「隠者」に対する「恋人たち」
それとも、「悪魔」に対抗する「愚者」
王国に抗する「剣」
支配に対する、「運命の輪」

暗闇を照らすかがり火になろうと、
僕らが熱くなっている、その間もずっと
莫大な数の炎が、火花を散らしながら、発射されていく
その一つ一つの火花は、欲望の燃えがらとなって漂う
地上に落ちて、また新たな炎を、燃え上がらせようと

天使が、故郷へ向かって飛んでいく
晴れ渡った空に、波紋が広がっていく



 The Tower (塔)

破壊、事故、突発的な災難を象徴するカードで、ある意味「悪魔」や「死神」より悪い、タロット中1,2を争うバッド・カードです。衝突、別れ、過激な方法、革命、という意味合いも あるそうです。
絵柄のモデルは、聖書の「バベルの塔の崩壊」であると言われます。Neilはアルバム・バイオの中で、「WTCの崩壊と、身の毛のよだつような相似性を感じた」と書いていました。
たしかに、恐ろしいほど似ています。人間の驕りが神の怒りを招き、崩壊したバベルの塔。 テロで崩壊したビル。テロリストたちは同じような象徴を意図しようとしたのでしょうか。

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ザ・スターズ・ルック・ダウン

車輪に止まったハエ(うぬぼれや)のように、言ってはいないかい?
「僕らは、なんてすごい埃を巻き上げているんだろう」と。
自分も一役買っているんじゃないかと、思い違いをしていないか。
自らの夢の世界を、誇りを持って眺めることができたのは
まるで人生を隔てたように遠い昔のように、思えるかもしれないね

どう言う意味なんだ――?
星々が見下ろしている
何をしようとしている――?
なのに、星は見下ろしているだけ
僕は何か言ったんだろうか――?
それでも、星々は見おろしつづける

迷路を走るねずみのように、言ってはいないかい?
「見ていて、自分で方向を決めるから」と。
道は自然に曲がりくねっているものだと、思いこんではいないか
道に迷ってしまったとわかったら、君は驚き、混乱するだろうか?
今日を精一杯生きているのか
それとも、ただ何も考えず、勢いだけで流されていると感じているのか

どう言う意味なんだ――?
星々は、そんな君をじっと見ている
何をしようとしている
でも、星は地上を見ているだけ
僕が、何か言ったんだろうか?
ただ、星は見下ろしている
何か僕にして欲しいことはないかい?
その間も、星々はただ見下ろしている

星は、地上を見ているだけ



 The Chariot (戦車)

このカードは突き進む力、解決を得ようとがんばる意思を象徴します。
自分で行き先をコントロールしようとしている、戦車の上の若者を表しているのでしょう。 しかしその戦車を引く2頭のスフィンクスは、「誰にもわからない運命」の象徴なのだそうです。 そして、黒い方は欲望、闇の力、白い方は高潔な意思、光の力を象徴しているそうです。
このカードは正位置に出ると、「たゆまずに続ければ、ぎりぎりのところで克服できる。 最後には勝つ」と言う意味で、逆位置は、その運命に力を制御できず、トラブルや暴走などを 意味するそうです。

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ハウ・イット・イズ

今のところ、知っている限りでは
誰でも、ちょっとした落とし穴に、はまることがあるだろう
明るい明日を信じていても
それは、諦めへと変わってしまう
そうしたものさ――
そうなってしまうものさ

厚い雲に覆われた日には、
もう二度と太陽が見られないように感じ
その日がまだ可能性を持っていると
感じることもできなくなってしまう
その瞬間の中に凍り付いて
想像力は、まったくなくなってしまう
そうあるもの(現実)と、そうあるべきもの(理想)との狭間で

自分の世界にうんざりしてしまった時
誰もが、ちょっとした罠に、はまってしまうことがあるだろう
日々の欲求不満に阻まれて
その先を見とおすことが、できない時もある
そうしたものさ――
そうなってしまうものさ

厚い雲に覆われた、そんな日には
もう二度と太陽が顔を出さないように感じ
何も確実なものなどないような、そんな気がしてしまう
その瞬間、かっとのぼせ上がり
絶望感に捕らわれてしまう
そうあるものと、そうあるべきものの狭間で

階段に足をかけ
車輪を肩で押して
気にするなと、自分に命令はできない
どう感じるかは、自分では決められない
そういうものなんだ
そういうものなんだよ

また、雲に覆われた日がやってくると
もう二度と太陽が見られないように感じ
その日がまだ可能性を持っていると
感じることもできなくなってしまう
その瞬間の中に凍り付いて
想像力は、まったく失われてしまう
現実と、理想との狭間で



Hanged Man 吊るされた人

 吊るし人、でもわかるのですが、「吊るされた人」のほうが誤解がないですね。「刑死者」とするカードもありますが、 図柄で見る限り 死んでないようですので、ちょっとニュアンス的にはピンと来ない感じもします。
 意味的には、自己犠牲、身動きが取れないこと、試練の時という見方が、大勢です。「Freeze」のキーカードである 「剣の8」と、意味的に似かよる部分がありますが、違いは、たぶんに「吊るされ人」の方が、運命的なものとか、自己犠牲 的な感覚があるのに対して、「剣の8」の方は、自分からいろいろなしがらみに縛られている、という意味合いがある。 そんなニュアンスの違いがある感じです。
 吊るされている人の顔は、苦しそうではなく、頭に後光さえさしていることから、「試練の中から、教訓を得る。 真理を見つけだす」という意味に取る解釈もあります。

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ヴェイパー・トレイル

(飛行機が)成層圏を飛んでいくと
その軌跡は凝縮され
細く白い帯となる。
太陽は暗黒と化し
世界は灰色に変わってゆく。
夜空の星は、すべて輝きを失くし
海は干上がり、消えてゆく。

地平線から、もう一つの地平線へと
風の中に刻まれた記憶は
こぼれて消えてゆく、砂時計のように
一粒、また、一粒と。
飲み込まれてゆく
ハリケーンの中、上げる声のように。

飛行機雲となって

大気の状態が変わると
やがて、はかなく消えてゆく。
薄れていく過去をつなぎとめていた記憶が
少しづつ気化してゆく。
鳥のさえずりは、ことごとく途絶え
すべてを凍らせる霜の中、沈黙している。
森はみな、燃えて灰と化し
すべては失われてゆく。

地平線から、空を横切り、地平線の彼方へと
風とともに刻まれた記憶は
流れて消えてゆく
雨の中に残された足跡のように。
かき消されてゆく
ハリケーンの中、呼ぶ声のように。

飛行機雲となって

飛行機雲になって



Six Of Sword (剣の6)

 剣の6は、「困難からの旅立ち」「希望を求めて出て行く」「今までの世界からの脱出」という意味を持ちます。
 絶望に打ちひしがれたように見える親子連れを乗せて、船出するその絵柄が象徴する通りです。手前の波は高く、 背を丸めた後姿とあいまって、過去の苦難を示し、しかし行く手の波は穏やかなところから、未来は決して暗く ないことを表している、という解釈ができるそうです。
 希望を感じさせるカードですが、船の中に突き刺さった剣は、 心の重荷が決してなくなりはしないことを、そして行く手にはなお、一抹の不安も残されていることをも、 示しているとも思えます。

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シークレット・タッチ

出ていく道は、入ってくる道
出づる道は、入り来る道なり

現実に感じられない
天気や、風向き
日の出や月齢、そういったものが。
現実感がわかない
愛にあふれた地に、生きているのだということに
夜が生命を持ち
そして真昼に暗闇が訪れたことに

鎖は、決して断ち切れることはない
痛みの伴わぬ愛など、決してありえはしない
優しい手よ
密やかに、心に触れてくる

出ていく道は、入ってくる道
出る道は、入る道となる

ズレている
僕の反応とリズムが
ずっと続いていくことと、
砕け散り、終わってしまうことが。
かみ合わない
今生きている場所にある愛が
優しい手が、心にそっと触れてくる

優しい手、心に神秘の接触を
癒しの手、密やかに心に触れてくる

鎖を断ちきることは、決してできはしない
生命とは、ずっと生き続けていく、その力



Hermit 隠者

 隠者のカードは、智恵、英知、孤独、世俗からの超越などの意味があるようです。
 老人が捧げ持つランプは、智恵の光の象徴であるとされています。また、嵐の中で、小さなランプの光を守っているというユングの夢に出てきたような、「自我の光」と見る解釈もあるようです。
 隠者とは、世捨て人であり、世間から自らを切り離し、孤独の中に身を置きながら、 真理を捜し求める、そういうイメージなのでしょう。
「Out Of Touch〜」のフレーズは、この、「隠者」の世俗や現実から切り離された感覚を、 「The Way Out Is The Way In」と言うマントラ(格言めいた言葉)や、「Secret Touch Of  The Heart」という感覚が、ランプの光(英知、もしくは真理)に対応している印象を、個人的には 受けています。

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アースシャイン

月はほっそりとした三日月
ちょうど良い角度にある
そんな夜に

地球からの冷光ルミネセンスに照らされて
ほのかに輝く円が見える

地球照 (アースシャイン)
夜空の光明
目を上げると、地球照が見える
アースシャイン
手の届かぬ宝石
その地球照の高みまで上がれたら
そんな夢を抱いて

夕闇の空 高く漂っている
僕自身のかすかな投影
それは、誰かの目に映る僕の姿のような
色あせた複製

地球照 (アースシャイン)
君が手を差し伸べる
無数のダイアモンドのような
満天の星空に浮かぶ
地球照 (アースシャイン)

照り返す光は
新たな目にも届く
そして月は、愛しい人の物語を語る

借り物に過ぎない僕の表情も
三度目の照り返しに過ぎない優雅さも
ただ君の光輝を浴びてのみ、輝ける

地球照 (アースシャイン)
君はいまだ、手の届かぬ彼方
アースシャイン、
その高みまで上がることを、夢みながら



 Lovers (恋人たち)

 このカードは、文字通り「恋愛関係にある二人」「恋物語」のイメージです。
 良い意味のカードなのですが、「(若き日の)華やかな恋」と同時に、「愛のはかなさ」という面も持ち、占いをする場合は出た局面や他のカードの具合を見て、 そちらの判断をする場合もあるそうです。
 恋人たちを見守る天使は、「祝福」「精神性」「プラトニック」を象徴することがあります。 (ただ、カードの種類によっては、描かれていません。)

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スィート・ミラクル

僕は、水の上を歩んでいたのではなく
岩礁の上に佇んでいた
やがて、潮が押し寄せてきて
僕は水面下深くへ、のみこまれていった
すべては跡形もなく、なくなってしまった
希望など、何もなかった
ひとかけらの希望すら、なかった

ああ、甘美な奇跡
おお、愛しい奇跡
ああ、美しい奇跡よ

僕は、天使らとともに歩んでいたのではなく
自分自身に向かって、語り続けていた
水面へと浮かび上がり
激しい憤りを感じていた
真っ暗な夜に
星一つ、見えない夜に

ああ、甘美な奇跡
おお、愛しい奇跡よ
それは、美しい愛の奇跡

ああ、救いはあるのだろうか――
おお、救い主よ――
ああ、救いがやってくる――

僕は、魔法の力を求めて、祈ってはいなかった
僕は、身を隠そうとしていた
何一つ視界をさえぎるものもない場所で。
水面から舞い上がり
光の中へと、飛んで行こう
光の只中へと

ああ、甘美な奇跡よ
ああ、美しい奇跡よ
ああ、奇跡のような、かけがえのない
愛しい人よ



Ace Of Cup (聖杯のエース)

 聖杯のエースは、一般には「愛の始まり」を、あらわします。聖杯のカードは、「水」「感情」 を象徴し、一は「始まり」をあらわすものです。
図柄の通り、カップから水(感情)があふれている様子を、高まる恋愛感情の象徴と見るのでしょう。
始まりから、一足飛びに順調な愛の進展を経て、「結婚」「愛の成就」と見る読み方もあります。
同時に、カップからあふれる感情は、非常な繊細さ、美的感覚の鋭敏さ、感傷、有頂天などを 暗示する場合もあります。

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ノクターン

僕は、夢を見ていたのだろうか?
それとも、夢に取りつかれてしまったのだろうか?

夜の海へと、船出しよう
記憶も欲望も、一切持たずに。
コンパスも海図もないまま、漂っていく
位置感覚も、失って

幻想の中を飛んで行くと
彼方から聞こえる声が、聖歌隊のように響き *
僕の無意識の領域を
心の中に隠された部分を
光のもとに浮かび上がらせる

夢――それは、はかない狂気
夢――それは、荒野に響く声
夢――それは、無意識からの啓示
朝がやってきて、告げる
答えは、イエスと

僕は夢を見ていたのだろうか
それとも、今の僕が夢なのだろうか

暗い鏡の中の世界を、浮遊していくと
深い影が映る
でも、それは見せかけの影
舞い上がっていく
高さの感覚さえ、失くし
驚きも、恐れも感じることなく

眠りについた目の
閉じられた帳の向こうに広がる幻想の野に
点在する象徴たち
そして目覚めた、その瞬間に
新たな夢の世界が、立ち現れる

夢――ひとときの狂気
夢――荒野を歩む
夢――無意識が再構築せしめるもの
朝は告げる、答えはイエスと

* 歌詞カードでは、「signal fire」でしたが、rush.comの「Vapor Trail Contest」では 「sing in choirs」となっていました。歌も、確かにそう聞こえるので、それに準じて訳しました。


Moon (月)

 月のカードは、一般的には、「不安、迷い、あいまいさ」と言う象徴があります。
無意識の領域をあらわす、という読み方もあります。いろいろな感情が入り混じって、混沌たる状態 だけれど、はっきり意識にのぼらせて考えることができない、そんな心理を表しているのかもしれません。
その背後にあるのは、不安定さ、確信のなさ、といったもので、それは月がさまざまに形を変え、安定 していないところから来ているのだという解説も、ありました。
星占いでは、月は秘められた感情や叙情性をつかさどります。その辺の含みも、あるかもしれません。

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フリーズ(第4部「恐怖」)

夜明けの薄明かりの中
街は身を屈める、怒りを帯びて
太陽は、まだ半ば身を隠し
夜はなお、脅威をはらむ

こだまや影の渦巻く、暗闇の通りを
息を詰めて、そっと進んで行くと
何かが、背後で動く気配がして
僕の手のひらは、じっとりと汗ばみ始める

時に、僕は(恐怖に)凍りつく――(救いの)光が差し染めるまで
逃げ去ってしまうこともある――夜の只中へと
時に、僕は戦いを挑む――暗黒に立ち向かおうと
僕が間違っている時もある――正しい時もある

バネのように、飛びあがり、
ヘッドライトの中に浮かび上がった生き物のように
自暴自棄のパニックに捕らわれるのだろうか。
それとも、盲目的な激情の昂まりに。
追い詰められた獣のように、
それとも、勝利を手にしようとしている英雄のように

脅威が威嚇をはらみ、迫ってくる
そして僕は、影の只中に凍りつく
逃げる心積もりも、していない
戦う覚悟もない

理性を保っていられるだろう
(逃げるという)反射行動に屈するのかもしれないが。
僕は自分の本能を信頼しよう
自らの恐怖に、屈してしまうのかもしれないが。

時に、僕らは凍りつく――光が訪れるまで
僕らが間違っていることもある――正しいこともある
時に、僕らは戦いを挑む――暗闇に立ち向かって
飛びこんでしまうこともある――夜の闇の中へと

身体中の血は、冷たくなり
心は、夜の闇へと沈んでいく
自暴自棄のパニックが支配する、暗い夜へと。
それとも、盲目的な激情の、昂まりに身を任せて。
追い詰められた獣のように、
それとも、勝利を収めつつある英雄のように。

時に、僕は(恐怖に)凍りつき
時に、僕は戦いを挑む
時には、逃げて行くこともある
夜の闇の中へと



Eight Of Sword(剣の8)

 剣の8は、束縛、苦難、行き詰まり、孤立、といった意味があるようです。
 縛られ、剣に囲まれ、がんじがらめにされている、というこの絵柄が象徴する通り、 さまざまなしがらみや恐れ、中傷等の障害を受けて、自分でどう対処するべきかわからなくなり、 なすすべもなく立ちつくすのみ、という意味合いが強いカードです。
 曲タイトルの「Freeze」は、まさにこの状態かもしれません。
タロットは正位置と逆位置で、まったく意味が異なりますが、(逆位置を取らないやり方も、あるそうです) 剣の8の逆位置は、そう言ったしがらみや呪縛からの解放、という意味合いを持ちます。解放されたものの、先行きは 未知数の危うさも、付きまとっているそうです。
 縛られたままの状態か、解放されるか――この曲は、そのあたりを象徴しているように思われます。

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アウト・オヴ・ザ・クレイドル

それは場所ではなく
憧れなんだ
競争ではなく、
旅なんだ

それは活動ではなく
引きつける力なんだ
スタイルではなく、
行動なんだ

それは、目覚めている時に見る夢
色鮮やかに咲き誇る花
それは、とびきり寛大な贈り物
さまざまな名で呼ばれる力

エネルギーの高揚、
火花のようにはじけるインスピレーション
愛の息吹は、電流となって駆け巡る
時は、からかうようにさえずり続けながら飛んで行く
鳥のようなものかもしれない
さあ、絶え間なく揺れつづけるゆりかごから、今外へ飛び出して
終わることなく、揺れロックしつづけよう

手が、ゆりかごを揺り動かす
行動が、空を揺り動かす

それは狂気の淵で保つ分別
ナイフの刃の上で取るバランス
それは、悲しみの淵からの微笑み
生死ぎりぎりの淵で踊るダンス

ロックは、決して終わらない



The Fool 愚者

 このカードは、どこにも属さない、ジョーカー的な意味合いを持ちます。(だから0番)
 愚者とは、文字通り愚かな人なのですが、世間の常識や慣習、価値観に縛られない自由をも 象徴しているのだそうです。意味的には、解放、なにものにも縛られないこと、自由、放浪という意味合いが強いそうですが、 しかし一歩踏み出せば崖に転落するという絵柄が示すように、それなりのリスクは付きまとうのです。
 愚者とは、「永遠の少年」のことだ、と言う解釈をする人もいます。大人になっても、いつまでも心は少年のまま、ピュアな 思いを抱いて行動する、しかし世間知らずで、現実には転落の危機も付きまとう、そんなイメージでしょう。
 この曲にこのカード、非常にわかりやすいと私的には思います。ピュアな情熱に動かされて、Endlessly Rocking、 「永遠の少年」、自由な魂を持つ「愚者」の具現化ではないでしょうか。

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