NIRVANA/NEVER MIND(1991)
カート・コバーンはロックの向こう側にあるものを探したかった人なのであろう。この「ネバー・マインド」で、様々な夜明けを感じた人は世界に何人いたのか計り知れない。ある意味、ひとつの到達点だったと思う。その先にあるものを、カート自身や、支持したファン、音楽シーンも期待した結果、あまりにも大きな悲劇を生んでしまった、そう思えてならない。ニール・ヤングの歌の一節、「錆びる前に燃え尽きたい」という遺書を残し、’94年に猟銃で頭を撃ち抜き自殺する。今では主に60年代のミュージシャンが麻薬のオーバードーブによる事故死を美化している傾向があるが、カートは正真正銘、純粋に音楽に生きて、生きたかった人なのだろう。以降、グランジロックといわれたカテゴリーは急速にしぼんでしまい、伴ってロックシーンも冬の時代を迎える。時代の申し子として比較されがちなマーク・ボランとは意味合いが異なる。恐らく、カートの活動有無に関わらず、生きていてさえすれば、現在の音楽シーンは間違いなく変わっていたに違いない。曲が良い、音が良い、格好良い、という単純な理由では語れない大傑作アルバムである。世界のロックシーンの流れとして、非常に重要なポイントを示しているアルバムなので、好き嫌いに構わず1度は聴いてほしい。しかし、カートの奥様が、よりによってコートニー・ラブ(大柄なハリウッド女優。元、六本木の放浪者)とは・・・らしいといえば、らしいけど。