| 月下の盤 ☆ | 早川書房 |
| 恋人をストーカーに殺害されたことをきっかけに刑事を辞めた”私”。今では事務所を構えずネットを通して依頼を請け負っていた。そんな”私”に人探しの依頼が入る。東亜ホテルに滞在する「ゴウダトオル」という人物を探してほしいというもの。わかっているのは名前だけで、性別、年齢、職業等はわからない。なお、東亜ホテルは4日後には閉館するため、それを過ぎると居所がわからなくなるという。”私”は依頼を受け、東亜ホテルを訪ね、”ゴウダトオル”について聞いて回る。ホテルに宿泊したその夜、”私”の部屋に”ゴウダトオル”について話をしたいという男からの電話が入る。約束した時間に男の部屋を訪ねると、男が死んでいるのを発見する。男は日本を代表する巨大企業グループ”タイラグループ”の会長・平功生の娘婿の前沢伸之だった・・・。 ”私”はゴウダトオルの行方を捜すとともに、殺人事件の謎も追うことになります。殺人事件は、平家のいずれかの犯行かとも思えたが、誰もがアリバイを有するという中で、”私”がいかにアリバイを崩していくのかが読みどころです。ハードボイルドであり、本格ミステリの融合した作品といえます。”私”が万能の探偵ではなく、ミスもするところも共感できます。 ゴウダトオルの行方を探すうちに多くの人の人生が明らかとなり、やがてゴウダトオルの正体と依頼主の”アリス”の正体も明らかになる展開に「そうだったのかぁ」と唸らされました。 「私」という一人称で語られる元刑事の私立探偵を主人公にする作品です。「私」という一人称で語る私立探偵といえば、個人的には原りょうさんの沢崎を思い浮かべますが、この作品の「私」は最後まで名前が明らかにされません。また、個人的なことは描かれなかった沢崎と異なり、恋人をストーカーに殺害されたという強烈な過去を持つところは、沢崎とは大きな違いですね。この過去の事件はいつかは描かれるのではないでしょうか。ともあれ、原りょうさん亡き後の新たな「私」という一人称の探偵の作品として、続編に期待したい作品です。 |
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