いるか座新星はいるかな? >
肉眼新星はこんなにめずらしい
肉眼新星はこんなにめずらしい
☆ はくちょう座新星(1975) = V1500 Cyg
見やすい時期に北半球でこれほど明るくなった新星は実に38年ぶり、はくちょう座新星(1975) = V1500 Cyg 以来です。この新星は夏休みも終わりに近づいた1975年8月29日、当時高校生の長田健太郎さんが世界で最初に発見したものです。
他にも多くの独立発見者があり、貴重な増光途中のスペクトルが撮影されました。新星は翌日に1.8等級の極大に達し、過去50年で最も明るい新星となりました。この新星をきっかけに天文への関心を高めた人が多数ありました。この新星は非常に減光が速いことで有名で、5等級より明るい期間は発見日を含めても6日間だけでした。
☆ ケンタウルス座新星(1986) = V842 Cen
1986年11月に4.6等級に達する新星(V842 Cen)がケンタウルス座に発見されましたが、これは日本からは見ることができませんでした。
☆ ヘルクレス座新星(1991) = V838 Her
1991年3月25日、ヘルクレス座に菅野松男さんとGeorge Alcockが新星(V838 Her)を独立発見し、最大等級5.0等が記録されましたが、極めて急速に暗くなり、明け方の空であったことから発見者以外の明るい時期の観測はほとんどありませんでした。
☆ はくちょう座新星(1992) = V1974 Cyg
1992年2月19日、Peter Collins がはくちょう座に新星(V1974 Cyg)を発見しました。この新星は4.4等級まで明るくなり、北半球から見やすい新星の中で、今回のいるか座新星なみに明るくなった最も最近のものです。
当時打ち上げられたばかりのハッブル宇宙望遠鏡で広がりつつあるガスが撮影されたり、インターネット時代の最初の明るい新星となって話題となりましたが、2月のはくちょう座は明け方の空で、明るい時期を観測できた人はそれほど多くありませんでした。
☆ ほ座新星(1999) = V382 Vel
1999年5月22日Peter WilliamsとAlan Gilmoreがほ座に新星(V382 Vel)を発見し、最大2.5等に達しましたが、日本からはほとんど見ることのできない位置でした。V1500 Cyg 以来で最も明るくなった新星です。
☆ わし座新星(1999) = V1494 Aql
1999年12月1日、Alfredo Pereira がわし座に新星(V1494 Aql)を眼視で発見しました。この新星も極大前の発見で、その後最大4.0等まで明るくなりましたが、減光が速く、夕方の低めの空で、やや観測しにくい位置にありました。
☆ いて座新星(2002) = V4743 Sgr
2002年9月20日、長谷田勝美さんがいて座に新星(V4743 Sgr)を写真で発見しました。この天体も最大光度は4.9等程度になりましたが、写真発見のころが最大光度で、一番明るい状態を眼視で見ることはできませんでした。
☆ 反復新星、へびつかい座RS (2006)= RS Oph
2006年2月12日、反復新星のへびつかい座RS (RS Oph) が新星爆発をして最大4.4等まで明るくなりました。この爆発も日本の成見博秋さんと金井清高さんが独立発見したものです。この新星も明け方の空で、減光が極めて速い新星だったため日本で再度観測可能になった翌日にはすでに5.1等まで減光していました。
☆ さそり座新星(2007)= V1280 Sco
2007年2月4日、中村祐二さんと櫻井幸夫さんがさそり座に9等級の新星を発見しました(V1280 Sco)。この新星は変化が非常に遅く、2月16日に最大光度3.8等に達しました。いるか座新星と同等の明るさに達した新星の中では最も最近のものですが、厳しい冬の明け方の低い空で、観測は難しいものでした。
☆ とも座新星(2007)= V598 Pup
2007年7月18日、XMM-Newton X線観測衛星が突発天体を発見し、新 星と確認されました(V598 Pup)。この新星は最大少なくとも4.1等よりも明るくなっていたことが記録画像からわかりましたが、明るい状態を実際に目で見た報告はありませんでした。
肉眼光度に達する新星がいかにまれなもので、これほどよい位置で観測できる天体は過去にほとんどなかったことを見ていただけるでしょう。
※ 新星の最大光度は出典により差ががあります。ここで示されている数字は概略の数字とお考えください。
(加藤太一)