映画の感想あれこれ


シン・シティ 65点
バイオレンスな映画である。残虐なシーンをしこたま見せられるので、女性には厳しいかもしれない。元々コアな観客層を狙ったものなのであろう。しかし、全編に渡りモノトーンなので、血の色が黄色であったり、黒であったりと、血=赤=ドン引き、というのは無く、意外とサラっとみられる。時間差の3部構成で成り立ち、各々の主役は違う。シン・シティという犯罪しかない架空の街で、主人公達は様々な形で正義を見出し、行動する。特に際立ったメッセージは無い。原作はアメコミだし。しかし、ミッキー・ローク、ベネチオ・デル・トロ、クライブ・オーウェン等、曲者実力者俳優が揃っており、しかも普段見られそうもない役柄(特にイライジャ・ウッド)の扱いをされているので、結構それだけで楽しい。CGを多用しているものの、独特な雰囲気を出しているので、2時間は飽きさせない。デルトロの扱い方は、一種惨い。ゆえに印象的には一番。とてつもなくオイしいのは最初と最後に出てくるジョシュ・ハートネット君だね。続編に期待。

ポセイドン 45点
Uボート、パーフェクト・ストームを監督した人が、このポセイドンというビッグネームを作ったのだから、観に行かずにはいられない。しかし、ズバリ言ってしまうと全体の精度不足が否めなかった。ポセイドンが転覆するシーンは、映像がリアルで迫力あり、さすがハリウッドと思わせるが、後は殆ど船内。お金をかけたB級映画である。冒頭からポセイドンがひっくり返るまで20点。その後60点。とにかく、キャラクターの性格が大味で脚本も苦しい。なので、以降の転覆からラストまでの修羅場の数々が押し寄せても「えっ、死んじゃうの?」とか「頑張れー」とか感情移入が出来ない。どんな困難でも乗り越えてしまうスーパーヒーローもいて、リアリティも今ひとつ。船が180度になり、脱出するのに船内の上ではなく、下に行くという美味しい材料があるのに、殆ど生かしきれていない。どんな困難でも諦めずに皆で力を合わせれば不可能は無い、と、言いたいのであれば分かりやすいが、もっと上映時間を長くしてでも煮詰めてほしかった。

フライト・プラン 65点
2部構成(笑)になっていたフォー・ガットンを思い出す。まぁ、あれは非現実であったが、今回は機内で起こる現実の話である。実はコレ、何ともないサスペンスである。テレビの2時間ドラマとたいして変わらない。しかし、主演のジュディー・フォスター、2度のアカデミー賞は伊達じゃない。ありきたりなサスペンスを1級ものに変えた、という錯覚をしてしまう演技力は脱帽。狙ったであろう、母強し、という主旨は、見事に観客を捉えたと思う。飛行中の機内という限られたステージの中で、途中のダルさは覚悟していたものの、客室以外の場所も存分に使っており、目立った退屈感は無かった。この映画で一番重要だと思うのは、周りの人間は自分が思っている程、見られていたり、考えられているものではないということで、皆、それぞれに不甲斐無いところはあるが、気にしているのは自分だけ、ということなのかもしれない。

旅するジーンズと16歳の夏 80点
期待そこそこに見た映画であるが、すぐに吸い込まれてしまった。性格も体型もバラバラの4人の女性主人公達は生まれた時からの親友でいつも一緒。しかし、16歳の夏休み、各々の都合で一定期間離れ離れになる。僅かな不安に友情の結束を再確認する時、全員にフィットする1本の不思議な魔法のジーンズを見つけ購入する。恋を恐れる者、恋に恋する者、複雑な家庭環境に悩む者、自分の存在理由の証として禁欲に映画を撮る者。一人一人が行った先々で16歳という多感なゆえの悩み、苦しみに直面していく。この映画が高得点なのは4人のキャラクターがしっかり出ていて、そして彼女たちの視点の描き方が優れており、誰もが通った青春の時期に被れてしまう、脚本の素晴らしさにあると思う。自分で自分なりの答えを見出し、子供から大人になるという何気なくも難しいテーマを見事に描いている。ジーンズは何もしない。しかし、ジーンズには結束した友情が込められており、それは彼女達の想いにより自身に強い力を与えてくれる。それは一種、魔法より強力なものなのである。

ミリオンダラー・ベイビー 80点
切ない映画である。自分にはこれしかない、これしか出来ない、という、たった一つのものが強制的に失われたらどうなってしまうのか。新しい事にチャレンジする強靭な精神の人、運命に逆らわず静観する人、自ら終焉を選ぶ人。主人公のヒラリー・スワンクは自分の全てである女子プロボクサー。並みならぬ努力と自分を信じる精神で成功、名声、富を得るが、ある事故により選手生命をあっさりと失う。彼女の選ぶ道に、一から育てたトレーナーの苦悩。愛とか友情を越えてしまった互いの関係を軸に、人の強さ弱さをリアルな台詞と描写で問いかけてくる。一つの選択しか考えられない主人公と、何も出来ない自分の不甲斐無さに、観る者の共感を誘う。人間ドラマとしては逸品で、普段何気に暮らしていることに幸せを感じさせる名画である。


ステルス 30点
娯楽映画は基本的にアイデア勝負である。まぁ、何でもそうであるが、斬新なアイデアが組み込まれている映画は、お金を沢山かけなくても十分面白い。やや古くなるが「スピード」なんてその代表例。最新鋭の無人戦闘機が自分の意思を持ち暴走する。それを撃墜しようとするイケメン、美女のエースパイロット達。それはそれで良いのだけれど、大雑把過ぎ。要所要所で無意味にミサイル撃ちまくって爆発ドドーンと、飽きさせないようにはしているが、喜ぶのは小学生くらいのレベル。最後はその無人戦闘機、悪に徹すればまだ良いものの、パイロットとお友達になってしまうのだから救えない。内容は観終わって20分位したら殆ど忘れてしまった。

ブギーナイツ 85点
ポルノ映画を舞台にした青春群像映画である。しかし、全く嫌らしくない。むしろ、この舞台を機軸にして描き出される様々な人間ドラマは説得力がある。ここまでの映画にしたのは監督の手腕と俳優達の演技の賜物であろう。人間の果てぬ欲望と、転げ落ちてゆく堕落を、メリハリのある脚本がグイグイ押し、役者も全員癖があり、個性さを明白して、観る者を終始惹きこませる。随分前から、この映画の話は聞いていたが、2時間半の上映時間の長さと、なんとなくチープな印象で、観る機会がなかったのであるが、何故もっと早く観なかったのか、と、今では後悔している。観る世代によっては、感じるものは違うのだろうが、特に若い人達に観てもらいたい。

宇宙戦争 65点
スピルバーグの映画といえば「激突」、「ジョーズ」である。初期の作品ではあるが、心理的に押し寄せる恐怖を植え付けられた名作であった。以降は様々なジャンルに取り組んだようだが、何か消化不良が否めず、現在に至っていた。「シンドラーのリスト」等の社会派も見応えがあり、流石だなーと思わせるのではあるが、私にとってスピルバーグは前記の2作なのである。この「宇宙戦争」も大きな期待は無かったけど、いやいや、戻って来たな、という感じ。冒頭からラストまでスピード感があり、目に見えぬ恐怖を随所に散りばめ、初期のスピルバーグ色が出ている。実際、子供が見たら怖がるかも。トム・クルーズも特に鼻に付くところなく、結構自然。逆に息子役が不自然なところがややマイナス点か。

キングコング 80点
3時間という上映時間に戸惑う人もいるであろう。つまらなければ、その時間どころか後悔時間というプラスアルファが加算されて、半日は駄目にすると思う。しかし、心配は無い。むしろ、その逆で、主役のキングコング登場まで1時間10分かかるが、そこまでだけでも面白いし、登場してからは更に引き込まれ、エンドまであっという間の時間である。キングコングは当然話すことは出来ないが、、ヒロインのナオミ・ワッツより喋っているような錯覚をおかす程、様々な表現力を特殊効果で見事に表している。愛情と欲望が交差する人間、一つのものを純粋に愛する以外、ただ破壊的なだけのキングコング。しかし、明らかに後者の姿に肯定的になってしまうのは、優れた監督の手腕であろう。恐らく、私が生きている間に、これ以上の「キングコング」のリメイクは誰も作れないと思う。因みに汚れ役であるが憎めないジャック・ブラックは、この映画を一層引き締めている。しかし、「ロード・オブ・ザ・リング」でもそうだが、どうしたらこんな映像が出来るんだろう、と、いつも感心してしまうなぁ。