妖魔界村

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番外 百合恵の過去

 事の始まりは母だった。夫としたくない。それとほんの少しの好奇心。娘を差し出したときの夫の反応。それが見たかったのだ。


 始めたのは母だけど、続けたのは父だった。つまり、百合恵にとって悪いのは両親だった。父は自分を凌辱し続け、母は、妻より娘を取った夫を憎んだ。
 でも、実際に憎悪を向けられたのは、愛していた夫ではなく、娘の百合恵だった。


 父からは性的に、母と母の味方になった兄と弟には、身体的に虐待される日々。兄が結婚し、少し良くなった。兄嫁が、彼女に優しくしてくれたのだ。しかし、母は、百合恵を苦しめようと、嫁を味方に引き入れた。嫁にしてみれば、これからずっと付き合わなければならない姑と、いつか出て行く義理の妹となら、姑との仲を優先して当然だった。夫が母の味方にと言うのなら、さらに。そして、百合恵には敵が増えた。


 出て行く事も考えた。働くようになったら、給料は全て巻き上げられ、上司は百合恵の中に何を見つけたのか、セクハラしてくる。更に辛くなってしまった。
 既に学生の時に何度も試みていたけど、一度も成功しなかった。父は大切な無料の愛人を手放したくはなかったし、母は本当はいなくなって欲しかったものの、世間体を気にし、兄と弟は、手頃なサンドバックを失いたくはなかった。逃げる度に捕まり、更に酷い目に合わされた。
 働くようになったら、給料が美味しいので、母も逃すまじと本気になったので、ますます逃げられなくなってしまった…。


 しかし…。
 「お前は素晴らしい。」
 目の前に現れたトゥーリナの一言で、彼女の人生は切り替えられる事になった。


 トゥーリナは、どん底でありながら、それなりの美しさを持った女が欲しかった。辛い人生を歩んできたのなら、自分の仕打ちにも耐えられるだろうから。
 トゥーリナは百合恵の体を確かめる為、強引にホテルへ連れて行った。百合恵の体は父親に何度も使われていたが、トゥーリナは充分に満足できた。
 彼は百合恵の家族を全て殺して、彼女の心を少し満たすと、妖魔界村へ誘拐した。


 百合恵はトゥーリナの思うままにされる日々。それでも、前よりは少しでも幸せだと感じられるのだった…。
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