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月村了衛の本棚

  1. 機龍警察
  2. 機龍警察 自爆条項
  3. 機龍警察 暗黒市場
  4. 機龍警察 未亡旅団
  5. 機龍警察 火宅
  6. 土漠の花
  7. 槐
  8. 影の中の影
  9. ガンルージュ
  10. 追想の探偵
  11. 機龍警察 狼眼殺手
  12. 東京輪舞
  13. 暗鬼夜行
  14. 白日
  15. 非弁護人
  16. 機龍警察 白骨街道
  17. ビタートラップ
  18. 十三夜の焔
  19. 香港警察東京分室
  20. 虚の伽藍
  21. おぼろ迷宮
  22. 普通の底
  23. 機龍警察 漆黒社会

機龍警察  ☆ ハヤカワ文庫
(ちょっとネタばれ)
 大量破壊兵器の衰退に伴い台頭してきた近接戦闘兵器体系・機甲兵装という軍用有人兵器が犯罪者たちにも使用されるに至り、警察は警視庁内に特捜部を設立し、「龍機兵(ドラグーン)」という最新式の機甲兵装を導入、搭乗要員として、寡黙な元モスクワの警官、ユーリー・オズノフ、常に冷静で感情を出さない北アイルランドIRFのテロリスト、ライザ・ラードナー、白髪で軽い雰囲気の日本人の傭兵、姿俊之を雇い入れる・・・。
 シリーズ3作目の「機龍警察 暗黒市場」でこのミス第3位、吉川英治文学新人賞を受賞し、そのシリーズの評判がいいのは知っていましたが、SFロボット小説だろうと思って、食わず嫌いで今まで手に取りませんでした。今回ちょっとしたきっかけで読み始めたら、機甲兵装同士の戦いは最初と最後くらいで、あとは、登場人物がそれぞれ抱える過去や犯人を追う特捜部員の捜査、そして特捜部を嫌悪する警察内部の争いが描かれるなど、警察小説として十分読み応えがありました。
 姿ら3人の搭乗員だけでなく、外務官僚でありながら特捜部長となった沖津、さらには各地の警察から特捜部にピックアップされた夏川らの刑事のキャラも個性的で読んでいてわくわくします。ページを繰る手が止まらずいっき読みです。
 今回外国の地で傭兵として働いていた姿の過去は描かれていましたが、ユーリがモスクワ警察を追われた過去や、ライザのテロリストとしての過去、そして今回描かれた事件の真相は明らかとされていません。次作に期待です。
 龍機兵の説明でカタカナ語が多くて、頭の中で龍機兵のイメージを思い描くことができないという点はオヤジだからしょうがないか。
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機龍警察 自爆条項 上・下  ☆ ハヤカワ文庫
 大黒埠頭での機甲兵装の密輸事件の摘発をきっかけに、日本各地で機甲兵装が密輸されていることが発覚する。事件を追っていた特捜部には、警備局や外務省から事件から手を引くよう圧力がかかる。事件の背後には来日するイギリス高官の暗殺を謀るIRFの影があり、そして、密かに来日したIRFの暗殺者は、同時に特捜部の傭兵・ライザ・ラードナーをIRFの裏切者として殺害する目的を持っていた。
 前作では事件の犯人との関係で姿の傭兵時代の過去が語られましたが、今回はIRFの“死神”と呼ばれたライザ・ラードナーの過去が描かれます。それもかなり克明に、彼女の北アイルランドでの少女時代からIRFへの加入、“死神”としての活動、そしてIRFからの離脱が描かれていきます。
 海外での出来事を描いているのに、月村さんのリーダヴィリティの高さ故でしょうか、日本人作家が書いているという違和感がまったくありません。
 今回も、警察組織の中で阻害される特捜部にいることに苦悩する捜査員たちの心情も描かれ、警察小説として大いに読ませます。IRFの個性的な4人のテロリストに、前作でも登場した馮グループの総帥・馮志文とその秘書・關、さらには前作の事件の背後にいた謎の人物(組織?)なども入り乱れて、目が離せません。警察小説好きの人にはおすすめです。ロボットの話かと思って手に取らないのはもったいない作品です。
 ライザを思い描くとき、女優では誰がピッタリかと考えるのですが、金髪美人で人を殺すときにも常に沈着冷静、決して感情の揺れを見せない表情、着古した革ジャンにデニム、愛車はカワサキZZR1400と、あまりに格好良すぎて適任が思い浮かびません。
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機龍警察 暗黒市場  ☆ 早川書房
 日本でブラック・マーケットが開催され、そこにドラグーンらしき機甲兵装が出品されるという情報を掴んだ警視庁組織犯罪対策部は、特捜部と合同でその壊滅を図ろうとする。一方、警視庁との契約を解除されたユーリ・オズノフ警部は幼馴染みのロシアの裏組織の男、ゾロトフに仕事を求めるが・・・
 機龍警察シリーズ第3弾です。第1作では姿の過去が、第2作ではライザ・ラードナーの過去が描かれましたが(姿の過去はそれほど掘り下げて描かれていませんが)、この第3作ではユーリ・オズノフの過去が語られていきます。かつて警察官であった父親のあとを追って、ロシアの民警の刑事となったユーリが、それも汚職がはびこる民警の中で“最も痩せた犬たち”と呼ばれて、誇りを持って刑事として働いていた彼が、なぜ犯罪者として追われる身となったのか、どうしてドラグーンの搭乗員として日本の警察に雇われたのかが描かれます。
 物語が進んでいくうちに、ユーリがロシア民警を追われることになった過去の事件と特捜部が追うブラック・マーケットの事件が複雑に絡み合っていくところが明らかになっていき、今回もページを繰る手が止まりません。単なるロボット同士の戦いを描いたものだと思ったら大間違いです。もちろん、クライマックスは姿、ライザ、ユーリの3人が乗るドラグーンと機甲兵装との戦いが描かれ、それはそれでドキドキ感たっぷりですが、それ以上に、そこに至るまでのユーリの過去の事件が人間ドラマとして大いに読ませます。
 この作品でも、第1作からの謎は明らかになりませんでした。果たして警察内部の敵は誰なのか、この後の展開が気になります。おすすめです。
 最近NHKテレビでロボット兵器が戦争を変えるという番組を放送していましたが、この作品のような人型ロボットが治安や戦争に導入されるのも夢物語ではないようですね。
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機龍警察 未亡旅団 ☆ 早川書房
 機龍警察シリーズ第4弾です。今回、特捜部が立ち向かう相手は、ロシアのイスラム武装勢力への攻撃を容認した日本をテロの標的とし、日本に潜入したチェチェンの女性メンバーのみで組織された「黒い未亡人」です。特捜部を始め警察は「黒い未亡人」のメンバーを追うが、彼女らの自爆テロにより警察は多大な犠牲を強いられます。
 女性だけのテロリストなんて、この小説の中だけのものだと思っていたら、テレビで「黒い未亡人」のテロリストがオリンピック会場であるソチに侵入したらしいという報道がなされているのを聞いて、実在の組織だったんだとびっくりしました。
 この作品では子どもを自爆テロに使う「黒い未亡人」に対し、どう対処するか苦悩する特捜部の面々を描きます。自分自身が10代からテロリストとして働き、いつもは表情を出さないライザまでもが、その事実にわずかながらも感情の揺れを見せます。自分たちの未来のために戦いながら、未来を作るはずの子どもを自爆テロに使うなんて、どこかおかしくなっていると言わざるを得ません。
 前作まではドラグーンの搭乗者として日本警察に雇われた3人の過去が描かれましたが、今回は捜査員の由紀谷警部補の生い立ちや城木管理官の家族関係が描かれ、それらが大きく事件に関係してきます。特に由紀谷と「黒い未亡人」の一員であるカティアの関係は、この物語の重要なポイントとなります。組織内部の敵についても、いよいよその一端が明らかとなってきており、これからも目が離せません。
 それにしても、チェチェン紛争は僕らにとっては「それはどこ?」という程度の認識しか正直ありません。この作品は、日本の平和な土地でのほほんと暮らす僕らの眼前にシビアな世界情勢を突きつけます。ラストは救いのある終わり方で、ちょっとグッときてしまいました。
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機龍警察 火宅  ☆   早川書房
 8編が収録された機龍警察シリーズ初めての短編集です。1編を除いてどれもが二文字の仏教用語の題名となっており、その二文字に沿ったストーリーとなっています。
 冒頭の「火宅」は、由紀谷が癌で余命幾ばくもない元上司の家に見舞いに行った際に見たあるものから、部下であったときには気がつかなかった元上司の心の裡を知ってしまう様子を描きます。
 「焼相」は、児童養護施設に人質を取って立て罷もった機甲兵装に対し、龍機兵(ドラグーン)が出動します。事件解決後に鈴石緑の語る“死神”といわれるライザ・ラードナーの姿が印象的です。
 「輪廻」は、ウガンダの反政府軍の幹部が日本の企業に買い付けにきた“もの”を巡る物語です。最近イスラム過激派が少女たちを自爆テロに使うという事件が起きていますが、ここで描かれるストーリーも根は同じです。題名が意味するあまりの悲惨な事実がアフリカの現実を読者に突きつけます。
 「済度」は、ライザ・ラードナーが特捜部に入る直前の話です。謎の男Xを待つまでの間にライザが行ったあることを描きます。「済度」とは、“菩薩が迷いの境界にいる衆生を教え導き、悟りの彼岸へ救い渡すこと”だそうですが、この物語では誰が“菩薩”で、誰が“衆生”でしょうか。
 「雪娘」は、これだけが仏教用語とは関係ないロシアの民間伝承からとられた題名となっています。ロシア人の武器商人が殺され、娘が一人取り残された事件に臨んだユーリ・オズノフが、かつて自分がモスクワ民警の警官だった頃に扱った事件との相似に気づきます。
 「沙弥」は、由紀谷が高校生だった頃の話を描きます。生活が荒み、母親が自殺した中で、後に由紀谷が警察官の道を進み始めるきっかけとなる出来事を描いていきます。
 「勤行」は、警察庁警備局から国家公安委員長の国会答弁の作成を押しつけられた宮近と城木の奮闘ぶりを描きます。いつも上しか見ていないと思っていた宮近の家庭人としての姿が描かれ、意外にいいやつかもしれないと思わせる作品に仕上がっています。
 「化生」は、これからの機龍警察シリーズの行方に関わってくる作品です。これまでのシリーズの中でも語られていた警察内部の敵が改めて想起されます。今後どういう展開になっていくのか、次作が大いに気になります。
 機甲兵装が戦うシーンを描くのは「焼相」だけで、あとはシリーズの登場人物たちを主人公に、彼らの過去や彼らが関わった事件が描かれているのですが、長編で埋められていない登場人物たちの過去や人となりが明らかになり、シリーズファンとしては嬉しい1作となっています。どの作品も読み応え十分です。 
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土漠の花  ☆   幻冬舎
  舞台となるのは東アフリカのジブテとソマリアとの国境地帯。墜落したアメリカのヘリの救助に向かった陸上自衛隊第1空挺団の部隊の野営地にソマリアの部族の族長の娘が助けを求めてくる。しかし、後を追ってきた他部族の部隊によって攻撃を受け、隊長以下何人かが殺されてしまう。残った隊員たちは族長の娘を連れ、基地目指して逃避行を続けるが・・・。
 集団的自衛権の問題がクローズアップされる中、あまりにタイムリーなストーリーです。海外に自衛隊が派遣されれば、たとえ目的が海賊からの護衛ということであっても、相手はそんな目的を考慮してくれるわけではありません。当然、この物語のように部族間の抗争の中で攻撃されるということもありうると考えざるを得ません。そういった点で非常にリアリティーがあります。
 ストーリーの中心はお姫さまを守って逃避行を続けるという冒険小説にはありかちなパターンの話となっていますが、そこに今まで実戦経験のない自衛隊という存在を置いたことがまさに現在を描いているといえます。
 冒頭すぐに敵の攻撃を受けたところから始まり、逃避行中の戦闘、そして最後、敵の大部隊に囲まれたたった6人での戦いというスピード感溢れる展開にいっき読みでした。
 アメリカのパワーゲームの結果、救援部隊が来なかったり、何人もの自衛隊員の死を出した戦いが表面上はなかったことにされたりということは、現実にもありそうなことです。ラストは月村さん、ちょっとズルいです。あんなこと書けば、グッときてしまいますよ。
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槐  ☆   光文社 
(ちょっとネタバレ)
 野外活動部の合宿でキャンプ場に出かけた部長の弓原公一ら7人の中学生と2人の引率教諭。彼らがキャンブ場に到着したとたん、武装した半プレ集団「関帝連合」がキャンブ場を襲い、居合わせた客達を端から射殺する。「関帝連合」の目的は、キャンブ場に隠された振り込め詐欺で騙し取った金40億。果たして公一たちは無事に逃げることができるのか。彼らに危機が迫る中、何者かが半グレたちを次々と倒していく・・・。
 月村さんの作品は前作の「土漠の花]でもそうでしたが、日本人に世界ではこんなことは当たり前だぞと警鐘を鴫らすもの。今回もショットガン等で武装した半グレ集団や青竜刀を振り回すチャイニーズ・マフィアが登場し、日本の国では考えられない虐殺行為を行うのですが、世界ではともかく、日本ではこんなことは起こらないと思うのは平和惚けなんでしょうか。
 でも、ランボー(詩人ではなく、シルベスター・スタローンが演じていたヒーローです)のように半グレ集団をひとりで次々と倒す救世主のような人物はさすがにありえないでしょう。凄すぎます。ちなみにこの人物の祖母のモデルは、僕らの年代ではすぐわかるあの人ですね。
 ストーリーは、出かけるまではバラバラだった中学生たちが、力を合わせて危険に立ち向かっていく姿を描いていきます。自分の身に置き換えて考えると、虐殺の現場を見ただけですくみ上がって何もできないだろうに、公一や進太郎、そして早紀や茜ら勇気ある少年少女の行動に拍手です。中でも、不良と言われていた隆也の予想外の行動にはびっくりです。公一たちを裏切って半グレの仲間になるか、足手まといになるかのどちらかだと考えていたのですが。
 彼ら中学生だけでなく、何と言っても、日頃の言動からは想像もつかなかったある人物の行動には胸が打たれます。最後の戦いに臨む彼の胸の内にジ~ンときてしまいます。
 ちょっと読んでいて引っかかったのは、最初、ガキは殺すなとリーダーの溝淵に言われたので、半グレたちは捕まえた公一たちは殺されずにすんだのに、その後の溝淵の言動からすると、そんな優しい男とは思えません。公一たちが当初簡単に殺されなかったのは説得力ないかなという気もします。
 中学生が主人公にしては凄惨な描写が多すぎるので、学校の図書館には積極的には入れてもらえないかな。 
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影の中の影  ☆  新潮社 
 仁科曜子は裏社会に精通するフリージャーナリスト。今回、彼女は中国政府のウイグル族に対する圧政問題をテーマにしようと考え、ウイグル人コミュニティーの有力者に取材をしようとしたところ、彼女の目の前でその人物が中国の暗殺者によって殺害される。「カーガーに助けを求めよ」という今際の言葉を聞いた順子は、「カーガー」の意味を探るが、懇意にしている暴力団・菊原組の組長から「触ったらあかんで」と忠告される。そんな曜子に元新華社通信の記者の袁から会いたいとの連絡が入る。彼の口から曜子は中国政府によるウイグル族に対する恐ろしい生体実験を生き残った者たちがアメリカに亡命するため日本に密入団しているという話を聞く。彼らと別れ際、曜子らは中国人によって拉致されるが、曜子を密かに守っていた菊原組の若頭・新藤と、更に現れた一人の男によって、窮地を救われる。アメリカ大使館が保護に来る明朝までの一晩、果たして曜子らは中国の暗殺者から身を守ることができるのか・・・。
 いやぁ~、これはおもしろかったです。読む者を圧倒するアクションシーンにわくわくドキドキのいっき読みでした。
 何と言ってもこの作品の魅力は“カーガー”こと景村瞬一という人物の生き様にあります。元キャリア警察官僚で国際政治の駆け引きの中で婚約者を殺され、自分自身も存在しないことになった過去を持つ男。この男がロシアの格闘技“システマ”と日本の抜刀術で暗殺者に立ち向かいます。
 それと、ヤクザを称賛してはなんですが、自分たちとはまったく関係のないウイグルの人たちを命がけで守ろうと中国人民解放軍の暗殺部隊と戦う菊原組の新藤たちの姿も印象的です。妻子に逃げられた和久井がウイグル人の母子を守るために壮絶に戦う姿に思わず目頭が熱くなりますし、須永が老人を背負って戦う姿にも胸がジ~ンときてしまいます。月村さん、ヤクザをこんな格好良く描いてはダメでしょう。
 景村の最大の敵も生き残ったままですし、またその活躍を見てみたい、続編があってもいいなあと思わせる作品でした。 
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ガンルージュ  ☆  文藝春秋 
 温泉街の外れにある別荘に武装集団が押し入り、滞在していた韓国の政治家を護衛を皆殺しにして連れ出す。それを目撃した中学1年生の秋来祐太朗と神田麻衣は武装集団に見つかり拉致されてしまう。元公安の刑事である祐太朗の母・律子は息子を助けるために途中で偶然出会った息子の担任教師である渋矢美晴とともに武装集団に戦いを挑む・・・。
 スピード感のあるストーリー展開にページを繰る手が止まらず、いっき読みでした。武装集団は韓国情報部の特殊部隊。それに女性二人で戦いを挑むのですから、荒唐無稽な話ですが、いやぁ~おもしろいです。
 とにかく、女性二人のキャラがいいですよねぇ。律子は元公安の刑事でFBIで研修も受けたというエリート。かつてスパイを追っていた同僚である恋人の死に警察内部の裏切り者が関わっていたのではないかとの疑いから警察を辞め、今は旅館の清掃係をしながら恋人との間にできた祐太朗を育てている。一方美晴は日本体育大学体育学部武道学科出身の元ロッカー。メジャーデビュー寸前に仲間割れでグループが解散した後、伯父の紹介で中学校の教師となったが、荒っぽい性格でPTAから暴力教師の烙印を押されている。彼女の元恋
人は新宿署の刑事で元公安のキャリア。とくれば、当然頭に浮かぶのは大沢在昌さんの「新宿鮫」ですよね。新宿署のキャリアの刑事とロッカーの恋人という関係は鮫島と晶の設定そのものです(ただし、晶に比べて美晴はかなり荒っぽくて態度も口調も男勝りです)。その上、彼は警察の根幹を揺るがす文書を持っているというのですから新宿鮫と同じです。今回、元恋人の刑事は登場しませんが、こんなそのままの設定で大沢さん、怒らないか気になります。
 銃と包丁で敵に立ち向かう美晴と、金属バットを振り回し、元恋人から教わった格闘術で戦う美晴のコンビに、男たちが次々に倒されていくシーンに胸がスカッとします。
 この強烈な個性の二人がこの作品限りはもったいない気がします。特に美晴のキャラはインパクトありすぎです。再登場を期待したいです。 
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追想の探偵  双葉社 
 テレビや映画の特撮ものを内容とする雑誌、「特撮旬報」の編集長である神部美花を主人公とする6編が収録された連作短編集です。彼女は、特撮作品の中の“一番興味を惹かれるが行方不明”という人物を絶対に探し出すことを信条とし、これまでも実際に探し出していることから“人捜しの神部”という異名を持っていた・・・。
 帯では“日常のハードボイルド”と謳っています。「はて?“日常の謎”ならぬ“日常のハードボイルド”とは?」と思ったのですが、月村さんが言うには犯罪が関わるではなく、普通に仕事として人捜しをすることが、「本格派のサブジャンルである〈日常の謎〉に対する〈日常のハードボイルド〉と言えるのではないかと。」だそうです。とはいえ、“ハードボイルド”という言葉の持つ印象とは、今回の作品はまったく異なる感動のストーリーとなっています。
 特に、フィルム喪失のため欠番となっている特撮テレビシリーズの関係者を探す「封印作品の秘密」で作品が封印された理由が明らかにされたときと、今までどんな媒体にも掲載されたことのない映画のメイキング写真に写っている人たちを探す「最後のひとり」で最後に残ったひとりの正体が明かされたときは、ちょっとグッときます。 
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機龍警察 狼眼殺手  ☆   早川書房 
 機能警察シリーズ第6弾です。「このミス」第3位を獲得しただけあって、読み始めたらぐいぐい物語の中に引き込まれていきます。
 フォン・コーポレーションと経済産業省が合同で進めている国家的プロジェクト“クイアコン”を巡り、関係者が連続して殺害される。被害者のもとにはキリスト教の護符が前もって送られていた。日頃、特捜部を目の敵にしている刑事部捜査一課、二課との合同捜査本部が立ち上げられる。
 今回は、ドラグーンでの戦闘シーンはありません。姿もユーリもライザも生身で立ち向かいます。そういったこともあって、SF的な要素が少なくなり、警察小説といった方が相応しい作品となっています。
 毎回、登場人物の誰かに焦点が当てられよすが、今回はライザ・ラードナーと技術主任である鈴石緑です。元IRFのテロリストだったライザとIRFのテロによって家族を殺害された過去を特つ鈴石の関係がクローズアップされます。そして、そこに1冊の本が関わってくることにより、IRFのテロリストで“死神”と怖れられたライザが因縁のある殺し屋と対峙することで警官として生きていくことを決心するターニング・ポイントとなる作品です。
 いつも葉巻のシガリロをくゆらせ、沈着冷静な沖津特捜部長、官僚というシステムの中で特捜部にいれば出世のコースから外れることで心に鬱屈を抱える城木と宮近の理事官コンビ(今作では今までと2人の立ち位置が違う点が興味深いです。)、他部署の同僚から嫌われながらも自分たちの使命を全うしようとする夏川、由起谷の警部補コンビなど、相変わらず登場人物たちのキャラが立っています。更に今回は、財務のプロである財務捜査官の仁礼や国税庁の魚住という一癖も二癖もあるようなキャラも登場しており、人間模様が賑やかになっています。
 また、シリーズを通して特捜部と対峙するフォン・グループの総帥の秘書である關の存在は今回も凄いです。關とはっきり敵対した由起谷はどうなってしまうのか心配です。
 いよいよ物語も核心に迫ってきたようで、今まではっきりしなかった“敵”の姿がおぼろげながら浮かんできます。今までの登場人物の中で“敵”側の人物だと断定される者も出てきました。いやが上にも“敵”との戦いに期待をさせられます。早く続きが読みたい!できれば次はドラグーンの出動もお願いしたいですね。 
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東京輪舞  ☆   小学館 
 巡査として田中角栄総理大臣の私邸の詰所に勤務していた際、暴漢を取り押さえたことをきっかけに公安刑事となった砂田の目を通して、昭和から平成にかけて世間を大きく騒がせた事件の隠された事実を描いていきます。
 それらの事件で優先されるのは“組織の論理”であり、それによって、国民の目に見える事件の様相は真実から大きくかけ離れてしまいます。それは、現在のモリカケ問題でも同じこと。時代が変わっても、考え方はまったく変わっていません。
 取り上げられている事件は、昭和の時代の「ロッキード事件」、「東芝COCOM違反事件」、そして平成に入ってからの世界の歴史に残る事件である「ソビエト連邦の崩壊」、「地下鉄サリン事件」、「國松警察庁長官狙撃事件」という、同時代を生きてきた者にとっては記憶に大きく残っている事件ばかりで、平成の終わりを前に非常にè