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非動脈炎性虚血性視神経症(NAION・PION)への鍼施術 2026年4月6日Web公開版
2026年3月15日(日) 第41回 「眼科と東洋医学」研究会 東京文具共和会館
・解説内容については、当日参加いただいた先生方にスライドを交えて報告した内容を、広く一般の方に分かり易くお伝えするために
大幅に補足しています。当日は限られた時間のためにお伝えできなかった部分も含めて、完成版として見ていただけたら幸いです。
・千秋針灸院では皆様のご協力により多数の検査画像等を保有していますが、許可を得て研究会や学会報告、院内での説明時に限定しています。
・個人情報がネット上で拡散した場合、今後検査結果を患者さんが入手し辛くなるケースも考えられるため、安易な公開は慎むよう努めています。

・今回は非動脈炎性虚血性視神経症(NAION・PION)への鍼治療を、3例の症例報告を通してご紹介しました。
・今回の第41回大会は、浅草橋の東京文具共和会館へと会場が移り、現地とzoomのハイブリットで開催されました。
・非動脈炎性虚血性視神経症は眼科での治療法が確立されておらず、視力や視野の障害が概ね永続する疾患です。
・今回の報告では発症からの鍼治療開始までの経過期間により、回復に著明な差を生じることを知っていただけたら幸いです。

・毎回お馴染みの施術画像です。実際鍼をする経穴名は抄録に記載されています。今回は低周波通電鍼が発登場。
・ディスポーザブル(使い捨て鍼)を使って、うつ伏せの姿勢から頚肩部や背中、腰にかけての目に関係するツボに針治療をしていきます。
・仰向けでは手足や眼の周囲に針をします。目の周囲は直径0.12~0.14ミリと特に細い針を使い、目周囲での出血等を大きく減らしています。
・低周波通電鍼は頸部と頭部に行い、目の周囲には用いません。千秋針灸院では難治の視神経疾患に使用する場合があります。

・視力測定は当院の液晶視力表で、患者さん持参の眼鏡等で行います。
・一般に眼科で使用される視力表は指標を背面から照らしますが、指標毎に位置が変わり患者さんが指標を探すだけでも時間がかかります。
・当院の液晶視力表では指標が中心に固定されるため、指標の位置を探すことによる時間切れにより、低視力と評価される心配はありません。
・当院では視力測定は針治療の前に行いますが、治療前が最も前回からの期間が空くことにより、実際の視力を反映していることが理由です。

・視野測定は鈴木式アイチェックチャート/副表4を使用します。一般に検診等で用いられる簡易検査となります。
・測定法は片眼でマリオット盲点を確認の上、または視野障害の部位により、盲点が不明な場合は40cm程離して行います。
・視野障害部位は、指標の見え方が不明瞭になったり消失することから、大まかな視野の状況を確認できます。
・鈴木式アイチェックチャートは様々な眼科疾患に対応し、視力以外の実際の見え方を掴むために欠かせない測定器具です。

症例①は非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)の50代男性です。
・飲酒は毎日2合/喫煙はありませんが、医療関係職で仕事のストレスは大変大きいとのことでした。

・上は初診時で左0.3/右0.3。視野は左は周辺部、右は中心から鼻側で感度低下や視野欠損を生じています。
・下は14ヶ月後で左0.6/右0.7。左は鼻側上方の視野欠損は残るが感度低下は主に下方で解消しています。
・右も中心から鼻側の視野障害は軽減しています。課題の運転免許更新も、現在までクリアし続けています。

・症例②は非動脈炎性後部虚血性視神経症(PION)の80代男性です。
・眼科では右眼は回復困難、左眼は少しでも視機能を残すため、可能性があるならと鍼治療を紹介されたとのことでした。

・鍼治療開始から約3ヶ月毎の視力・視野の状況です。
・上は初診時で、視力は左・0.15、右・光覚弁。視野は左・下半盲、右・鼻側上方の一部に僅かに光を感じる部分があるのみ。
・中は約3ヶ月後、視力は左・0.6、右・0.4。視野は左・下半盲は概ね回復、右・中心下方を残して改善傾向。
・下は約6ヶ月後、視力は左・0.7、右・0.6。視野は左・概ね回復を維持、右・全域で異常部位は消失していました。
・実質治癒に相当する回復で念のため、診断間違いが検討されましたが、後日大学病院でPIONの確定診断で間違いないとのことでした。

・症例③は両眼虚血性視神経症(タイプ不明)の30代男性です。
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・発症の数ヶ月前から仕事のストレスが非常に強く、デパス®を毎日4~5回も服用されていました。
・遠方の患者さんのため、近隣の提携針灸院を紹介し、当院カルテの写しをお渡しして鍼治療を担当していただきました。

・公開は控えますが、症例③の両眼・光干渉断層計(OCT)画像です。鍼治療前直近(上)と約10ヶ月後の画像となります。
・光干渉断層計(OCT)とは、光の反射を利用して網膜の断面を見ることができる、眼科医療には欠かせない検査機器です。
・鍼治療前の画像では中心窩は不鮮明であり、黄斑部の異常所見となります。約10ヶ月後には中心窩は鮮明となり、正常所見へと変化しました。
・視力は初回、右・0.1、左・0.05が、約5ヶ月後で右・0.7、左・0.9。約11ヶ月後は右・1.0、左・1.5。視野も概ね回復して眼科でも治癒の診断です。
・後に網膜動脈閉塞(CRAO)の可能性も検討されていますが、両方とも治癒は困難な疾病のため、早期の針治療が奏功したと考えられます。

・鍼治療は非動脈炎性虚血性視神経症(NAION・PION)の治療として、早期では最大限の回復可能性のある治療法と考えられます。
・非動脈炎性虚血性視神経症は発症から概ね1ヶ月程度までに積極的な鍼治療を開始することで、劇的な回復が得られる可能性があります。
・一方、数ヶ月から1年程経過した症例では一定の改善は認められるものの、治癒に相当するような大幅な回復は困難と考えられます。
・適切な針治療に加えて眼科での漢方治療を推奨し、現在眼科疾患の一部で併用を始めており、今後の結果が期待されています。
・今回は当院からの報告ですが、多くの治療院から報告されることで、眼科領域への鍼治療が確かな治療と認められることを願っています。
・今回の報告に尽力いただいた山本昇伯先生をはじめ、「眼科と東洋医学」研究会の関係者の先生方、ご協力いただいた患者様、
千秋針灸院のスタッフ、支えてくれた家族や提携治療院の先生方、応援していただいた皆様に感謝いたします。
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