壊れたラルスが生きている世界 お仕置き 途中

「ラルス、皆に迷惑をかけたそうだな。」
 父が静かに言った。まあ、父には怒鳴る元気なんてないだろうが。
「うん。……僕は悪いことをしたつもりはなかったんだけどね。むしろ、えおのためには良かったと思うよ。ただ、時間にして20分もあっちにいなかったのに、ペテルがあそこまで暴れるなんて、僕には驚きだよ。」
 ラルスは肩を竦めて見せる。「正直、あれじゃあ手術が出来るようになるまでなんて、年単位でかかりそうだね。」
「何処へ行っていると分かった上で姿が見えないのと、生死も分からず消えてしまうのでは、心理的な負担の差が大きいだろう。分かっていれば2時間は離れられると聞いたぞ。」
「そうなんだ。」
 ラルスは笑う。「それは知らなかったよ。」
「ラルス。お仕置きしてやるから、尻を出せ。」
「え。」
 ラルスは固まった。
「え、じゃない。お前には育ての親が二人も居たんだから、トゥーリナと違って尻叩きに慣れていただろう。俺の手を煩わせる必要もないはず。」
「えーっ。お尻叩くのぉ。」
「ラルス。」
 ギンライが静かに言った。ラルスはびくっとする。
「……本当のお父さんには叩かれたことないのに、体はお仕置きに備えちゃうんだなー……。」
 ラルスが溜め息をついた。

 ラルスの手がズボンにかかり、下着と一緒にそれをおろす。言葉通りだとすれば、本人の意思とは無関係にごく自然に動いてしまうようだ。お尻を叩かれてこなかったトゥーリナと違って、ラルスはその行為が当たり前なのだ。ギンライ自身もそう躾けられたし、キシーユもそうだった。それなのに、ラルスの反応は新鮮だった。
「トゥーリナに慣らされちまったな。」
「何の話?」
「トゥーリナは普通の躾を受けていないんでな。尻を出せと言っても抵抗する。」
 ラルスの顔に笑みが浮かぶ。
「元・人間の百合恵ならともかく、トゥーリナも抵抗するんだ。変なの。」
「トゥーリナから聞いていないのか? あれは奴隷のような育てられ方だったんだ。」
「聞いたよ。でも、いまいちよく分からなくて。膝の上で叩かれたりしないの?」
 ラルスが言いながら膝の上に乗ってきた。来いと言う必要すらないなんて……。まともに育てられるとこうも違うのか。キシーユだってそうだったじゃないかと思いつつ、やっぱり戸惑いが隠せない。
「……ああ。尻だけ打たれるならいい方で、全裸に剥かれて所構わず鞭が普通らしいな。」
「……ほんと、奴隷なんだ。トゥーリナは子供っぽいから、大げさに言ってるのかと思ってた。」
「幼さが抜けていないのは育ちの所為だろう。心が育っていないから幼いんだ。……トゥーリナの話は止めにしよう。時間がなくなる。」
「うん。分かった。」
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