THE BEATLES/Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band(1967)
60年代中盤、全盛期のビートルズはコンサート活動を中止してしまった。TVにも極力出演しなくなった。なぜなら、世界中に影響を及ぼす存在であった彼らは、一挙一動、一句半句によっては各地で暴動が起こり、下手をすれば命まで危うい。実際、行く場所先々に厳重な警備を行なっても、危険な目に遭遇することが多々あり、しかも、コンサート会場とホテルを行ったり来たりだけの生活が重なり、メンバーはホトホト嫌気がさしていた。このことにより、彼等の活動はスタジオでのアルバム製作に力を注ぐことを決める。しかし、ただのスタジオアルバムを作るわけではない。彼等が決して忘れないもの、それは純粋なファンの人達のことだ。そして考えついたのが、家で聴いても、まるでコンサートに来ているかのようなレコードを作ろう、ビートルズという概念を捨てて、別名バンドの名の下、自分達のやりたい事、好きな事をやろう、そして単純に僕等も楽しみ、ファンの人達にも楽しんでもらおう、そんなコンセプトの中で4人の天才達が生み出した世界初の計算尽くされたトータルアルバム。オープニングから歓声音が入り、コンサートの臨場感を醸し出す曲で始まり、以降、点のような短い曲が続くが、それらは何気に線で結ばれ、ラストはブラックホールに吸い込まれるような壮大な曲、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」で幕を閉じ、全てを完結させる。ベスト盤に入っているような派手な曲は無いものの、1枚のアルバムとしての統一感は、現在でも世界屈指。ウルトラC級の発想と、妥協の無い完璧な内容は、当時として紛れも無く革新的であった。通常、このような新しい試みを示したものは、その時代に受け入れられず、その後の影響により評価される事が多いのだが、このアルバムは発売当初から全世界で記録的な売り上げを残し、現在でも「全てにおいて世界一のアルバム」と評される、不朽の名作である。因みに、この頃から各メンバーは、雨あがり決死隊の蛍ちゃんのようなマッシュルームカットを辞めるが、気付くのがチト遅い。