胸腔鏡下交感神経遮断術(ETS)
手掌多汗症の治療法として、日本では1993年ごろから始められました。
それまでは、胸部交感神経節ブロックという治療法が行われていました。これはレントゲン透視で胸の背骨を見ながら針を刺してゆき、99.5%のエチルアルコールを注入して神経を破壊する方法です。
この方法は手技的に難しく、合併症のリスクも少なくありません。また非常に上手な施設でも有効率は70%前後でした。そこで、内視鏡にカメラを接続し、胸の背骨の両側にある交感神経を見ながら、それを遮断するという手術が始められました。遮断する方法には、電気メスで切る、クリップではさむ、レーザーメスを使って切るなどの方法があります。
手術成績
交感神経を遮断する部位によっていろいろ異なります。胸の背骨(胸椎)の両わきに縦に数珠のように走っている交感神経のつながりを遮断します。手や顔面に関係するのはそのうちの1番から4番目までの神経です。
※1番目で遮断するとまぶたが下がる合併症が出るので遮断できません。そこで、2番目から4番目のどれかで遮断することになります。
手のひらはカラカラに乾きます。顔の汗も減少します。代償性発汗が強く出ます。
手のひらの汗は減りますが、少しにじむこともあります。顔には効きません。なお、代償性発汗は2番目の遮断ほどではなさそうです。
3番目と同様の効果です。ただし再発することがあります。なお、代償性発汗が一番少ないとの報告があります。
ヒトは汗をかくことにより体温調節をしています。この手術は交感神経を遮断することにより汗を止めますので、その部分の汗が他の部分から出るようになります。それを「代償性発汗」と呼びます。
この代償性発汗が見られる場所は、胸、背中、腰、おなか、太もも、ひざの裏など、さまざまです。代償性発汗の出る確率は70〜80%です。ほとんどの人で出ると思っていたほうがよいでしょう。これはこの手術の唯一の欠点です。
ですから、この手術をする際には代償性発汗のことをよく考えて、手術の決定をすることが重要です。また手術をした際には、この代償性発汗の対策も重要になります。代償性発汗についても十分に説明してくれる病院を選んで手術することをお勧めします。
手術の方法
- 手術は全身麻酔で行います。
- わきの下とその下約10cmのところを、約4mm切開して、内視鏡と電気メスのついた鉗子を入れます。
- 内視鏡に小さなビデオカメラをつないで、TVモニターで見ながら、交感神経を切断します。
- 手術時間は片側で20分程度です。
- 全身麻酔をかけて麻酔が覚めるまで約40〜50分程度です。
- 日帰りで手術を行っている施設もありますが、大分大学医学部附属病院麻酔科では安全を考えて2泊3日もしくは3泊4日の入院をしてもらっています。
- 手術は保険適応があります。