| お引っ越し ☆ | 角川書店 |
| 『引っ越し』をモチーフにした連作短編集です。 殺人犯が住んでいた部屋から引っ越そうと、マンションの内見に訪れた女性が、気になった非常扉を開けてしまったことから、恐ろしい状況に陥ってしまう・・・(「扉」)。完璧を期すにもほどほどにした方がいいと思わせる怖さです。 引っ越しの荷造りが終わったと思った女性が、玄関の棚に前回引っ越してきたときの荷物をそのまま置いてあることに気付き、整理を始めたが、その中身は、ある過去の出来事の思い出の品で・・・(「棚」)。どこがイヤミスなんだ、単なる優柔不断な女のドタバタを 描いたものだと思ったのですが。 引っ越し業者でパートで働き始めた主婦が、机の引き出しの中から、前任者が書いた警告の手紙を発見し、これはまずいと退職をしようとするが・・・(「机」)。これは怖いですねぇ。伏線が張ってあったのですが、こういう着地をするとは予想できませんでした。作者のミスリードにしてやられました。 社内の引っ越しで、お局さんや契約社員に疎まれている女性社員の荷物が行方不明になり、意外な場所で発見されたのだが・・・(「箱」)。人をイライラさせてしまう人ってどこにもいますが、それにしてもこの女性社員があまりにかわいそうな1編。 隣の夫婦の部屋の騒音が原因で、極度の寝不足になっている職場の同僚が、その騒音が、夫のDVではないかと警察に通報したのだが・・・(「璧」)。見事に先入観に騙されましたねぇ。 ネットのストリートビューで、自分が住んでいるマンションの中まで見ることができることを発見した女性が、自分の部屋の非常扉から、黒い紐のようなものが這い出ているのを見てしまい・・・(「紐」)。冒頭の「扉」に繋がる1編です。 本作品が連作であるのは、次の「解説」ゆえです。「解説」や「あとがき」があると、ついそちらから読んでしまいたくなります。この作品にも「解説」があったので、それから読み出したのですが、この「解説]は最後に読まないといけません。なんとこの「解説」は「解説」という題名のひとつの話でした。各話の“解説”という形をとりながら、それぞれの話の繋がりを明らかにしていくという、この構成が絶妙です。それぞれの話を読んで怖いなあと思ったのが、この「解説」によってその怖さが増幅されます。 どの話にも“アオシマ”という人物が登場してきますが、「解説」で、実は・・・というところが明らかになりますが、なるほどねぇ。 |
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| 5人のジュンコ ☆ | 徳間書店 |
| 先に読んだ「お引っ越し」は、ホラー風味が強かった作品でしたが、この作品は、“真梨幸子さんといえばイヤミス”らしい、読み続けるのが嫌になるほどのイヤミス感たっぷりの作品でした。 そもそものストーリーの発端となる事件は、大勢の男性に結婚を餌に金を貢がせ、挙げ句の果ては殺害してしまうという、実際に起こったあの女性の事件がモデルでしょう。ワイドショーで報道された犯人の女性の写真に、どうしてこの女性に何人もの男が騙されるんだと驚きを禁じ得なかった事件です。 ただ、物語は、この事件をなぞっていくわけではありません。事件の犯人、佐竹純子と彼女と同じ名前を持つ3人の“ジュンコ”、更に“ジュンコ”という名前の母を持った女性を描きながら物語は進んでいきます。 登場人物で、佐竹純子に直接関係のあるのはエピソード1に登場する中学時代のクラスメート、篠田淳子だけ。あとは彼女の事件を追うジャーナリストのアシスタントだったり、彼女に似ていると言われた主婦だったり、被害者の男性の姉だったりと、佐竹純子と直接関わったわけではありません。そんな人たちが作中に述べられているバタフライ効果のように、佐竹淳子の悪意の影響を受けていくというストーリーになっています。 登場してくる人物が誰もが心の中では周囲に悪感情を持つ人物ばかり。特に冒頭に登場する篠田淳子は、佐竹純子がいかに嫌な女であるかを語っていくのですが、読んでいて投げ出したくなるほど嫌な感じになります。それは他の登場人物も同じで、誰にも感情移入ができません。でも、彼女らが他人に抱く悪意は誰もがどこかで他人に抱いてしまうものかもしれません。 それぞれの章で読者をミスリードして、読者にあっと言わせるどんでん返しの展開もうまいです。特に最後が“エピソードO”になっているところは、こうきたかと、一段とイヤミス度がアップです。 |
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| 人生相談。 ☆ | 講談社 |
| ほとんどの章が冒頭に大洋新聞に連載されている「よろず相談室」欄に寄せられた読者からの相談があり、それに関係した出来事が描かれ、最後に相談への回答があるという体裁になっています。読者の相談に対する回答は通り一遍のありきたりなものであり、その間で語られるストーリーは回答の通りには進んでいかないという皮肉な作りになっています。 ある話の主人公が別の話では脇役として登場しており、連作短編集かなと思いましたが、彼らが複雑に絡み合って実は一つの長編となっています。 とにかく登場人物が多くて、そのうえ同一人物でありながら名前が違っている人もおり、更には読者をミスリードするためか、現在と1994年という二つの時代を背景としており、全然頭の中で話の整理ができませんでした。「この人、前にも登場したよなあ・・・」 と、何度も前のページに戻りました。これだけの登場人物にうまく関わりを持たせて描いていくとは真梨さん、なかなかのものです。すべてが普通の人ばかりでなく、一癖も二癖もある人や、これはもう性格破綻しているなと思う人物も出てくるので、ことは複雑化してきます。その中で物語の各所で語られている行方不明事件や横領事件、更には大金を拾った事件がひとつの話へと繋がっていくところは見事です。 とはいえ、構成が複雑すぎて、老年に差し掛かる僕の頭では到底理解できませんでした。サイトに登場人物相関図を作成した方がいて、その相関図を見て、ようやくストーリーの全体像がわかった次第です。 さすがイヤミスの女王というだけあって、冒頭の「居候している女性が出て行かない」1編だけとっても、イヤミス感たっぷりの作品です。その後に少女の相談で語られていた風景が180度反転するところにはやられました。 |
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| アルテーミスの采配 | 幻冬舎 |
| (ちょっとネタバレ) 冒頭、二人の女性のエピソードが語られます。物語はすぐにワイドショーにも登場するようになった元女性AV監督・西園寺ミヤビが書く「アルテーミスの采配」という本の話となるので、このエピソードを忘れてしまうのですが、すべてはここが始まりです。 西園寺の本のネタを提供するため、フリーライターの名賀尻がAV女優たちにインタビューをするが、インタビューをしたAV女優たちが次々と行方不明になったり、不審死を遂げる。出版社の編集者から、容疑がかけられていると聞いた名賀尻は、編集者の助けで姿を隠すが・・・ “アルテーミス”とは「ギリシャ神話に登場する狩猟の女神あるいは純血を司る処女神。男女の性愛を嫌悪し、特に男性の性的な欲望に対して激しい怒りを持つ残虐の女神」だそうです。この題名が意味する“アルテーミス”とは誰なのか、“采配”とは何なのかが、最 後に明らかにされるのですが、さすがイヤミスの真梨さんの作品らしく、読後感はよくありません。 登場人物の人間関係が複雑に絡み合っており、「まさか、この人がそんな重要な役どころで登場してくるとは!」という驚きもあって、頭の中で人間関係を整理するのがやっかいです。「この人とこの人はこういう関係で」と、人物相関図を自分で作りながら読み進みました。 事件はある人物たちの“采配”によって起こされたものですが、“采配”というにはあまりにその計画は複雑で、手がかかりすぎているという気がします。最終目的のために、こんなところから始めるのかと、現実であれば恐ろしくなります。 AV女優の世界の描写が非常に具体的です。真柴さん、相当な取材をしたのではないでしょうか。 |
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| 6月31日の同窓会 | 実業之日本社 |
| (ネタバレあり) 神奈川県にある幼稚園から短期大学まである蘭聖学園には「6月31日の同窓会」の案内が届いた卒業生は「お仕置き」がされるという噂があった。蘭聖学園の卒業生である漫画家の柏木陽奈子は、ニュースで同級生だった大崎多香美が死んだことを知るが、直後自らも歩道橋から突き落とされて命を落とす。蘭聖学園の卒業生である弁護士の松川凜子は、陽奈子を突き落とした犯人である同じ蘭聖学園の卒業生の弁護を依頼され、異様な事件の中に巻き込まれていく・・・。 登場人物が多く、時間が行ったり戻ったりするので、非常に話がわかりにくいです。更に、「6月31日の同窓会」の案内状をもらった人はお仕置きされるという都市伝説、高等部の学業発表会で披露された演劇のストーリーと同じ順番に演劇に出演した89期卒業生が死んでいくこと、エスカレータ一式の学園でなぜか時々途中からの入学を認めているときがあること、松川弁護士の元に様々な蘭聖学園卒業生からの相談や依頼がある等々様々な話がごちゃ混ぜになっているので、ストーリーを頭の中で整理するのが大変です。 真梨幸子さんらしいイヤミス作品です。女性たã | |