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妖怪が壊れる時 ドルダーの場合

 一般の妖怪達に、壊れると言っても通じないが、戦いに生きる妖怪達なら、誰でも知っている。必ず一度は通る道だからだ。闇の生き物である妖怪達は、殺さなければ殺される世界で、だんだん殺すのが楽しくなってきてしまう。身を守る為に殺していたのに、いつか殺す為に相手を探すようになってしまうのだ。
 途中で踏み止まれば、そんな事はなくなる。でも、止まれなければ、感覚がおかしくなる。普通に会話が出来ても、話す事は普通の感覚では理解できない事を言うようになる。殺す事が楽しくて楽しくて仕方なくなる。完全に闇ではない妖怪は、それが恐ろしくなり、誰もが正常でいようとする。
 しかし、一人で止めるには、かなり精神力を要する。誰か止めてくれないとそのまま……。

 ドルダーは、壊れた妖怪だった。幼かったザンを城から連れ出し、虐待して、最後は彼女に消滅させられた。彼は彼なりに彼女を愛していたが、両親の無惨な死に触れた彼女が、それを分かる筈もなかった。
 彼は死に、地獄で壊れた部分と罪を浄化した後、天国で彼女を待ち続けた。やって来たタルートリーと意気投合して、二人で彼女を待っていた。彼女が結婚し、子供を生んだ後も彼女を愛し続けた。
 二人は天国で和解した。

 子供の教育に熱心な妖魔界。でもそれは、ずっと昔からそうだった訳ではない。子供が親の所有物とされ、命令に従わせる為なら、身体の一部を切り取る事も良い事とされていた時代もあった。ドルダーは、そんな時代に生まれた。
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