RPGの裏側
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RPGって知ってる? ロールプレイングゲームの略なんだけどさ。ロールプレイ、つまりなりきりって遊ぶゲーム。うーん、勇者になって悪の魔王を倒すゲームって言うのが一般的かなー。まあ、今は主人公が勇者っていうのは古臭いらしいけど、プレイヤー(ゲームを遊ぶ人のことね)がやることは一緒だな。
説明はこれくらいにして……ああ、自己紹介がまだだったな。俺の名前はピコレット。あるRPGの登場キャラなんだ。冒険の序盤に勇者(冒険者)御一行様のマスコットキャラとなって、世界観を説明する役。プレイヤーが世界になじむ頃、イベントでいなくなるんだ。……ってのは仮の姿で、本当は魔王直属の部下で、四天王の一人。魔王と意見が対立してて、勇者に魔王軍を疲弊させ、隙をついて魔王のかわりに自分がこの世界の支配を企む……、まあいわば策に溺れて自滅する、よくあるお間抜けさんな役が俺の真の姿って設定。
四天王としてのキャラグラフィックは当然用意されているから、ピコレットである俺と、奴は同時に存在してる。でも、俺も奴も本当は魔王様についていく気まんまんなんだ。設定としての姿と、本来の姿は違うってわけ。魔王様だってさー、本当はこの世界を支配なんて考えてないんだぜ。俺達魔物と楽しく過ごしていればそれでいいんだって。でも、それじゃRPGが成り立たないからな。
前置きが長くなっちまったけど、じゃ俺達の仕事や遊びをのんびり見てくれよな。
魔王城の近くの広場。城の周りを囲む毒の沼地を避けたその場所で、タンポポの綿毛のようなふわふわした丸っこい生き物と、二人の子供が楽しそうに話している。
「……って言うんだよ。」
「あー、俺もそう思うなー。」
「えー、あたしは……。」
丸い生き物ピコレットと近くの村の少女と少年。3人はとても仲が良かった。設定上は、二人の子供……姉と弟は魔王軍に両親を殺されているので、本来魔物は憎むか恐れるかするわけだが、あくまでも設定は設定。本当は魔王を尊敬しているピコレットと一緒で、本来の二人は魔物が好きである。
しかし。
「ピコレットっ!!」
「うわっ、魔王様。」
白に近い水色の長髪をなびかせ、魔王がやって来た。頭からは牛のような角が生えている。整った顔立ちで、角と顔の呪いのようなペイントがなければ、何処かの王子のようにも見え、女性プレイヤーの心をがっちり掴みそうなデザインである。戦闘用グラフィックは化け物だが、そっちの魔王は勇者が城に来るまで暇なので、クリア後の隠しダンジョンで、色違いの中ボスと遊んでいる。
その魔王がピコレットを怖い顔で睨んでいた。
「うわっじゃないだろう、うわっじゃ。何回言ったら分かる。人間と仲良くするな。勇者に見られたらどうするんだ。お前はイベントを終えて、後は回想シーンでしか出てこないはずなんだぞ。」
魔王は子供たちも睨む。「お前たちだって、魔物を憎み、恐れてる設定なのに、魔物と戯れてるのを勇者が見たら……。」
少年が頬を膨らませる。
「勇者は今サイドストーリーをプレイしてて、まだ空飛ぶ船を手に入れてないし……。ここに来るのはまだまだ先だよ。中盤はやることが多いから、暫くは大丈夫だよー。」
「そうよね。空飛ぶ船と仙人の修行と……ここに来るにはまだ沢山のイベントがあるんだから。むしろ今ここに勇者が来られたら、それってバグってことに……。イベントこなさなくて済むチートコードなんてないし……。」
姉も同意する。
「そ・そうそう。ふ・二人ともいいこと言うなあ。俺も……。」
ピコレットは作り笑いで魔王に笑いかけ……凍りついた。
「ピコレットは設定通りだったんだな。わたしのいい子でいると思ったら、言うことを聞かないのか。そうか。」
魔王の顔はとても優しかった。声も。それなのに、ピコレットは凍りつき、二人の子供は慌てて村の方へ逃げ出した。「二人のことは後で、養い親の村長に伝えておこう。村長が素晴らしい措置をしてくれるに違いない。」
ピコレットは震えながら魔王を見上げた。
「さあ、ピコレットはどっちがいい? 勇者が城に来るまで隠しダンジョンへ遊びに行くのと、ここでわたしに……。」
「ごめんなさい、もう二度と逆らいませんからっ。追放だけはご勘弁を。」
ピコレットの言葉に魔王はにっこりと微笑んだ。
「いい子だ、ピコレット。じゃあ、わたしの部屋へ行こうか。」
魔王に掴みあげられ、ピコレットは彼の部屋へ連行されていった。途中すれ違う魔物たちの半分は同情、半分は当然だという顔で見送ってくれた。
2008年01月14日
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なんかのゲームスレで、DQ5の主人公が勇者じゃなかったことにショックを受けたのも今は昔……みたいな言葉を見て、そういえばそうだったなと思ったわたし。
スペクトラルタワー2で、魔物にも家族がいる描写があったのをなんとなく思い出した。SO2の4コマにも、孫とゲームで遊んでいたお祖父ちゃんが、呼ばれてコントローラーとともに、レナ達の前に現れるというのもあった。
恐ろしい魔物や冷酷な魔王も裏では……と思って出来たお話。2ではピコレットがお仕置きされちゃうお話と、勇者の冒険を裏で支えるピコレットたちのお仕事を書きます。
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