リザッタ1 F/m

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「絶対に嫌っ!!足りないなら、あなたの所で何とかしなさいよっ!!もうわたしにだけ押し付けるのはやめて!………知らないわよ…。」
 しばしの沈黙。そして、ゆっくりと呼吸する音。泣くのを堪える為に。でも。やはり、我慢できなかった。一粒、また一粒と雫が零れ、やがて頬に川のように…。
 彼女は顔を上げて、神殿の窓から外を眺めた。何も知らないではしゃぐ、可愛い子供達。爽やかで優しい太陽の光の下、無垢な笑顔が舞う。誰を選ぶというのか?

 ここは、人間界の天国。人間界の生きとし生けるものたちが、使命を終えた後、しばし安らぐ場所。極楽浄土でもいいし、天使達が歌を歌っていてもいい。ここに訪れたものにとって、ここはそのものが思う一番素晴らしい場所に姿を変えるから。
 安らぐ時間はそれぞれが好きに出来る。休息はもう充分だと思ったら、今までの姿を捨てて、魂に戻り、また新たな生を歩む。魂の生長が終わるまで。創造主リントがそう決めた。成長が終わった魂は彼の下に行き、全てを形作っていく。

 幸せそのものの天国の中で、1人、苦渋に満ちた人がいる。それは、人間界の神様。天使時代の彼女は、自分はどんな天使になるか、色々想像して楽しんでいた。大人になって、可愛い赤ちゃん天使達のお母さんになってもいいし、子供天使の教育家係になってもいいし、子供天使のまま、人間界に愛を振りまいてもいいし、神様の使いになってもいい。天使達にも様々な役割があって、好きなものを選べたから、教育期間の終了が近づいていた彼女は、夢を膨らませていた。
 そんなある日、彼女の人生で、最大の幸せの日がやって来た。いや、その時はそう思っていたというべきか…。

 神様が、その役目を終えて、神界へ行く日が近づいていた。天使達のうち、誰が次の神様に選ばれるか、皆が噂していた。彼女もその一人だったが、当然選ばれるのは大人天使達の誰かで、幼い自分達には関係ないことと思っていた。
「シルティス様じゃない?あの方、一番高潔だもの。」
「えー、アリム様の方が貫禄がおありになって神様らしいぞー。」
「菊春様なら、お優しい神様になると思うなあ…。」
 皆がそれぞれ好き勝手なことを言っていたし、噂に加わらない物達も、噂の人物達も、はっきりと態度に示さずとも、最大の関心を抱いていた。霊体達まで、面白そうにしていた。

 とうとう、進路を選ぶべき時がきた。神様の前に行き、自分のなりたい物を言う。受け入れられれば、姿がそれに相応しいものに変わる。






2005年03月23日(水)

■作者からのメッセージ
ターランの中の人のお話。ターランの中には、リザッタ君という天使がいます。
彼がどうして、ターランの中に入り、堕天使となったか。

神様達の汚いお話になります。
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