ザンのお城

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途中
「ザン様。この城の収支決済を見たいんですけど…。」
 ネスクリが言った。
「何を見たいって?」
「言い間違いましたか?」
「うーんと、何の話なのか、全然分からねえ。」
 ザンの言葉を聞いたネスクリが、ちょっと笑った。
「俺がこの城で働く前、財政状況が最悪でしたよねえ。」
「おお。そうだったな。」
 ザンは照れくさいのか、赤くなって笑った。
「ですから、今はどうなってるのかを知りたいんです。ターランがいなくなって大分経つようですから。」
「リーロに来てもらったから、今は何の心配もないぞ。」
「ふっ…。」
「何だ、その笑いは。」
「ギンライ様の所の経済状況は、あまり良くなかったと、聞いてますので…。」
「それは…。」
 ギンライが病気だからだ、と言いかけて、ザンは止めた。「まあ、いいや。要するに、なんか小難しい書類が欲しいって事だろ?」
「…ええ。」
 ネスクリの言葉に、ザンは、キャビネットに近づき、ごそごそと探し始めた。
「確かここら辺に…。」
 掻き回しているザンを見て、ネスクリは焦った。
「ああ、良いです、良いです。俺が自分で探す事にします。」
「お、そうか?」
 ぐちゃぐちゃにされたら、後で困る事になりそうだから…とは言わないまま、ネスクリはそこへ行った。
「今はこんな物があるんですね。」
 キャビネットを指差し、ネスクリが言う。
「ギンライの部下に、人間びいきの奴が居てな。ギンライの動く椅子を見ただろ?あれは車椅子と言って、人間が使ってる物なんだ。」
「そいつがこれを人間界へ持って来たと。」
「妖魔界と人間界で、貿易っつうのか?あれみたいな事を始めた結果さ。」
 書類の山に首を突っ込んでいた、ネスクリが振り返った。
「…今、凄い事を言いませんでしたか?」
「妖怪は人間界に住んでるから、存在が知れ始めているんだ。ただし、偉い奴だけな。」
「国家レベルでそんな事をしたら、神がどう言うか…。」
「ちょっとだけさ。あまりやったら、神が俺達をどうするか、分かったもんじゃねえからな。」
「しかし…どうして妖魔界の神は、魔法界と人間界を切り離しておきたいんでしょうね?」
「妖怪が人間を食うからに決まってるだろ。」
 ザンは事も無げに言った。「今の人間の文明レベルで、その事が知れ渡ったら、妖魔界と人間界の戦争になる。」
 人間に勝ち目はないけどな、とザンは付け加えた。
「…それは妖魔界は、そうかもしれませんけど…。」
「ともかくよ、人間にだけは特殊な力がない。それは人間を作った奴が、魔法界と人間を分けたかったからだろ。妖魔界の神は、その意見を尊重してるんじゃねえの。」
 ザンは息を吐いた。「あんまり俺に、頭を使わせないでくれ。痛くなってきた…。」
「ザン様は、頭脳労働に向いていませんでしたね。」

■作者からのメッセージ
学校のお話から派生して、途中で止めちゃった奴。

書いた日04年9月11日
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