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祖母と旅するアフリカ

(三)二日目

米国人の観光客と、ボツワナへ長時間ドライブ

鳥の楽園で鳥類図鑑を買うこと

で、翌朝、二日酔いになった。おそらく、船で飲んだワインがいけなかったのだ。白ワインの味(大阪風うどん出汁)から推定するに、まあそれなりの品質だったのだろう。ザンベジ川に面したロッジの朝、ヒヒの群れが庭先を歩き、るり色の鳥が飛び回っている。大きなナメクジもいて、つつかれることを待っている。

朝食後、サニーさんというドライバーがロッジに迎えに来てくれて、今日はジンバブエからボツワナへ行く。もう一組、迎えに行かなければ行けない客がいる、ということで立ち寄ったビクトリアフォールズホテルの庭には、マンゴーがなっていた。たまたま落っこちてきたのを拾いに行く。日本で売っているマンゴーより小さくて、青い。われわれといっしょにボツワナへ行く客は、中年の米国人夫婦で、船でアフリカに来てバカンスを楽しんでいるらしい。旦那さんのほうは製薬企業に勤務している、とのこと。コヤマさんは製薬企業勤務で、私は薬などを担当しているライターだから、世間は狭いのである。しかし、私は時差ぼけと二日酔いで、彼らとはあまり話せなかった。米国人夫婦は、途中の空港(草原)で降りていった。お金持ちの彼らは、空からサファリを楽しむのだ。

広い広いアフリカの草原は、走れども走れども対向車が来ない。トヨタ車による1時間半ほどのドライブのあと、ボツワナのサファリ・ロッジに着く。フロントでノンアルコールのウェルカムドリンクが出たり、高級な感じである。ロッジのシンボルは巨大なバオバブの木。クリントン大統領ご宿泊、のロッジだそうで、インテリアの趣味などもよい。

ボツワナとジンバブエでわれわれが泊まったロッジは、両方とも窓は庭、ドアは外廊下に面していて、豪華な長屋みたいなつくりだ。祖母は「シティホテルよりこういう感じのほうがいい」という。昼食は出ないので、日本から持ってきた「ごんぶと」を食べる。わかめの入ったうどんは、アフリカで食べてもおいしい。南半球に来ると、排水溝に流れる水の渦巻きが逆周りになる、と言うことを聞いていて、確認しようとしたけどよく分からなかった。

ドライブで疲れた祖母は少し休息する。私はホテル中を探検する。部屋に戻ると。「ホテルの人が着たけど、言葉が通じないから帰っていった」と祖母がいう。

夕刻、われわれ3人は、ボートサファリへ出る。15名ほどでボートに乗ってチョベ川に住む野生動物を見るのだ。ここはカバが多い。カバカバカバカバカバカバカバカバカバ。ワニもいる。気をつけて写真を撮らないと、画面に尻尾が納まりきらないような大きさだ。また、湿地帯だけに鳥も多い。ハチドリやサギ、ツバメなど、バードウオッチャーでないことを後悔させられるような鳥の数だ。それで、ロッジに戻ってから売店で鳥の図鑑を買った。ボツワナの通貨は持っていないため、カードを使う。クリントンが泊まったロッジなのに、アメリカン・エクスプレスは電話で問い合わせないと使えないのだ、という。ってことはクリントンのカードはビザかユーロマスターだな。JCBってことはあるまい。

Newman's Birds of Southern Africa

部屋に戻り、ボートサファリでレンジャーに教えてもらった鳥の名前を図鑑と照らし合わせてみる・・・African Darter、Open-billed Stork、African Fish Eagle、Pied Kingfisher、Reed Cormorant、Squacco Heron、Egyptian Goose、Purple Heron、 Cattle Egret、 Yellow-billed Stork。ロッジの周囲にも鳥は多く、ビュッフェで食事をとっていると、鳥が狙いに来る。プールのそばには鳥用のエサ板が設置されて、小鳥がてんこ盛りになっていた。宿泊客の子供が大騒ぎをしながらプールで遊んでいるのに、鳥どもはまったく気にしていない。ホテルの2階には、小さいホールがあり、どこかの企業が研修会をやっている。眼下にはチョベ川と湿地帯が広がる。川の向こうはナミビアだという。

祖母の夫である祖父は、76歳で亡くなったが、旅行が嫌いだった。特に飛行機を嫌っていた。祖母と祖父は、80年代半ばに一回だけハワイに旅行したが、そのときも飛行機を大変に怖がっていたという。彼は若いころ、ハルピンとかターリエンとか朝鮮半島某所などで従軍していたので、外国はもう十分と思っていたのかもしれない。日本軍における彼の最大の功績は、ひどく散らかっていて誰も整理できなかった被服廠倉庫を、偉い人の視察前に整頓しことだ。確かに几帳面な人だったが、性格もきつかったので祖母は苦労していた。私にとっては限りなくいいおじいちゃんだったが。

夜は、すばらしいロッジのベッドで、マラリア蚊よけの蚊帳をかぶって眠る。ビクトリアフォールズのガイドのフェイさんは、「私たちは、寝るときは蚊よけのスプレーをして眠ります」と言っていた。そういえば。

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