α+奥秩父主脈縦走記(2002.05.02-06)
 奥秩父、というと一般的に、長野・山梨・東京・埼玉で囲まれた東西に延びる主脈を中心とする山域をさすようです。自分がはじめてここに足を踏み入れたのは、西の端にある金峰山・瑞牆山に大学1年の時に行った時ですが、その次の年に、この山域の中で「秘境」と言われる和名倉山に登って、奥秩父の奥の深さを感じたものでした。そして、「いつか奥秩父を完全に縦走しよう」と考え続け、ようやく今年それを実行に移すことにしました。

 5月2日(0日目)
 今年のゴールデンウィークは5月3〜6日。そこだけでも頑張れば行けるのですが、どうせ山梨まで行くのならということでいつもどおり通帳を片手に郵便局を回ることにしました。降りた駅は中央本線日野春駅。ここから韮崎町街まで歩き、あとはバスに乗ったり降りたりしながら点々とある郵便局を一つ一つ拾っていこう、という計画でしたが、なかなかバスの時間と合わず、結局この日の行程の8割以上は徒歩になってしまいました。なにしろ背負っているザックには、これから山の中で4日間過ごそうという装備が入っているので、それはそれはきついの何のって、間違いなくこの日の行程が全工程の中で一番きつかったです。それでも小尾簡易局など、印象に残る郵便局もあったのでよしとしましょう。
 増富温泉から瑞牆山荘まではバスで、そこからは40分登って今日の幕営場所、富士見平に到着。新歓と思われる20人くらいのパーティーが楽しそうでしたが、自分は疲れがかなりたまっていたので、夕飯のポトフ(おいしかった!)を食べてからすぐに横になりました。

 0日目行程(歩行時間のみ)・・・瑞牆山荘(0:40)富士見平

 5月3日(1日目)
 4時に起きました。こんな時間なのに空はぼんやりと明るくなってきています。朝御飯をさっさとすませて出発。少し歩いて、大日小屋を越えて少したったところで地面に雪が出てきました。これくらいは予想の範囲内。さらに少し行くと稜線です。
 稜線上は、南アルプスや八ヶ岳がよく見えて気持ちいい場所ですが、岩の道の中、北面は所々雪が残っていて要注意です。そして8時前に金峰山に到着。3年前の合宿の時、頂上にある五丈岩に登ったのを思い出します。今回は単独行なので特にそんな気分にもなれず、頂上でしばらくみかん缶を食べながら時間をつぶしたあと、この先ははじめての道、さらに西に向かいます。
 すると、樹林帯に入っていきなりまとまった雪が顔を出しました。30〜50cmでしょうか。アイゼンは必要ありませんが要スパッツです。気温が高いので、歩いているときに足下の雪がボコボコと沈み、先に進むのに無駄に疲れます。途中のピーク朝日岳を越えてからさらに1時間、大弛峠に到着しました。
 ここは車道としては日本最高所の峠、山梨県側は立派に舗装されています。しかし長野県側はまだかなり道に雪が積もっています。そんな中を、山梨県側から2台のバイクが、長野県側に下ろうとしたのでしょう、わざわざゲートを乗り越えてやってきたのはいいのですが、峠の北側の道を一目見るなり笑いながら引き返してゆきました。そんなこともありましたが、基本的には風が吹き抜け荒涼としたところです。それでもきょうはゴールデンウィーク。かなりの数のテントが雪上に張られ、なかなか賑やかな一夜となりました。

 1日目行程(歩行時間のみ)・・・富士見平(2:20)金峰山(1:00)朝日岳(1:00)大弛峠

 5月4日(2日目)
 朝方時々雨がぱらついていましたが、大した雨にはならないようで一安心。5時に出発してまずは、奥秩父の最高峰である北奥千丈岳に登ります。最高峰なのにあまり知られていないというのはかわいそうです。写真を撮って、雨が少し降る中を今度は国師ヶ岳へ。矛盾していますが富士山が見えています。
 ここからは標高を少し下げてルートを北向きに変えます。雪もいったん消え、土と枯れ葉の歩きやすい道です。途中にあったピーク、「東梓」。ここには土に埋もれそうな、それにしてもどでかい三角点があってかなり驚きでした。さらに1時間ほど歩くと、ここからは甲武信ヶ岳に向かう登り。雪も再び現れ、所々アイスバーンになっていて、なかなか、というか非常にきつい道でした。そうこうして、10時半頃にやっと甲武信ヶ岳の頂上に到着。
 頂上からは金峰山が見渡せます。富士山は頂上が雲で隠れていました。しかし山頂は狭く、なかなかみんな大変そうです。
 ところがこの山は、百名山なのに近くにもっと高い山があるというのがミソで、というわけで甲武信ヶ岳より8m高い三宝山にも往復します。こちらは頂上といってもそれを示す目立った標識はなく、三角点の周りでは10人くらいのグループが昼御飯を食べていました。
 甲武信ヶ岳に戻って昼御飯のラーメンを平らげ、今日は行程が長いので先を急ぎます。頂上から下ったところにある小屋を通りすぎ、あとは雪の消えた稜線をひたすら進んでいくのですが、この辺りで特に疲労の色が濃くなってきました。そんな中でも破風山は200m以上の急登。肩で息をしながら歩くこと暫く、ようやく雁坂峠に到着しました。時間は16時15分。もうガスがかかっていて何も見えません。峠から10分下って雁坂小屋に到着。
 さっさとテントを立てて夕食の準備。0日目と同じくらい?疲れていたので、またすぐに寝ました。

 2日目行程(歩行時間のみ)・・・大弛峠(0:40)北奥千丈岳(0:10)国師ヶ岳(3:30)甲武信ヶ岳(三宝山往復50分)(3:05)雁坂小屋

 5月5日(3日目)
 この日も朝は雨でした。でも止みました。日も出てきた中を稜線の道を東に進んでいきます。笹には朝露が付いていました。心地よい道を行き、雁峠山荘に到着。無人小屋なのですが、どんな小屋なのかのぞいてみようと思っても中から鍵がかかっているようで開きません。中からは人の声が聞こえます。奇妙だ。まあいいやと思いながら少し行くと、「小さな分水嶺」に着きました。富士川と多摩川、それに荒川を分けるのだそうです。このあたりはあたり一面笹で見晴らしが良く、気持ち良いところです。
 100mの直登で笠取山。富士山や南アルプスがよく見えます。稜線をはずしながら東へ。唐松尾山を越えてさらに行き、将監峠に到着しました。将監小屋までは5分ほど下ります。小屋には水がとうとうと流れていて、思わず顔と頭を洗ってしまいました。峠に戻ってラーメンを食べながら、すぐそこに見える和名倉山に思いを馳せます。
 ここからは山頂を巻く、細かいアップダウンはあるものの基本的には平坦な道。飛龍権現まで来たところで頂上に向かって登り、飛龍山頂上に到着しました。山頂からは地図にない道でショートカットしようとしたのですが、そのうちに道が消えてなくなり、登山道に戻るまでに思いのほか時間と体力を費やしてしまいました。
 さらに東へ。あとは慣れ親しんだ雲取山に向かうのみです。そういえば去年のゴールデンウィークも雲取山に来たのですが、そのときは頂上避難小屋は満員で、仕方なく外で寝た人もいたほどでした。今年もたぶんそうでしょう。だからテント泊の方が楽だろうな、などと考えながら、体力をセーブしたからでしょうかこの日は昨日よりも足取りは軽く、思ったほど苦労せずに16時頃に無事に雲取山に到着しました。
 やっぱり小屋は人でいっぱい。テントを持っている自分がこの中で寝たらひんしゅくものだと思うので、やっぱりテントを立てて寝ました。でも頂上直下に立ててしまいました。ごめんなさい。あしたはいよいよ下山です。

 3日目行程(歩行時間のみ)・・・雁坂小屋(4:05)将監小屋(4:20)雲取山

 5月6日(4日目)
 朝。頂上に登って景色を見てみましたが、なかなかガスが取れません。どうせ今日は下るだけなので、ゆっくりと出発することにして粘っていると、7時くらいにようやく雲が取れてきました。遥か国師ヶ岳からここ雲取山まで、3日間歩いてきた道程が良く見えて感激もひとしおです。
 一通り感激したところでテントに戻って出発の支度をし、8時半に出発。石尾根は思ったよりも登り下りが多く、長くて大変でしたが、それでもようやく13時半には林道に辿り着き、14時についに奥多摩駅に到着しました。

 4日目行程(歩行時間のみ)・・・雲取山(4:30)奥多摩駅

 瑞牆山荘から(日野春駅から?)奥多摩駅まで至る奥秩父主脈縦走。2年越しの夢がやっとかなった瞬間でした。1泊2日の合宿もいいけど、やっぱりロングトレイルは最高です。
(2002/05/02-06)