作者 ハクイ氏

 

こんな夢を見た。

こぎれいな、乗り心地の悪くはないバスに乗っていた。

乗るのは初めてではない。

降りた記憶もない。

いつも行き先は分からない。

このバスが走っているのはごく単調な、平坦な道である。

運転手にどこに行くのかを尋ねたことがある。

毎回答えは返ってこない。

周りの客に行き先を聞いても知らない者がほとんどだ。

それに、乗客の半数近くは行き先について興味もないらしい。

しばらくして後ろにいた客同士が喧嘩を始めた。

罵り合いではなく、やや感情的になった討論といった感じである。

運転手はちらりと見ただけで一言も発しない。

喧嘩はどうでもよい結果に行き着き、皆が静かになった。

始終を見ていた客は退屈になったのか運転手に話を振った。

取り留めのない話から始まり、ついにはバスの行き先についての話になった。

しかし、明るく喋っていた運転手が、行き先の話になると急に黙り込んでしまった。

行き先を言わないことに腹を立てた数人の男が降りるから止めろと運転手に詰め寄って行った。

だが、運転手はまるで他人事のように無視し、運転を続けている。

彼らは何かを理解したようだ。

あきれた男たちは席に戻り、彼等だけで討論を始めた。

幾分か教養のある男達なのだろう。

先ほどの討論より幾らか穏やかである。

どうやら、「何故このバスに乗っているのか」や「このバスの行き先」についての話らしい。

その話を聞いていて自分も「このバスに乗っている理由」と「このバスの行き先」を考えてみた。

考えていたら、このバスを降りたくなってきた。

 

 

あとがき

この度は稚拙な、文章力も想像力もない小生の作を読んでいただきありがとうございます。
あとがきを書くほどの大層な内容ではないので、「わけ分からん」とお思いの方に解説とはいかないまでも、
もう一度読み、納得していただくために登場した彼らの役割について書きたいと思います。
まず「自分」です、彼は世間一般に言われる「己自身」として出ています。
「運転手」は特定ではないのですが、一つの集団の指揮、操作をする存在として、
そして「彼等」には、その指揮者に対し知的観点から見て上の方から批評する存在として表現しました。
と、堅い話はここまでにして答えを言ってしまいます。
「バス」はこの国、「運転手」は首相、行き先に関心を示さない人間は国の情勢に無関心な人たち、
「知的な集団」と表している男たちは『朝まで生テレビ』を見ていればいっぱい出てくる方たちです。
 

このような作を載せていただき誠に感謝しています。
残党氏にこの場を借りてお礼を言いたいと思います。
読んでくださった方々ありがとうございます。

残党の感想

ハクイ氏から頂いた風刺小説です。
私は読んでなんだか変な想像をしました。
こんな夢はなんだか薄気味悪くてゾクゾクします。
世にも奇妙な物語という番組を思い出しました。
なぜ箇条書きなのかは気にしないで下さい。
夏目漱石の『夢十夜』がもとネタ(?)らしいですが
夏目漱石は『坊ちゃん』ぐらいしかわからないのでわかりません。
このバスは何処へ行くのでしょうか?

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