HAMACON2覚書

筆者のステータス:SF大会参加は初めて。東京の城南地区在住(みなとみらいまで1時間弱)。フルタイムの会社員。都合が付かず、HAMACON2の事前打ち合わせには一度も出られなかった。

この稿の目的:SF大会に、スタッフとして参加した場合のスケジュール等を明らかにする。今後SF大会にスタッフとして参加したい人の参考データとする。

7/15(金) 前日の準備

・会社を定時ダッシュして、そのまま大会会場であるパシフィコ横浜へ行く。18時過ぎにパシフィコに到着する。すでにお手伝いの人がいっぱいいる。私だけスーツを着ているので周囲から浮いているように感じる。

・道路が混んでいて、物資を積んだクルマの到着が遅れ、作業開始もずれ込む。交通渋滞はスケジュールの敵。

・30分強?くらい遅れて地下フロアに到着した荷物を、3Fの本部周辺に運び上げる。その後、パソコンで展示用の資料を完成させる。パソコンとプリンタの設置が済んだところでプリントアウトしてもらう。このとき、プリンタドライバが入っているパソコンがどれか分からず、混乱する。またネットへの接続も簡単ではなかったようだ(よく分からない)。

・エキシビジョンホールで、来場者がもらう資料やグッズを袋詰めする作業を手伝う。大会プログラム(スーベニアブック)以外のものを、皆でラインを作って詰める。スーベニアブックは翌日朝(16日)につめた(ような気がする。よく覚えていない)。シールの台紙を首からぶら下げるためのケースの、ブルーのヒモがこんがらがって工程を邪魔する。

・部屋の使用時間を10時まで延長してもらったが、終わらず、作業中途のまま帰る。

7/16(土) 1日目

・朝8時に集合。昨日の袋詰めの続きをする。カメラで場内の様子を記録をする係だったので、名札にぶら下げるプレス用のリボンをもらおうとするが、見つからない。

・会場時間が近づくと、入り口に行列ができてくる。当日受付の人も多い。開場からしばらくは、受付のわきで名札のシール貼りをして手伝う。単純な処理からはみ出すケースが結構あって(事前登録を知人からゆずってもらった方とか、土曜日だけ参加の生徒さんとか)受付は大変だ。私には参加者区分がよく分からないため、単純作業に前足を貸す。

・受付が一段落したらプレスのリボンが出てきた。それを付けて会場をまわる。借りものの、小型のフィルムビデオカメラでそこらを撮影する。こういうものを手に持って画像を撮影するのは初めてである(三脚に固定したやつで剣道の試合を取ったことはある)。わりと面白いけど肩がこる。どこに行くべきかわからないのでうろうろする。

・廊下で抱き合って再会を喜ぶ女性2人を目撃する。ようぱんずーゆぇんふぁんらい(有朋自遠方来)。

・そして廊下の突き当たりにあるキッズコン(保育室?)に行ったら、子供がたくさんいて驚く。まじめ系サイエンスの学会に近年設置されるようになった保育室と比べても、子供の数が多い。そして力の限り騒いでいる。キッズルームは靴を脱いで入るシステム。

・サイン会の撮影もする。1ワク目のサイン会では、サインをしてくださる作家の名札が掲示されていなかった。ファンは、作品と名前はよく知っているかもしれないが、顔で個人を識別するのはとっても難しいと思う(私には無理)。2ワク目以降は名札が出るようになって助かる。

・方針は定まらないが、各企画は少しずつ撮ることにして、部屋を出たり入ったりを繰り返す。あちこち覗けてよかった。とくに、外国人が見て日本のユニークさを感ずるものを撮るようにする。2年後に日本で開催されるワールドコンの宣伝に使えるからだ。

・まず、押井守監督が「立喰師列伝」という新作映画の紹介に来ていたので、その様子を撮影する。皆が忙しく働いているさなかではあるが、便乗して、こっそり予告編の上映も見てしまう(むろん撮影はしていない。著作権を侵害すると、黒い涙を流す女の亡霊にとり殺されるからね!)。いぬがかわいい。でもうちのいぬはもっとかわいい。なお食券制の普及とチェーン店化により、スタンドそばの食い逃げは今やほとんど不可能である。

・また、キモノ姿の講談師が「原始怪物ガニラ」の紙芝居を演ずる企画も撮る。キモノは日本のイメージとしてはポイント高そうだ。それだけではなく、これは大変面白く、フルに聞いていたら勉強になりそうな企画であった。

・はなやかそうだと思って入った「女の子の萌えを語ります」という企画ではすごーく面白い話をしていた。やおい小説を書く場合に、コンドームの描写を入れる必要が有るか無いか、という話題である。「ゲイ向けの雑誌に書く場合は、(近年のHIV流行の情勢をかんがみて)書く必要がある」と考える作家と、「あくまでファンタジーなのでそういう描写は必要ない」という意見とがあった。後日、かつてこのジャンルで漫画を描いていたことがある友人にこの話をしたら「それは私が描いていたころは無かった話題である」と言っていた。時代は流れていく。しーじゃーるーしーふ(逝者如斯夫)。もっと聞いていたかったが、色々撮らなきゃいけないものがあったので後ろ髪を引かれまくりながら退出する。

・スタッフのお弁当は、崎陽軒。おこわとチャーハン弁当と夏の限定弁当から選択。夏の限定弁当をチョイス。これらは名物のシュウマイ弁当より値段が安いが、おいしい。

・開場のガードマンと、コンスイート(大会用喫茶休憩室)・グリーンルームのカフェスタッフもまたSF大会の参加者であることを、午後遅くになってようやく気付く。

・夜、用事があったので、近くの桟橋から出るレストラン船の、船上で開催される星雲賞受賞パーティーには参加せず。7時半過ぎに会場を出、帰宅する。

7/17(日) 2日目

・朝8時半に集合。袋詰めを手伝った後、開場前の様子と、開場直後の入場者の様子を撮影する。

・各部屋を回って、それぞれの様子を少しずつ撮影する。マッドサイエンティスト・カフェや、人間戦艦ゲームの様子を撮影する。人間戦艦ゲームには、大人だけでなく子どもも参加していた。

・野田昌宏基調講演の時間がずれ込んだり、機材のトラブルから? 大会本部は大騒ぎである。(事情は傍にいても、よく分からない)

・昼ごろ、サイン会の様子を撮影していたら、小松左京の前の空間に人があまりいなかった。あたりを見回し、エキシビジョンホールの有隣堂で「日本売ります」を素早く買い込み、忍びのごとくこっそりと、母の名前のサインをしていただく。大会終了翌日、母にこれを贈ったところ、泣いて喜ばれた。そんなに好きだったんですか! 親子でも知らないことは多い。

・崎陽軒が作るのを忘れていた?ので、お昼になってもスタッフ用のお弁当が来ない。だが、1時ごろになって、シューマイ弁当が届けられる。遅れたお詫びのしるしに、昨日よりワンランク上。シュウマイとアンズの甘煮がおいしい。たけのこはしょっぱい。

・コンスイート、1日目はガラガラだったため、「タダでお茶できます」むねを記したポスターが大量に貼られた。おかげで2日目は盛況であった。

・スペースシャトル打ち上げ延期の影響で、演者がおらず、宇宙開発の企画は中止になった。

・午後の企画では、私の見た限り、「ひみつの植物とSFの世界」「前田建設ファンタジー営業部」が特に盛況だった。

・企画が終わったところから、片付けに入る。エキシビジョンホールのコマわりのガムテープをチマチマとはがしていたら、どこからともなく3歳ぐらいの女の子が現れて、はがすのを手伝ってくれる。頼んだわけでもないのにえらいことである。

・メインホールの企画は進行が遅れ、暗黒星雲賞の授賞式など全てのプログラムが終わったのは6時近くだった。外の世界は、横浜の花火大会ですごい人である。

・スタッフは会場の撤収作業をし、トラックの到着が遅れたので物資の搬出より先に打ち上げをする。場所によっては花火大会が見える部屋で、花火を見ながらビールを飲む。ビールは主にスーパードライ缶で、チューハイとSLIMSもある。料理はピザと揚げ物とサンドイッチとお菓子である。軽くやばい。宴もたけなわ、ビンゴ大会で布製のトートバックをもらう。飲み会を片付け、その後搬出の手伝いをして、11時少し前にパシフィコを出る。おつかれさまでもたのしかった。

まとめ

・SF大会への参加は初めてであるので、よく行く機会がある、科学・医学系の学会と比較したい。大きい学会は、専門業者に外注して運営させているので、こういう業者の行動を観察していると参考になる部分がある。

・学会発表は(まあ色々あるけど)、@与えられた時間内で演者がプレゼン A会場より質問受付 B何人か発表した後、総合討論 

*会場係は、お水とコップとベル(発表時間が尽きたことを知らせるために鳴らす)を用意すること!

という流れをとる。細かい演題が決まるのは開催の1-2カ月前とか、わりとぎりぎりだが、発表会場ごとのテーマは半年くらい前には既に決まっている。(例えば、「植物ゲノム研究」の発表だけを集めた部屋とか、「プロテオミクス」の部屋とか)発表者はテーマ毎、枠に割り振られていくのである。時間の関係上、テーマが違う部屋に押し込まれる発表者が出てかわいそうなこともある。)

この方式のいいところは、先にテーマ毎の枠を決めてしまうことで、大まかなプログラムが早く分かる点だ。SF大会だったら? 定番の企画は別格としても、「アニメ」「ライトノベル」「国内SF」「海外SF」などの区分で、先に時間と部屋を割り振ってしまうのはいいかもしれない。企画が出てこなかった枠は、後で組み換えればいいのである。テーマが似ている企画の重複をある程度回避できる。

・学会にはあるが、SF大会にはないものに、ポスターセッションがある。ポスターセッションとは、発表資料を壁に貼り付けて展示し(ポスター)、時間になると発表者があらわれてポスターの前に立ち、解説をしてくれるというもの。発表慣れしていない大学院生や、若手の研究者の発表の場に利用されることが多い。発表内容がそれほど多くなくてもプレゼンができるのがいいところ。でも発表者が集まらなければ成り立たないけど。

・参加費の問題。HAMACON2は、発表者も含む皆から参加費を徴収した。お金の問題は一概に比較はできないが、科学系の多くの学会では、発表者も参加費を支払う(その前に、学会の年会費も支払っている。招待講演者からはお金を取らない学会もあるが、貧乏なところはがっちりとる。知り合いが参加した学会は、車代より参加費のほうが高く、ネタにされていた)。研究者にとって、学会で成果を発表するということは、商売上非常に重要だから、文句は言わないことになっている。

だがSF大会ではどうか? SF大会でプレゼンテーションをすることに、プラスアルファのインセンティブがあるか? 「SF大会で発表しました!」というのは、自慢になるか?

・プロの作家に対するインセンティブとしては、@作品の宣伝ができる Aその場で売れる(かも) Bプレゼンが面白ければ、長期的なファンになってくれる人がいる(かも) 他は?

・専業作家でない発表者、「ファン」として自分の調べたものを発表してくれる人などに対するメリットはあるか? 「発表できるのがうれしい」以外で具体的に何か示せるか? これが示せれば、企画をお願いするほうも、心理的な負担は軽減できるのではないか。